第7話 旗
佐々木の件については、任務中の不慮の死であったという通知が麒麟隊から各隊に送られた。
佐々木があの任務中に行った堂本への妨害、その他命令に逆らう行動についての言及は一切行われなかった。
おそらく、そのことを堂本も麒麟隊に報告していないのだろう。佐々木の最期をみとった1人である彼にも、彼なりに思うところがあったのかもしれない。
佐々木は「入隊後まもなく殉職した哀れな新人」として片づけられたのだ。
新藤隊長との面談後、俺は佐々木の能力を使ってみた。骸骨は難なく使いこなせた。あたり一面を覆いつくすほどの数を顕現させることも可能だったし、それら複数の骸骨に、個別で違う動きを同時に行わせることもできた。大きさも自由に変えられる。
なんだって思うがままだ。
その結果は、自分が「天才」なのだということをひどく痛感させた。
それが、ひどく虚しかった。
以来、彼の能力は一度も使っていない。
「それで? 話って何ですか、隊長」
俺は任務のない日を見計らい、キキとピエトロを青龍隊キャンプ地に呼び出し、会議を開いた。2人とも何となく俺の空気を察しているのか、いつもより素直に席についていた。
「麒麟隊について、お前たちはどう思う?」
「麒麟隊?」
キキが片眉を上げる。
「どうって、まあ何でもできる私たちの上司、ってとこね。わからないことが多いけど」
「確かに、謎は多いですね。強大な力を持っているようですが、能力もわからなければ、何人で構成されているのかも定かではありません」
ピエトロは端正な顔を珍しく曇らせ、椅子の背もたれにもたれた。
「俺は、麒麟隊が『三次元に漏出したボツキャラを無条件に全員削除しろ』と命令するのを疑問視している」
「え?」
2人が同時に声を漏らす。
「でもそれって、三次元への被害を防ぐため、なんでしょ? いまさら何を言うの、こざい?」
「いや、でも殺さずに済む方法があるんじゃないかと思うんだ。麒麟隊ならすでにその方法を知っているかもしれない。実際、千里眼のような強力な能力を持つ者もいるわけだし。知っていても何らおかしくない」
「うーん、そもそも考えてみれば、私たちが三次元を守っているのも不思議な話ですよね。私たちにはそれが可能ですけど、実際にやる義理は無いというか」
「ああ、麒麟隊が言うことにはいろいろと不可解なことが多い。俺は、我々塵芥会がなぜ存在するのか、なぜボツキャラを殺さねばならないのか、麒麟隊が何を隠しているのか、それを暴きたい」
張り詰めた空気が場を支配する。2人は互いに様子を伺い、押し黙った。
しばしの沈黙ののち、口を開いたのはピエトロだった。
「でも隊長、それ以外にもやりたい事あるんですよね? そっちはどうするんです」
その言葉に、俺の作者の顔が浮かぶ。俺はすぐさまそれを振り払った。
「……そっちは、俺個人で何とでもなる」
また沈黙が俺たちを覆う。しかし、今度はキキがその沈黙を破った。
「私はこざいについていくわよ。だってそれ、『天才』として導き出した結論なんでしょ? それなら信じてもいいと思う」
ピエトロがその薄い唇の端をもち上げる。
「私もお手伝いいたしましょう。隊長が望むのならば。麒麟隊についていくか、あなたについていくか。私はあなたに賭けます。そして勝って見せましょう」
俺は2人の顔を見た。2人とも、しっかりと目を合わせてくる。
「決まりじゃないですか? 隊長」
「……ああ」
空気を吸い込み、浅く、長く、それを吐き出す。今一度決意を固め、それを曲げぬよう、腹に力をこめて宣言する。
「青龍隊は、麒麟隊に謀反を起こす」
あとがき
これにて1章完結とします。次回からは他の部隊も多く活躍するので引き続き御贔屓ください!
☆、フォロー、コメント、よろしくお願いします!作者、書ききれるか不安になってきました……
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