第40話 アフリカのサファリツアーの出来事


 タンザニア セレンゲティ国立公園。

 もっとも人気のあるサファリツアーのロケ地。

 アフリカのサファリツアーは最近になって海外で人気がある。

 専用車に乗ってサバンナを散策。すぐ間近で野生のライオンやキリンが見えるということで評判がいい。


 英語やフランス語など外国語に堪能なビジネスマンのAさんは正月休みを使ってソロでアフリカ旅行にいった。目的はサファリツアーである。


 途中でイタリア人の三人のグループと仲良くなった。彼らもサファリツアーを希望してアフリカに旅行に来たという。


 そのイタリア人の女性いわく「参加されたかたは、いつどんな動物が現れるか分からないというドキドキ感が味わえて病みつきになるんですよ」


 また、「どんなシーンが見られるか」ということも、毎回わからないのでワクワクするのだという。



 また、最近は野生動物の生態に合わせて、旅行の企画をしたと言った。

 今ではタンザニアのセレンゲティ国立公園でおこなわれるサファリツアーが熱いらしい。

 エサをもとめてオグロヌーの群れが大移動する。オグロヌーとは大型のウシ科の動物である。

 オグロヌーの移動に合わせて肉食獣のライオンも移動するといわれる。

 彼らの行動にあわせてセレンゲティ国立公園を中心に連泊する企画だ。

 興味のわいたAさんも彼らと一緒に旅行することにした。


 サファリツアーの一日目は朝早かった。

 まだ日も昇るまえに車に乗って出発。おもに動物が行動するのはすずしい朝の時間帯だという。

 シマウマやキリンが見れて大興奮。


 昼間はロッジで休憩。食事のあとは読書をしてすごした。


 日が傾いてから、夕方のサファリツアーが始まる。夕日が沈みだした。ツアーの最終時刻。帰るぎりぎりの時間だ。

 現地人の運転手がオグロヌーの群れを発見した。車をよせる。オグロヌーの群れは数匹のライオンに狙われていた。逃げるオグロヌーの群れをライオンが追いかける。

 子供とおもわれる小さなオグロヌーがライオンに捕まる。喉にかみつきオグロヌーを殺す。


 雄のライオンもやってきた。ライオンの群れがオグロヌーを食べる。

 このときAさんは大自然を感じて胸が熱くなった。


「あれは何?」


 それに初めて気付いたのはイタリア人の女性だった。

 茂みに隠れながら、ライオンの群れを遠巻きに見ている何かの動物。

 イタリア人の女性はそれを指差しながら、ツアーガイドの運転手にたずねた。

 しかし運転手はそれを見た途端、早口で現地の言葉をまくしたてた。

 顔面が蒼白になっていた。ハンドルをにぎる手が震えている。

 運転手はアクセルをふかして、急いでその場を離れる。


 そのときAさんはあまり気にしてなかった。

 たぶん暗くなってきたから、急いで帰ろうとしていたんだろう。そう思っていた。

 ライオンの群れが遠くなる。Aさんはかすれるまでライオンの群れを見ていた。


 黒い何かは蜘蛛のように細長い手をしている。その細長い手でライオンに絡みつき格闘していた。その何かは1匹のライオンの舌をかみちぎる。それをクチャクチャと音を立てて食ってしまう。

 逃げるライオンの群れ。その黒い何かは取り残されたオグロヌーの死骸にゆっくり近づく。その死骸の腹をさばいて肝を引きずり出してクチャクチャと食っている。


 現地人の運転手は頭を掻きむしりながら、狂ったように何か叫んでいる。

 現地の言葉を知らないAさんは、彼が何をわめているのか分からなかった。

 ただ「バンニップ」と何度も連呼していた。それは聞き取れた。

 でも「バンニップ」が何なのか、今でもAさんには分からないという。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る