第5話 夢か否か
「だいたい皆の好きなのは分かるんだけど、食べたいのリクエストしてくれる?好きな食べ物と、人生最後に食べたいのって違ってくると思うの。」
「確かにそうだね。色々頭に浮かぶけど、最後の食事だと思うと中々決められない。お母さんはもう決まってるの?」
「お母さんも迷ってるよ。簡単には決められないわよね。」
「まだ夕食まで時間あるし、皆少し考えようか。お父さんもすぐには決められないよ。そうだ、家に酒ってまだあるよな?」
「ありますよ。今日は私も久しぶりに飲もうかしら。」
(あと数時間しか生きられないなんて嘘みたいだけど、本当なんだもんね。夢だったらいいのに…。)
ガチャーン!
突然外から何か割れる音が聞こえた。
カーテンを開けて外を見ると、向かいの吉田さんの奥さんが叫びながら何かを投げつけている。
(ん?何だろう、皿かな?)
何度も何度も、地面に置いた皿を掴んでは投げてを繰り返す。その顔はまるで楽しんでいるように見えた。普段は穏やかな吉田さんに何かが乗り移ったようだった。
その少し後ろの方で、吉田さんの夫が呆然と立ち尽くしていた。止めもせずただ立っているだけ。
2人に何があったのかは分からないが、あの声明を聞いたのがきっかけだろうとすぐに察した。
(夢じゃないんだ。これは現実なんだ。)
梨花はキューっと痛む胸を押さえ、何とか平常心を保とうとした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます