第176話 天征記②
結婚式が終わると、コンクラーヴェの結果は遅くなりそうとの連絡を受け、
ダリア地方の方々も、それぞれ帰国し、ロマリアの街は、再び静かになった。
そして、このタイミングでフラメンゴ会主流派の
「遅くなり誠に申し訳ありません、グルンハルト陛下」
「いやっ、良く来てくれたよ、マケーレさん」
「そう。おっしゃって頂くと、少し心がはれます」
「そう。何かあったの?」
「はい」
そう言って、マケーレさんは話し始めたのだった。
もう、ヨハンさん嫌いだからヨハン22世って書くね。
ヨハン22世は、フラメンゴ
すると、ヨハン22世は、
さらに、
「服従する事が、最も良き事である」
と言って、フラメンゴ会総長の
さらに、ヨハン22世に
ロマリア教主庁が公認した
この後、1328年までの10年間、
異端狩りの対象となったのは、信念を曲げなかった人々と、多くの
「そう。大変だったね。ご苦労さま」
「いえっ、陛下のご
「そんな事はないけど、彼も残念だったね〜」
ヨハン22世の説得の為に、僕を訪ねて、わざわざゼニアまで来られた方がいた。彼は清貧派の中でも、強硬派のようだった。自分の信じる思想に
「いえっ、彼は、説得に応じてくれまして、私と共にロマリアに来ておりますが……」
「えっ?」
「生きてんの? マケーレさんと一緒に、それって、主流派に
「まあ、主流派というか、清貧派としての主張は捨てたようですよ」
「へ〜」
どうやら違ったようだった。
だが、これで人数不足で活動が
これは、後に数度起きる、
「陛下のおかげで、仕事がはかどりますよ」
「ダロウナさん、僕のおかげじゃなくて、マケーレさんのおかげだよ」
「いえいえ、陛下のお言葉があればこそ、フラメンゴ会が動き、マケーレ殿が来られたのです」
「まあ、そう言われればそうか」
ロマリアに来て、すぐに次代の神聖教教主を決めるコンクラーヴェが始まり、そして、マリーの結婚式やらなんやらで、半年が経過。
そして、さらに、半年が経過した時に、マケーレさんが、フラメンゴ会の修道士を引き連れて、ロマリアに来てくれて、ロマリア教主庁の活動が活発化し、さらに半年が経過した。
実にロマリアに来て、一年半が経っていた、コンクラーヴェって時間かかるよね~。なんでだろ~。
「コンクラーヴェって、なんでこんなに時間かかるんだろ?」
「それは、適当な人材がいないからだと思いますが……」
「えっ、だって、クレメントさんに、次代の神聖教教主を選定してくれって、言われて送り込まれた人達でしょ?」
「はい、ですから選定する気はあると思いますよ」
「じゃあ、なぜ?」
「それは……。
「火中の栗を拾う?」
「はい、ラヴィオルの教主庁と、ロマリアの教主庁との分裂。対抗馬である、ラヴィオルの教主様は、
「そうか~、そうだよね~」
確かに、お互い押し付け合いになっているのかもしれない。
「まあ、カリスマ性があり、
「ふ〜ん、マケーレさんみたいな人?」
「はい?」
「いやっ、フラメンゴ会の総長のマケーレさんみたいな人かねって言ったの。だって、清貧派の人々を守る為に説得に動いて、大勢の人が
「確かに、そうですな……」
そう言うと、ダロウナさんは立ち上がり。
「陛下、少し失礼致します」
「うん」
ダロウナさんは、そう言って部屋から出ていく。
その後、ダロウナさんは、コンクラーヴェの会場に行って、何やらやっていたようだが、今度は、マケーレさんを連れて、コンクラーヴェの場所に入っていった。
コンクラーヴェの会場から、参加した枢機卿は出られないが、
そして、選出法だが、枢機卿たちが一斉に新教主の名前をあげて
一致をみなく、選挙が
そして、それから数日後。
「新教主様、決定致しました!」
大きな声で、ロマリア教主庁を走りまわる、人々がいた。コンクラーヴェの世話人をやられていた、修道士の方々だろう。
そして、しばらくして、ダロウナさんがやってくる。
「グルンハルト陛下、新たなる教主様が決定致しました」
なんとなく分かっていたが、一応聞く。
「そう。で、誰?」
「はい、フラメンゴ修道会総長のマケーレ殿です」
ほら、やっぱりね〜。
「そう。で、教主様の教主名は何にするの?」
教主名は、本名とは別に神聖教教主としての名前だった。例えば、クレメントさんとか。そういう名前だった。
「はい、それなのですが、クレメント5世聖下の意志を継ぐ者なので、クレメント6世はいかがかと思いますが」
「なるほど。そうだね、良いかもしれないね〜」
「ありがとうございます。では、さっそく」
「ん?」
こうして、ダロウナさんは、部屋から去っていったのだが、クレメント6世という名を決めたのは僕という事になっていた。
えっ、決まってなかったの?
