■■■■〚路地裏のカフェ〛■■■■
「…………んむぅ……虹が…キレイだねぇ…………………ハッ!!」
ふと目を覚ました私が時計を見ると時刻は8時ピッタシ。
…目覚まし時計、セットし忘れた…。
まぁ私の場合セットをしておいても無意識のうちに止めるか壊すかしちゃいそうだけど…。
苦笑いしながらベッドからでた私は……本名は自分でもわからないけど、周りからは〚ルシア〛って呼ばれてる十四才。
私が寝室から出て一階に降りると黒髪のキレイな女の人が一人の男の人をあいてになにか話してる。
私は階段の踊り場に腰を掛けて気配を消す。……すると後ろから「…ルシア…そこに座られるとメーワクなんだけど…」と声をかけられた。
声の主は〚ココア〛、くせっ毛ながらツヤのあるきれいな黒髪を持った私の唯一の血のつながった家族で顔はなかなかの物。
血がつながっていることは確かなんだけど、自分と同様、私は彼の本名も知らない。
ココアは私越しに一階の女の人と男の人の様子を見た後、私の腕を掴んで「…戻ってよう?」と言ってきた。
…まぁココアは言うなら、と私は二階の自分の寝室に戻る。
数分経ってから男の人が帰ったころ、私とココアは階段を下りて女の人に「「おはようございます。」」と朝の挨拶をする。
「あぁ、おはよう。ルシア、ココア。さっき覗いてきてたから何となく察しはついてると思うけど、朝早くから仕事の依頼が入ったわ。」
…一応バレないように覗いてたつもりなんだけどな。
あれでも気づくなんて、さすが…勘が鋭い。
このキレイな女の人は通称〚オーナー〛。
オーナーはこのカフェを経営していて、この街じゃあ珍しい女性マスター兼オーナーなんだ。
ただ、残念なことにこのカフェに〚普通の〛お客さんが来ることはあまりない。
それでも、〚もともと孤児だった私とココア〛を引きっとって育ててくれて、さらにカフェを経営できるのはこのカフェがある仕事の依頼場でその仕事でそれなりに儲けられるからなんだ。
…実はオーナーは裏の世界で有名な超一流の殺し屋。今は〚仕事〛をしてないけど、二人の殺し屋の育成をしている。
…勘のいい人は気付いていると思うけど、私とココアの事だ。
オーナーは孤児だった私たちを路地裏で拾って、私にはオーナーの故郷の国の名前をもじった名前を、ココアにはカフェに私たちを迎えてくれてその時に初めて飲んだ〚ココア〛の名前を付けてくれたんだ。
「…で、オーナー。今回の〚ターゲット〛はどこですか?」
私はオーナーに質問する。
「今回のターゲットは、とある麻薬組織の幹部よ。私も前に護衛を頼まれたことがあるんだけど、人を下に見ているというか何というか…。確かに薬の密売に関する知識や裏社会で生き抜くための〚スキル〛はあるんだけど、自分の為なら仲間を犠牲にすることも厭わない、気に入らないタイプの人間ね。」
…前に仕事を頼まれた相手でさえ普通に〚仕事〛の依頼を受けるんだからこの
普通の人であれば躊躇いとか感じると思うんだけど。…と思ったことはもちろん口には出さない。
「一応聞くけどあなた達はこの〚仕事〛をするのかしら?」
オーナーは〚仕事〛が入るたびに私とココアにこう問いかける。
「…もちろんです。…」
ココアがあくびをしながら答えた。
ココアもココアで、人殺しの仕事をやるかやらないかの場面でも結構余裕らしい。
…え?…私がおかしいの!?
「ルシア、あなたの回答待ちよ。」
「すすす…スミマセン!!もちろん受けさせていただきます!!」
私は舌を噛みながらオーナーに答えた。
「なら、準備をしてちょうだい。」
「「ハイッ!!」」
外ではきれいな虹がかかる中、私とココアは〚仕事〛を受けた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
私たちはオーナーのオススメで基本、夜に〚仕事〛をするんだけど、私とココアでは得意な武器も違う。
ココアは拳銃やスナイパーライフルを使うのが得意で狙った獲物は絶対に外さない。(ココアが射撃を外したって言うのを見たことも聞いたこともない。)
一方私は銃とかの遠距離武器は全然できなくて、得意な武器はナイフや刀みたいな近距離用の物。
ナイフを使った突きや切るって動作は人よりできる自信はあるけど、投げナイフはすんごく下手。
前に投げナイフの練習をしてたら読書中のココアの方に飛んでっちゃったことがあって…。
その時はココアが本を盾にナイフを止めたから大惨事にはならなかったんだけど、ココアにめちゃくちゃ怒られた…。(もちろん私が十割悪いんだけど)
それ以降投げナイフは全くやってない、…〚仕事〛をやってる最中に誤ってココアに刺さったらシャレにならないからね。
そんな考え事をしながら〚ターゲットの〛プロフィールを見る。
ターゲットは〚パラソル〛って言う名前の麻薬組織幹部でよくわかんないけどスッゴク悪い人みたい。
「…クスリの密売に強盗、…殺しも。…敵が多そうだな。」
隣にいたココアが突然呟いた。
相変わらず眠そうな顔をしていて危機感がまるでないって言った感じだ。
「…今までの事例を見るに、拳銃が得意みたいだね。…ルシアの特攻じゃ厳しいような気がするけど。」
ココアの指摘に私はハッとする。
確かにプロフィールを見ると〚ターゲット〛が過去に起こした強盗や殺人なんかは全部、凶器に拳銃が使われてる。
「…見逃してたぁ~」
「…これを見逃すのは〚殺し屋〛としてマジでヤバイ。」
ココアに軽く怒られてしまった。
さっきココアが危機感を感じていないっていったけど大概私もそうなのかもしれない。
人を殺すことにためらいは感じるけど、そこまでの過程をよく考えないというか、あまり気にしないというか…(今回も自分の危険に直結する話なのに見逃してたし)
「…今回は〚ターゲット〛を僕が向かいのビルから狙撃する感じで良いかな?」
ココアが今回の作戦の確認をした時。
「あ…そうそう、この〚仕事〛は依頼主の復讐が目的だから〚ターゲット〛を簡単に殺しちゃだめよ。」
オーナーがとんでもないことを言った。
「えぇ!!復讐が目的って…。ココアの狙撃で仕留めちゃダメってことですか!!」
「いや、トドメをさす分にはココアでもいいんだけど、そこまでにひと悶着入れてほしいのよ。」
ココアはどこか不満そうな顔をした後、「…仕方ない。」と呟いてから作戦を考え直し始めた。
…というか、ココアの狙撃一発で仕留めちゃいけないとなるとやっぱり……
「……そこでルシアの特攻が必要になるのよね。」
…そうなるのか……。
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