第21話 サバイバルゲーム


 北海道にすむ高校生Aさんの話。

 Aさんはエアガンを集めるのが趣味だ。値段の高いエアガンを買ってそれを友達に見せて自慢するのが好きだった。

 Aさんには友達が9人いて、みんなもエアガンを集めるのが趣味だった。

 休日には皆でサバイバルゲーム(エアガンを使った戦争ごっこ)をやって楽しんだ。



 ある日曜日。

 Aさんはお気に入りの迷彩服とヘルメット、ショットガンのエアガンをもって仲間とあつまった。


「今日はどこでサバイバルゲームをする?」


 友達と議論になった。

 友達のひとりが。


「夜戦をやろう」


 といった。

 それは面白そうだと皆が賛成さんせいした。

 人里はなれた森のなかに今は使われてない納屋なやがある。その周りでサバイバルゲームの夜戦をすることになった。自転車にのって1時間ほど林道をはしる。そこに池があって木のないひらけた場所があった。そこをセーフティ(ゲームしてない時の休憩場所)に設定した。


 そこで暗くなるまでAさん達はバーベキューをやって過ごした。


 いよいよ夜になった。

 そこは街灯もない森のなか。

 各自持ってる懐中電灯だけが頼りだが、ぼんやりとした明るさだ。


 そんな暗さのなかで、今回やるのは「殲滅戦せんめつせん」だ。

 殲滅戦とはどちらかのチームが全員撃たれるて全滅するまでおこなうゲームのこと。


 10人をアルファチームとブラボ―チームの2つのチームに組み分けする。

 さらに3人と2人の計4つのチームに分かれる。


 Aさんはアルファの3人チームに配属された。

 それぞれのチームが遠くに離れてからゲーム開始。


 暗くて相手がどこにいるかまったく分からない。

 となりにいる奴の顔でさえよく見えない。

 しかし懐中電灯をつけると、その明かりにめがけて、敵チームがエアガンを乱射してくる。

 だから迂闊うかつに懐中電灯をつけられない。

 遠くにぼんやりと人影が見えるが、それが味方チームか敵チームか分からない。

 そんな状況である。

 ときどき自分たちが何と戦っているのか分からなくなる。

 しかしそれが刺激的で面白い。


 しばらくすると納屋をはなれ、森の奥に入り込んでいることに気づいた。

 戻ろうとしたとき。

 仲間が前方を指差した。


 暗くてよく見えないが、たしかに遠くに人影がみえる。

 ずんぐりむっくりした大きな影だ。

 そいつは木をじっと見たまま立っている。つまりこっちに背を向けている。

 木の皮を爪でがりがりといている。


「敵チーム発見!」


 Aさんが言った。

 3人がそれにむかってエアガンを発射する。

 しかしそいつはおかまいなし。

 ずっとこちらに背を向けたまま。


「なんだよ、ゾンビかよ!」


 ここでいうゾンビとは『明らかに撃たれているのに撃たれていないと言い張る奴の蔑称べっしょう』だ。

 本当なら撃たれた時点で右手をあげて「撃たれた」と大声で周囲に報告しなくてはならない。


 ムカッとしたので、その人影にむかって3人でオーバーキルした。

 オーバーキルとは相手にむかって弾倉だんそうが空になるまでBB弾を撃ちこむこと。


 その人影は、振り向くのではなく。

 ぎゅううんと仰け反るような奇妙な体勢で、こっちに顔をむけた。

 なんかおかしいと思い、Aさん達はその人影にむかって同時に懐中電灯をむけた。


「うわあああああああ!」


 Aさん達は絶叫した。

 すぐに他の仲間を呼び、10人全員で自転車に乗り、そこから走り去った。

 荷物を置き去りにしたまま。





 実はAさん達が見たものは……

 体長2メートルのヒグマだった。

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