そして、新教主となったクレメント6世さん事、マケーレさんと会う。
「マケーレさん。じゃなくて、クレメント6世さん、神聖教教主への就任おめでとう」
「陛下、ありがとうございます」
「しかし、良く教主を引き受けたね~」
「はい、しかし、陛下のご
「そう」
ん? 陛下のご推挙? う〜ん、ダロウナさん、色々とやってるな~。
「大変だと思うけど、僕としても最大限の助力はするから頑張ってね」
「はい、かしこまりました。陛下から頂いたクレメントの名を汚さぬように勤めさせていただきます」
「うん」
陛下から頂いたクレメントの名……。もう、好きにして下さいよ~。う〜ん、これじゃフェラードさんみたいになっているけど、仕方ないか……。
まあ、だけど、やることはやるか……。まあ、まずはマケーレさんの身の安全の確保だった。海上には、ゼニア共和国艦隊、陸上では、ヴィロナ公国軍、サパ・リューカ連合共和国軍、ジローラ公国軍などが交代で警備する体制をとる。
さらに、マケーレさんの護衛騎士として、民主同盟のタイラーさんの
青、赤、オレンジ、黄色の
そして、クレメント6世の即位式の為に、ダリア地方の諸侯や、各地の王がロマリアへと、再び集結する。
チェリア王ホフォリゴ2世さん、エスパルダのラアコン王ロメイ2世さん、ヴィロナ公アペリーロ・ヴェルディさん、ゼニア共和国元首アリオーニ・スコピーニさん、サパ・リューカ連合共和国元首ウルチョーネ・デッラ・チョロチョーネさん、副元首オストルッチャ・オロスコーニさん、ビオランティナ共和国元首ジョアン・ドナテシさん、さらにジローラ公国のノヴェスキの方々。
そして、アリオーニさん、アペリーロさん、オストルッチャさんが、おしかけてきた。この3人仲が良いのかな?
「陛下、おめでとうございます」
「ようやく決まりましたな~」
「とりあえずね」
「ですが、セロラ・ダロウナ。陛下の
「まあ、確かにそんな気もするけど、
すると、アペリーロさんと、オストルッチャさんが、ひざまずき。
「かしこまりました。やり過ぎたら始末いたします」
「えっ、そこまでは、言ってないけど……」
アリオーニさんも、肩をすくめる。
まあ、だけどこれで、後は、即位式だけだ。
で、神聖教教主の即位式は色々な形式で行われていた。ある時は、神の祝福を受けて、感謝して、教主冠を与えられ、自ら頭上に置くというのが一般的らしい。
だが、今回は、東方三博士が、聖者に始めて会った場面をモチーフとして、クレメント6世さんに、教主冠を授けるのだそうだ。
で、その役だが、
「ダルーマ王ハールイ1世陛下、チェリア王ホフォリゴ2世、ラアコン王ロメイ2世に東方三博士役を、グルンハルト陛下には、神の役をお願い致します」
えっ、神の役って、何?
というわけで、三王の方々が豪華な教主冠を運び、僕に渡す。そして、僕は、クレメント6世さんの、頭の上に、教主冠を置いたのだった。やっぱりおかしいよね~。
で、この教主冠だが、クレメント5世さんが即位する時に、教主冠はロマリアより持ち去られてしまった。というわけで、この教主冠は、クレメント5世さんが、新しく作ったものだった。しかも、かなりお金をかけて。
教主冠は、クレメントさん曰く、教主の地位を象徴する冠であるから立派な物をと、作ったそうだ。
そして、金と宝石できらびやかに飾られた三重の冠の形状をしていた。冠自体の材質は金でめっきされた銀。この三重の冠の意味は、「天国、
こうして、1319年。ロマリアの地に、ラヴィオルの教主ヨハン22世に対抗する形で、クレメント6世が誕生したのだった。
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