未宇星人

『10』

お正月に月の両親の家に遊びに行ってみた。

キッチンテーブルに座ってたら 両親が2人で仲良く 何か どんぶりを手に持って運んできて どんっと そのどんぶりをテーブルに置いて

それから2人で声を揃えて自分に言った。

｢これが2人で料理で模写した

『ブグロー【ヴィーナス誕生】風サーモンとイクラの海鮮親子丼』やでーーっ｣

えーっ

ええーっ

うーわっ ほんまや ほんまに『ヴィーナス誕生』やあああああ

うーわっ めっちゃ美味しそうやあああああ

いただきます でも食べるの もったいない

でも いただきます

海鮮親子丼食べてたら両親が生まれ故郷の惑星から戻るよう指令を受けたらしく

月を離れることになった。自分も両親と一緒に。生まれた惑星に久々に帰れる。

大阪に戻って中学でみんなに別れを告げた。

それから、推しのアイドルのライブに行って 握手会で今日で大阪を離れること言った。｢ほんまは地球を離れるんだけど｣って自分の心の中だけで思った。

記念に2ショット撮って サインしてもらった。日付け書きながら｢今日は2が多いよねーっ｣て推しも言ってた。確かに。

今のところ 最高に2が多い日や。

しばらく直接会えないけど地球を離れても動画観れるしリプもできる。

｢ばいばい またねーっ｣

大阪も良いとこやったなあ。自分の惑星帰っても しばらくは大阪弁 出てまうw

だんだん小さくなっていく地球を窓から見ながら 推しの曲 聴いて チェキをそばに置いて

チェキ飯食べてた...地球では、今日は2222年2月22日

自分の惑星では、今日は3333年3月3日

大好きな推しにも、自分が、未来の宇宙人だってことは言ってない。だれにも言えない。だれにも言えない恋なのだ。

今の惑星で、本当は女子高に行きたかったけど 工芸科のある高校に進学した。伝統工芸を学びつつ 自分の絵も描いている。芸術大学に進もうと思っている...

両親は今の惑星でも、地球の絵画を料理した海鮮親子丼をつくってくれる。両親は地球のサーモンとイクラが大好きだ...