ステーキが来ていない

 ステーキが来なくなって、4ヶ月がたった。今は、桜が見え始める3月末だ。いい加減、ステーキに連絡しようと思った。

 放課後、私は母におつかいを頼まれた。歩いていると、ステーキの父、ボスステーキにあった。だから、私は声をかけてみた。

「あの…私、前に」

「ああ、君か。こんにちは」

聞くのを迷ったが、に関して訪ねてみた。

「あまり聞きにくいことなんですが、今ステ…優輝くんてどうしてますか?もし、前の私達との小さな喧嘩が原因なら謝りたくって。」

ボスステーキは表情が少し暗くなった。まるで、『本当のことは言いたくない』と言うかのように。それで少し時間を置いてから、口を開けた。

「実は、優輝は、世界でも少ない症例の病気になっていて、その病気が原因で学校へ行けてなかったんだ。」

「あの、、大丈夫なんですか、、、、。死なないですか、、、、、。会うことできませんか、、」

「生きるか死ぬかは、あまり明らかになってなくてよくわからないんだ。あと、優輝は会ってくれないと思うよ。」

「そうですか…ありがとうございました…」

 

 私は、泣きそうだった…。もう会えないかもしれない、謝れないかもしれない、何も話せないかもしれない、前みたいに楽しくみんなであって遊ぶこともできなくなるかもしれない。そうやって色々なことを考えるたび、どんどん悲しさと混乱が増していった。


 ある日の学校、いつも会う、はやとくん、そしていつか来ると私は信じてるステーキ。今まで当たり前のように思えていたことが、当たり前じゃない。そう考えていたときに、はやとが軽くのしかかってきた。

「なによ~、も~、、。」

 人が健康な体で生きられているという素晴らしさ、そして、ステーキの秘密を守るため、はやとくんには言えない辛さが胸を固く縛り付け、思わず涙腺が崩壊した。急に泣いたのだからはやとくんも驚いたのだろう。なんとも言えない表情をしていた。

「泣いてるのか?何か嫌なことでもあったのか?」

そう、彼は聞いてくれているけれど、たえきれなくてその場から駆け足で逃げた。もうすぐ授業が始まってしまう。けれど、どうやって教室へ入ったらいいか、、、。よくわからなくて、とりあえず屋上へ駆け込んだ。空気が澄んでいて気持ち良い、そう感じながら、色々なことを頭で整理していた。しばらくたったとき、屋上の扉が開く音がした。誰かと思ってみると、そこには小春がいた。

「さっちゃんがいなくなったって。学校中の先生が騒いでる。すぐ行かないと大変なことになるよ。てか、もうチャイムなってるけど。」

「何でここにいるってわかったの?」

「幼馴染みだからっ。行くよっ。」

 そして私は、先生たちに何を言われるかおびえながら、階段を降りて、自分の教室へ入った。すると、みんな

「どこいってたんだよ」、「授業サボろうとしてもできないもんだね」

とかそんなことをぶーちくぱーちく、、、。

 その後、一番考えたくなかったシチュエーションに。彼が来たのだ。

「どこ行ってたんだ、、。俺なんか悪いことしたか。何があったんだ、。」

別に、はやとくんが悪いわけではないし、どこへいっていたのかを言いたくないわけではない。けれども、どう頑張っても、思っていることが言葉になって、伝わってくれない。なぜか、"ごめん"その言葉しか言えなかった。この後の授業も全く入ってこなくて、その流れのまま、放課後職員室に呼ばれ、怒られた。でもその記憶さえも曖昧だ。今は、ステーキのことしか頭にない。

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