ディアボロ
『フリーダム』を出て、少し歩く。
毎日この喫茶店にはお世話になっている。
営業時間を過ぎても気付かずにいることも多く、本当に申し訳ない限りだ。
最近、フレンズの研究にあまり進展が見られない。
僕は、ひとりで研究を続けていても埒が明かないということに気付き始めていた。
新丸子駅の方へしばらく歩くと、高架下に小さな公園がある。
そこには普段、あまり人がいない。
だから僕はそこに向かった。
やはり夜ということもあって、今日も誰一人としてそこにはいなかった。
ブランコに座って――。
「ここなら人目も少ない。出てきたら?」
そう告げた。
すると、暗闇の中から5人ほどの人影が現れた。
その内の4人が拳銃のような物を構えていた。
「やめろ。目的は駆除じゃない」
拳銃を構えていない、5人の中のリーダーと思しき人物が他のメンバーにそう忠告する。
「へえ、じゃあこんな大人数で何の用件? ……健ちゃん」
僕はリーダーの人物に質問した。
彼――安田健斗とは長年の付き合いである。
本当に長い。前世からの、と言っても過言ではない。
僕は彼のことを”健ちゃん”と呼んでいる。
「何も健ちゃんと僕の仲なんだから、普通に電話一本で呼び出してくれれば良かったのに」
「ごめんな、四季。こっちも仕事なんだわ」
「え? 1週間くらい僕のこと監視するのが仕事なの? お医者さんもまあまあ暇だね」
「違うわ。あと、俺けっこう忙しいんだぞ」
「じゃあお互い忙しい身という訳で、手短に頼むよ」
「お前も忙しいの?」
「うん。早く帰って星見て寝たいから」
「暇じゃん」
「うるせーなー。で? 何?」
「……お前に、一緒に来てもらいたい」
「どこに?」
「
「誰が?」
「お前が」
「どうして?」
「院長が話したいらしい。詳しくは知らん」
「どのように?」
「当然、徒歩。ていうかさ、お前5W1H全部使おうとしてるの?」
「まだwhatとwhich使ってないし」
「知らんわ」
僕はブランコからぴょん、と飛び下りる。
「んじゃ、行きますか」
「……いいのか?」
「うん、今の院長先生に挨拶もしときたいしね」
「中原先生に?」
「うん」
その公園から名京大病院は、歩いて10分もかからない距離だ。
健ちゃんとくだらない世間話をしていたらすぐに着いた。
久々に来るこの場所。
以前、ここで自分が起こした出来事が脳裏にフラッシュバックする。
昔を少し懐かしみながら病院内を歩いていると、いつの間にか院長室の前にいた。
健ちゃんがドアを開けた。
「院長。連れてきました」
「うん、ありがとう。入ってもらって。あと、君は下がっていいよ」
「はい」
健ちゃんが目で合図をしてきたので部屋の中に入った。
「え? 四季さん?」
聞き覚えのある声がした。
その方を向いてみる。
「あれ? のぞみちゃんじゃん。どうして……」
すぐに気付いた。
中原望海。
彼女の父親が――。
僕はのぞみちゃんと少し離れて座る壮年の男性に話しかけた。
「そうか……のぞみちゃんはあなたの娘さんでしたか。中原先生」
「うん、そういうことだ。久し振りだね、シキ君。いや……『
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