第167話 閑話 カールの死
「空は、こんなに青かったのか、それに空気も良い。風も気持ち良い。そうだ、ヒールドルクス公国も、こんなだったか?」
そう、虜囚されているはずだった、しかし、グーテルの命令か、かなり警備が緩い。一応、警備はつくものの、周辺を歩く事も可能だったし、馬で、近くの町や村まで出かける事も可能だった。
これだったら、逃亡も出来そうだった。最初は、ヴィナールから救いの手が来るかもと期待したが、来る気配は無く、
さらに、最初は解放交渉が気になって、警備の騎士や兵士に聞いたが、気の毒そうに、私達には、分かりません。と言われるのみだった。
塔の頂上からの眺めは、綺麗だった。遠くまで続く緑の森に、緑の山々、青色に輝く湖。
「しかし、最後まで、勝てなかったな」
カールは、昔を思い出していた。
ヴィナールでの生活は楽しかった。我らに逆らう者は無く、何をしても許された。
別に、女が好きなわけではなく、恐怖に
しかし、それを邪魔する者が現れた、弟のトンダルと
そして、ある時、
それは、
圧倒的知識の
そうか、トンダルとグーテルも、自分の事を馬鹿にしていたのだと分かった。そして、お前らを越えてやる。そう、誓った。
しかし、自分が好き勝手やるにはまわりの馬鹿者が邪魔だった。それは、自分の兄にそして、父親だった。
そして、グーテルに呼び出され、ダリアでグーテルの為に、交渉をすることになった。自分の
ランド王国国王フェラード4世や、ダルーマ王国国王ハールイ1世に書状を書き、グーテルとの対抗心を
そして、戦いになる。結果は、逃げられたものの、グーテルを後一歩まで追い詰められたのだった。勝った。正直、そう思っていた。
そして、もう一度、同じ機会がおとずれ、また、グーテルを
終わりだ。
と思ったのだが、生かされ
そして、3年の月日が経過した。ヴィナール公国と、ボルタリア王国の交渉は
今は、ヴィナールにおいて普通の生活をしている、数少ない暗殺教団の生き残りが、知らせてくれたのだった。
「正直、カール様に、ヴィナールに戻られると迷惑なんですよ」
ヒューネンベルクと、ネイデンハートの意見だそうだ。
そうか、迷惑か。ならば、ヒールドルクスにでも引きこもろう。そう考えるようになった。
そして、その思いが通じたのか、交渉に進展がみられた。そろそろ、解放されるかもしれない。という事だった。
カールは、嬉しいとは思わなかった。何故か、ここに居たほうが楽なのでは? そう思えた。
別に、ヴィナール公国の交渉が難航した事や、ランド王国国王フェラード4世が死んだ事や、ランド王国の
「お前達は良いな~。親にエサを運んでもらえて。ああ、私も一緒か~」
屋根の上には、鳥の巣があり、
すると、一匹の雛が勢いあまって、巣から飛び出て、落ちそうになった。カールは、慌てて手を伸ばすが届かない。
カールは、部屋の中を見回す。木の台が目に入った。それにのぼって手を伸ばせば届く。そう考えた。
しかし、良く考えれば、外にいる警備の騎士や兵士に、頼めば良いだけだったのだが。
カールは、木の台にのぼり手を伸ばす。もう少し……、よしっ。
そう思った瞬間だった。木の台が
みるみる屋根が遠ざかり、カールの全身に凄まじい衝撃が走る。
ドサッ!
土の地面だったが、高さ20mからの落下は、カールの命を奪うのに充分だった。
カールは強い痛みを一瞬感じた気がしたが、
そして、ぼやけていく視界に、落ちそうだった雛が、
「なんだ、飛べるのではないか……」
カールは、ゆっくりと目を閉じた。
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