02
「なんだ貴様は⁉」
気配を隠さずに近づいたので、連中はすぐに俺に気付いた。
その瞬間、連中の周りで光が跳ねる。
【偃月光輪】
シグロmk3の両腕に装備されたエネルギーソードを使った間接攻撃スキルだ。
ただの鉄板の鎧で俺の攻撃を受けられるわけもなく、全員切り分けられて地面にばらけた残骸を晒すこととなる。
「これだと静かすぎるな」
光が強いので気が付いた連中もいるだろうが、まだ動きが鈍い。
「次はもっと派手にやろう」
【雷光爆雷】
プラズマミサイルを発生させて射出する。
「なにごと⁉」
駆け付けた西洋武者たちはその言葉を最後に光の爆発に呑まれて四散する運命となった。
光と爆発が森の闇を騒々しく押し退ける。
その騒がしさが周囲の反応を引き寄せる。
よし、これで陽動の役目は果たせるな。
次々と近づいてくる西洋武者どもに【雷光爆雷】を発射し続けるのだった。
反応は二時間ほどですべて消えてしまった。
途中で逃げ出した連中までしっかりと追いかけて処理したので、少し時間がかかってしまった。
俺が出てきた場所からはあの二人が出てこなかったので別の場所から逃げたようだ。
あるいは俺には言っていない本当の脱出口があり、俺が出てきた場所はフェイクだったのかもしれない。
まぁ、だとしても問題はない。
俺は目的を果たした。
「さて……」
この後はどうなるのか?
召喚の目的を果たしたのだから元の場所に戻されるのか?
どうなる?
「…………」
しばらくその場に立ち尽くして時間が過ぎるに任せてみたが何も起こらなかった。
「ひどいな」
召喚して放置か。
状況から見て使い捨てにする気だったのだろう。
死ぬと思われていたのか。
いや……俺でなければ死んでいたのは間違いない。
しかしそれなら……やはりこのまま……。
「自由だ……な」
ゲームのキャラクターとしてではなく、プレイヤーの操り人形としてではなく……俺自身としての人生を始めることができる。
「最高じゃないか」
ピー。
「おっと」
戦闘でエネルギーを使いすぎた。
シグロmk3の武装を解除する。
いくつものパーツに分解され、タクティカルスーツを補助する装甲の一部となる。
「ふう……」
生の風が心地いい。
少々鉄分を含み過ぎているし、焦げた臭いも混じっているが、それでもいい。
これが俺の、自由の匂いだ。
「さて……これから少し、忙しいぞ」
それから夜が明けるまで、少々人には見せられないことをした。
簡単に言えば死体漁りだ。
いまの俺はこの世界で生きるために必要なものが何もない。
なんとか言葉が通じることだけが救い、というぐらいだろう。
常識、金、そして衣服。
常識はどうにもならないが、金と衣服だけはここでもなんとかなるだろうと辺りを調べている。
しかし残念ながら【雷光爆雷】はやり過ぎだったらしい。
そして新たな事実だが、現実の世界では爆発を受けると衣服は消失してしまうようだ。
どんな強力な攻撃をしようとも死体から無事な装備や衣服を剥ぎ取れるのはゲームの中だけだったらしい。
それを知っていればもっとうまくやったのだが。
やれやれと呟きつつ探し続け、隊長格らしい男のズボンだけがなんとか手に入った。
それといくらかの金銭も拾えた。
戦場となった場所から人目を避けて移動した後で、見つけた川でズボンを洗い、乾かす。
なんとか火を熾し、それを眺めながら色々と確かめることにした。
確かめるのはなにができて、できないか、だ。
ゲームの中で出来たことがすべてできるとは限らない。
まずはそれを確認しなければ。
「装備ボックスは使えるな」
コマンドメニューが出なくて困ったが、個々に意識すればそれを起動することができた。
ステータスも確認できたが、数値を確認したところで意味はないだろうと今は放置した。
装備ボックスというのはミッション中に携行できるアイテム欄を指す。
切り替え用の武器と行動補助用のアイテムが幾つか。
それと回復アイテムや弾薬がある。
回復アイテムとはライフ回復と武装のエネルギーチャージ用のアイテムだ。
どちらも所持できるのは一つだけ。
ゲームの中なら頻繁に敵からドロップするアイテムなので、一つだけでもそう困ることはない。
「そういえば、誰もドロップしなかったな」
そうか。現実では落とさないんだな。
となると困ることになる。
ライフ回復アイテムもそうだが、エネルギーチャージのアイテムがないとなるとシグロmk3やタクティカルスーツを動かしているエネルギーを補給する手段が限定的になる。
生体電気による自然回復のみだ。タクティカルスーツを運用するだけならそれでも可能かもしれない。
だが、シグロmk3が必要とするエネルギー量はタクティカルスーツの比ではない。
タクティカルスーツはエネルギー切れが起こったとしても二分もじっとしていれば回復するが、シグロmk3は自然回復に任せていたらプラズマミサイルの一発も撃てないままミッションの制限時間が終了してしまう。
現実世界に制限時間は存在しないだろうが、使える頻度はかなり低くなるということだ。
「さっきの連中がこの世界の最高戦力なら、そこまで出番はないだろうが……」
しかしそれは甘い考えだと思うべきだろう。
「とはいえ、考えてもどうにもならないか」
ホームのアイテムボックスを使うことができればチャージアイテムは腐るほど残っているが、どれだけ試してみても装備ボックスのように開くことはできない。
「現状はタクティカルスーツでどうにかするしかないな」
とはいえ、このままだと目立つ。
まずはそちらをどうするべきか……。
「あ、これがいいか」
装備ボックスの中にあるものを取り出す。
なにもない空間からずるりと出てくる光景はゲームの中ではなかったものだったから驚いた。
だが、出てきたものは変わらない。
虹色の薄い生地で出来たレインコートのような物で、カメレオンコートという。
ミッション中だと周囲の景色に同化して潜伏するために使うのだが、それ以外にもコートの柄を自分でデザインしてお洒落着として活用することもできるという一品だ。
設定されたデザインは幾つかあり、その中で薄茶色の革風コートのものがあったのでそれを採用することにする。
ズボンを穿き、これを羽織れば何とか見える格好になったのではないだろうか。
「よし、なんとかなったな」
一つ問題を見つけたが一つ問題を解決した。
とりあえず気分はいいままだ。
夜明けとともに出発しようと決めてとりあえず焚火に当たりながら目を閉じてみた。
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