02

 ゲームをしながら二人はいろんなことを話していた。僕の知らない話だと思ってぼーっと聞いていたら、ハキーム様が急に話題を変えた。


「…ところで部屋があるのに、シュエはザファルの部屋から出たことがないと聞いたが、本当か?」

「…僕は、奴隷。部屋、ないのでは?」

「…………ザファル!!!」

 ハキーム様がザファル様に怒鳴った。対してザファル様はけらけらと笑っていた。仲が良いのが見てとれて、羨ましい。


「従者が出来るまでは俺の側が安全だろうし、側にいさせただけだ。これからはハキームもいるから、俺かハキームの部屋だな!」

「この屋敷で命を一番狙われてるのは次期当主のお前だぞ!?その側にいるのは危ないだろう。それに部屋を用意しているのなら、シュエはそこにいるべきだろう。」

 話ながら、ゲームをしている二人。話ながら別のことに頭と手を働かせるのって難しいのに、良くできるなぁ。ぼーっと見ていたら、突然ザファル様の手が止まった。


「…ハキーム、手を抜くな。」

「今までは幼馴染みだったが、これからは主従関係だ。主を勝たせるためなら、どんな手段でも使おう。」

 ハッとハキーム様が笑う。でも、ハキーム様はザファル様のこと呼び捨てだし、いまだって敬語使ってないよと思ってしまうのは仕方ない。それにその笑み、主様にするような笑みじゃないよ…。


「俺が当主になって支えるのはお前だ。俺より賢くあれ。こんなことで負ける癖でもついたらどうする。」

 ザファル様がちょっと怒っている。ピリピリとした空気になったら、ここに居づらいし、やめてほしいな。


 少し考えて、僕はザファル様に寄りかかった。ザファル様の意識をハキーム様から僕に移せば、ピリピリとした空気にはならないのではないかと思ったからだ。予想通りザファル様は僕のことを気にかけてくれた。


「…シュエ、眠くなったのか?」

「ザファル様、誰かと仲悪い、嫌です。」

 ザファル様からお返事がなく、見てみると、上を見ていた。何かあるのだろうかと僕も上を見ると、向かいから笑い声が聞こえた。ハキーム様が僕らを見て笑っている。


「上には何もない。ザファルは神に祈りを捧げていると思った方がいいな。……それとザファル。俺に負け癖がつくだと?君の従者を侮るなよ。」

 ニヤリと笑うハキーム様。それを見てザファル様は嬉しそうに目を細めた。ゲームはその後も続けられ、モノを賭けはじめてから、ハキーム様も本気を出した。


 結果、僕は自分の部屋で過ごす権利と、屋敷内を自由に出歩く権利を手に入れた。ハキーム様が僕のことを思って、僕の権利をかけた時だけ本気を出してくれたおかげだ。久しぶりに部屋から出るのは少しドキドキするけど、楽しみだなぁ。

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