02

 次の日もその次の日も、僕は毎日おいしい食事と美しい洋服を与えられた。ザファル様の部屋を出ないように命令を受けているので、外には出れないけど、日中は人間の言葉を勉強して夜はザファル様に絵本を読んでもらった。奴隷なのにどうしてこんなに良くしてもらえているのだろうか。ある日の夜に疑問に思って、ザファル様に聞いてみた。


【何も、しなくてよいのでしょうか?】

「妖精の言葉になってるぞ。それになんでそんなことを聞くんだ?」

 片言でも人間の言葉を話せるようになったから、普段から人間の言葉を使うように言われているけど、慣れ親しんだ言葉がとっさに出てしまう。


「…あ、僕は奴隷。家のことしてない、いいのです?」

「大丈夫だ!ソレイユ家では白は幸福の象徴、ましてや白に近い子は神の愛し子として大切に扱われる。お前は髪と肌が白く、瞳の色だって白に近い灰色だしな。」

 ザファル様のお父様が僕を選んだのも、僕が白かったからという理由らしい。確かにここにいる人たちはみんなが褐色肌で、パーティーの時にざっと見て白を持つ人はいなかった気がする。


「ザファル様も、銀色、きれいです。」

「…ありがとな。家族の中で俺だけが白に近い色を持つから、期待されているんだ。そこにシュエ、お前という白が加われば、みんなさらに希望を抱くだろう。」

 ザファル様はソレイユ家の長男、次期当主といわれるお方だ。それだけでも重圧だろうに、銀色を持って生まれただけでさらに周りからの期待の眼差しが重くのしかかっていただろうに。僕が加わっていいことがあるのだろうか。むしろ負担になっていないのだろうか。心配になってザファル様の顔を見れば、優しい目で僕を見つめていた。カッコいいので見つめないでほしい。心臓が持ちません。


「そうだ!明日、正式に俺の従者が決まるんだ。式が終わったらここに、そいつも連れてくるからな。」

 …ザファル様の従者は僕のことをどう思うのだろうか。奴隷の分際で夜はザファル様に絵本を読んでもらっているし、とても良い暮らしを送っているのだが。睨まれたらどうしよう。少し怖いなと思っていたら、ザファル様が僕の手を取って、手にキスをした。


「大丈夫、ハキームは優しいぞ!お前を傷つけはしないさ。」

「ザファル様、そういった行動、あの、困ります。」

「…挨拶だ。どうか慣れてくれ。」

 笑ってもう一度僕の手にキスをするザファル様。本当にこの人、子供ですかね。将来はモテモテのイケメンになりそうだ。

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