第3話 話し合い

以前、妻が言っていた。



三者面談で「K君は本当に明るくて良い子です!どうやって育てたらこんな子になるんですか?」と、同じ子育てをしている女性担任から聞かれたと。



そう言われるくらい息子は先生から信頼されていた。それと、Iの素行が普段から悪かったのだろう。担任の先生は本当に親身になってくれ、よく動いてくれた。



お陰で2日後に私の治療院でI君親子と話し合いができるようにお膳立てしてくれた。



私自身、親バカ的に一方的になってはいけないと息子自身にも非がないか調べた。



妻のママ友数人にリサーチしてもらい息子には非がなく、逆にIの横暴さをママ友たちが口を揃えて言っていたらしい。



これで決まった。



思う存分。



腹の底から。



トラウマになるくらい震え上がらせてやろうと。



でも、一縷の望みじゃないけれど、私自身、心の根底では性善説を信じたいと思っている。なので本当に反省し、悔い改める姿勢が伝われば許してやろうと思っていた。



まぁ、こういう“いじめ”をする人間は性根が腐っとるから、その可能性は限りなく0に近い。おそらく自分を守る為の言い訳を考えていることだろう。



私たち夫婦、息子のK3人治療院で待っていた。



約束の時間きっちりにI君と母親が話し合いに来た。



「この度はすみませんでした。」



気の強そうなI君の母親は少し頭を下げて言った。I君もちょこんと頭を下げていた。



とりあえず座ってもらった。



流れる微妙な空気。



気の強そうな母親が口火を切って話し始めた。



「今回の件、息子に理由を聞いたんです。そしたら対外試合の応援の時にふざけていて、ずっと腹が立っていたって言うんです。だから・・・」



やっぱりな。



私はI君の母親の言葉を遮って言った。



「Iさん、私たちもね、いろいろ調べさせてもらったんですよ。ウチの息子が試合の応援の時にふざけ過ぎていた?そんな話ひとっつも出てきてません。顧問の先生にもウチの息子に非がないか聞いたところ、ないです。と言ってましたよ。」



私は息子に言った。



「おう、K!もうマンション帰っとってエエで。」



私の一縷の望みは叶わなかった。和解する気だったら息子も居た方がいいかなと思っていたので、同席させたけれど無駄のようだった。



息子はマンションに帰っていった。



息子が治療院から出たのを確認して、私はI君に顔を向けて言った。



「ワシらな、今回だけの事だけやないんよ。君がウチの息子に中1から度の越えたからかいをされていると聞いてるんや。男やったら腹決めて素直に認めた方がええんちゃうか?」



「・・・はい。」



そう言ってI君は私から目を逸らし下を向いた。



「I君、大人が真剣にモノ言うてんやからな。きちんと目見て話したい事あるんやったら言うてや。」



そら目逸らすわな。口調は穏やかに言っているけど、気持ちとしては「お前、コラ!わかっとんのか!」って顔付きだった。



「どしたん?アンタ、そんな怖い顔して?」



普通の何の感情ものせてない顔してる時。妻からそう言われるくらい私の顔は目つきが悪く怖い顔をしているらしい。



そんな私がめちゃくちゃ怒っているんだから何をか言わんやって思う。でも、もしかしたら一周回ってファニーな顔かもしれなかった。



I君は私にそう言われて、引きつりながら私の顔を見た。



「もう、素直にごめんなさい言うた方がまだ男や思うで。」



するとI君。



「・・・すみませんでした。」



そして、ここから私の独演会が始まった。

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