第4話 いじめ殲滅記 ④ 拳遊亭絶坊主師匠の独演会

そして、ここから私の独演会が始まった。



ノーカットでどうぞ!



「ワシな、I君知ってるかどうか知らんけど、昔、プロボクサーしてたんよ。せやから徒党組んでイキがってる奴見ると虫酸が走んねんな。もう本音言うたらワシがしばき回したいくらいやねん。



息子も幼稚園の頃からボクシングジム連れて行って習わしとったんやけどな、ボクは人を殴るんが本当に嫌なんよって言うくらい心優しい奴なんよ。



もし、今、アイツ、マンション帰ったけど、精神的に傷付いてるから首吊って自殺しとったらI君どうすんねん?どう責任取る?もし、アイツ死んどったらワシ人間変わるからな。君の事人生かけて追い込むからな。



アイツがな、3歳の頃。イトーヨーカ堂に買い物行ったんや。


で、嫁はんと別行動して、ワシはあいつを抱っこしてウロウロしとったんや。したら、マジメそうな中学生くらいの子が3人ベンチに座らされて、高校生くらいの不良グループ7、8人に囲まれとったんや。



店員も見て見ぬ振りしとったから、ワシはあいつを抱っこしたまま、その中学生を助けに行ったんや。その一部始終をあいつはワシの腕ん中で見とったんや。



せやからか、あいつは徒党組んで弱いものいじめするような事はせんかったんかと思うんや。だから、そのKが集団で言葉でいじめられたって聞いたワシの気持ちわかるか?ホンマ、やってエエんやったら関わった奴全員しばき回したい気持ちなんよ。



で、あいつは今、週に1回だけやけど、地下格闘技の団体にワシがボクシング教えに行ってるから一緒にキックボクシングやってるんよ。お前に言うてきた奴しばいたれ!言うてもあいつはせんかった。



君、なんか不良の友達おるらしくてイキがってるみたいやけど、その地下格闘技しにきてる奴どんなんか知ってるか?刺青入れて気合い入っとる人間ばっかりや。君が見たことないくらいの不良ばっかりやからな。そこであいつは皆から可愛がられてて、いじめられたって話したら、そいつ連れてきて下さいよ!やったりますわ!って言ってくれてるんよ。君、もし今後も同じような事したんがワシの耳に入ったら校門で待ち構えて連れて行くからな。ほんで息子と同じように集団でやられる気持ち味合わせてやるわ。」



私はIを見据えながら一気に話した。



「何か言いたい事あるか?」



「・・・いえ、何もないです。」



Iは明らかに怯えていた。



当たり前だ。



私の持っている威圧感を最大限に発揮したんだから。



「お母さん、何かあります?」



「・・・いえ、何も。」



「そうか、ほな帰ってもらって構いませんよ。どうぞ、お引き取り下さい。」



I君親子は頭を再度下げて靴を履いていた。



「あ~、そうそう!やるやる言うてやらへんのを“脅し”っていうんやけど、ワシ必ずやるからな!これは“警告”や、警告!それだけわかっとってくれな、I君!」



私は一際大きな声で明らかに威圧する巻き舌一歩手前の口調で言った。



その筋の方が何故怖いかご存知だろうか?



チンピラじゃなく上の人間程、物腰が柔らかい。でも、凄む時にはジキルとハイドかってくらい変わる。この緊張と緩和で堅気の人間は情緒が混乱し恐怖を抱くという。



私は自分が持っている、ありとあらゆる材料を使ってI君を追い込んだ。



大人気ない?



冗談じゃない。



いじめをするような人間は屑だと思う。



百歩譲って小さい頃はしょうがない部分もあると思う。しかし、中学生くらいになって自我が出来つつある状態のいじめは看過できないと思う。



まぁ、1番は息子を守る為。なりふり構ってなんかいられない。



自分が14歳のあの頃のように自殺という選択をされてはかなわない。私はたまたま風が吹いたから死なずにすんだ。



親として子が先に死ぬなんて堪えられない。



後に息子に聞いた。



「そういえば、3歳の頃、父さんがお前を抱っこして、絡まれてた中学生助けたん覚えてる?」



「え、知らん。」



覚えてないんかい!



得意気に当時の話を持ち出してI君に講釈垂れてた私の立場!(笑)


で、無事に息子の笑顔は戻ったとさ。めでたしめでたし。

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我が家のいじめ殲滅記 絶坊主 @zetubouzu

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