第41話 SNSで拡散された猫の動画【閲覧注意】


 2023年12月9日、あるSNSサイトに一本の奇妙な動画が投稿された。

 動画には、一匹の猫が暗い廊下を歩いている様子が映されていた。猫は、何かを恐れているかのように、時折後ろを振り返りながら、足早に歩いている。


 それから覆面をした男が後ろからズカズカ歩いてきて猫の頭にバールを振り下ろす。そこで動画は終わっていた。投稿者は、動画と共に以下のようなコメントを投稿していた。


「この猫は虐待されて殺されました。私はこの動画をフォロワーからDMで送られました。そのフォロワーも、他のフォロワーからDMで送られたといいます。そのフォロワーとは仲が良いのですが、彼は動画を見た後、不思議な体験をしたそうです。夜中に、猫の鳴き声を聞いたり、寝ていると手を何かにまれたり。私はこの動画が呪われていると感じています」


 この動画が某SNSに投稿されると、すぐに大きな反響があった。多くの人が、この動画を見たあとに怪異が起きた、と恐怖の声を上げた。


 動画は、投稿から数日後、投稿者の意向により削除された。しかし、動画はすでに多くの人に拡散されており、その恐怖は、人々の間で広がり続けていた。


 ある日、この動画を見た男性が、直後に奇妙な体験をしたとSNSに投稿した。事件当時、男性はアパートの三階に暮らしていた。夜中になにげなく例の動画を見たあと、外で猫の鳴き声がしたという。あり得ない。ここは三階で外にはベランダも何もない。鳴き声は次第に大きくなり、男性は恐怖を感じた。


 おそるおそるカーテンを開けて窓の外を見る。窓の外には黒い肉塊がへばりついていた。猫らしい毛並みがついているが、猫の原型をとどめていない。それが口とは思えない赤いくぼみから、猫の声を発している。かろうじて残った爪で、カリカリと窓を引っ掻いている。


 男性は、恐怖で声も出せず、ただ立ち尽くしていた。そしていつの間にか気を失ってしまった。気がつけば朝だった。

 窓の外を見た。もうあの不気味な肉の塊はどこにもない。


 男性は安堵して、立ち上がろうとした。だがそのとき足の裏に激痛がはしった。

 見ると畳の上に猫の歯が落ちていた。それを見て、男性は一目散に部屋から飛び出したという。


 某SNSに投稿された男性のコメントは、いまも多くの人々に語り継がれている。そして、あの動画は、いまも密かにDMで広がっているという。

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