第一楽章 双子の殺し屋。

▲▼▲▼〚プロローグ〛▲▼▲▼


プルル プルルルル プルルルルッ  


「…なんだ!!こんな時間に電話してくるんじゃない!!俺はヤクの取引を明日の朝に控えてるんだ!!」


「…こんな時間に電話したのは悪いと思ってる。…だが、聞いてくれ。情報屋からのスジなんだがお前が〚キラーラヴィッツ〛の〚目標〛になったらしい。正直、組織にいた頃、俺を裏切ったお前とは話もしたくないがせめてお前の最期の前に別れを告げようと思ってな。…電話はもう切るさ。…あばよ。」 ツー ツー ツー


「…俺が〚キラーラヴィッツ〛の目標だと!?」


 〚キラーラヴィッツ〛は裏の世界では有名な二人組の〚死刑執行人〛。


 〚キラーラヴィッツ〛は〚目標〛がどんなに偉くても、金持ちでも…強くても必ず〚仕事〛を果たすと最近話題になった。


「ふざけんじゃねぇ!! 俺は悪行を尽くしてきたがまだ死ぬなんてごめんだ!


 「…クソが!! こうなったら今のうちに逃げるしかねぇ!! ヤクの取引なんかより、自分の命の方が大切だ!!」


 男は金庫から麻薬と金品をありったけカバンに詰めて部屋を出ようとしたその時


 男の正面に一人の少女が立ちふさがった。


 薄暗い部屋に映える白いパーカー部分にはウサギの耳のかざりがついていた。


 電話で〚執行人〛の事を聞いていた男は瞬時に悟った。


 この女が〚キラーラヴィッツ〛だと。…だが、


「クッ…ハハハ。裏社会を賑わせている〚キラーラヴィッツ〛がこんなガキだったとはな…殺られる前に俺がお前をぶっ殺してやるよ!!」


 男はポケットからピストルを出し少女に向かって撃つ。


 少女は男を飛び越え、男の後ろ側の窓の前に立った。


「…ガキのくせに小癪なマネを!!」


 男がピストルを少女の頭に向け撃つが、今度は少女がしゃがみ込み、またしても当たらなかった。


 だが、しゃがむという次の動きが出しにくい体制に少女が鳴ったのを見て男は笑った。


「これで………終わりだ………!!」


 その時、月明かりに反射してはじめて男は窓の向かいのビルの屋上に人影があることに気付いた。


 〚キラーラヴィッツ〛は一人がナイフ使い。……もう一人がライフルや拳銃を使い分けるスナイパーということを男が思い出したころ、男は床に倒れ伏していた。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

〚被害者:本名不明。〚麻薬組織リヤク〛の幹部でコードネーム:パラソル〛


自宅の高層マンションにいたところを向かいのビルから狙撃され死亡したとされる。


 狙撃地点から、コードネーム:パラソルのいたマンションは600m以上離れており普通であれば狙撃はできない。


 また、現場に残された弾痕から狙撃犯は一発で被害者を狙撃したことが判明。警察は事実関係の確認と犯人について捜査している。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 …この内容がニュースで取り上げられたころ、どこか暗い表情の男のもとに一本の電話がかかった。「…〚仕事〛は果たした。」…と老人の声で。


「そうか、俺を裏切ったアイツはもうこの世にいないんだな。」


 暗い表情の男は、狙撃された男に電話をかけた男だった。


「アイツのせいで俺は組織を破門になり、生きていくのにも苦労した。…金はそっの言い値で払う。……感謝する。」


 男の声がどこか後悔するような、そしてさみしげだったのを電話の相手は気付いたのであろうか。

 

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