第165話 ランド王国の思惑と醜聞③
フェラードさんの
もちろん、フェラードさんが、会話せずに
ロイ君の奥さんのマリーローズさんは、シャロロ君の奥さんのブロンセさんと隣同士に座り、2人で
そして、シャロロ君は、ジークが、話題を振っても。
「そうですか……」
「はあ」
という感じで、
セーラと、フェラードジュニア君が、
僕も、エリスちゃんと会話しつつ、ロイ君や、シャロロ君の夫婦を見る。
ロイ君は、スポーツマンで、スレンダー体型で、さすが
イタタタタ!
エリスちゃんも、曲線美はお持ちだよ。無いのは妖艶さ。
で、ブロンセさんは、そんな、マリーローズさんに
失礼ながら、ちょっと
そして、一方、シャロロ君は、フェラードさん似なのだろう。確かに美しい外見だが、ちょっと冷たい印象を持つ。そして、地味だ。
なんとなく夫婦関係が想像出来てしまう。ロイ君は、ジュ・ド・ポームに夢中で、マリーローズさんは相手にされず不満を持つ。シャロロ君は、
う〜ん、夫婦って大変だね。ヤレヤレ。
そんな食事会があったものの、セーラと、フェラードジュニア君の結婚式は無事に行われた。1313年の6月の事だった。
場所は、聖王教会だった。フェラードさんのお祖父さんである、聖王と呼ばれたロイ9世が1248年に建てたゴシック様式の教会で、ルテティアの中心部のシティ島にあった。
聖王教会には、聖王ロイさんが集めた、
そんな教会で、結婚式は行われた。
セーラと、フェラードジュニア君は、ヴィヨンヌ宮殿から、聖王教会までパレードする。途中には、美しい建物が立ち並ぶルテティアの街並みが見え、大勢のルテティアの民が大きな歓声をあげていた。
どうやら、あの場所は通らないようだった。
そして、ルテティア大司教の手によって、結婚式は
「セーラ、身体に気をつけてね。幸せな結婚生活をね。フェラードさんも、娘をよろしくお願いいたしますね」
「は〜い、お手紙書きますね~。お父様、お母様も御身体にお気をつけて〜」
「お任せください、お
というわけで、僕達はルテティアを離れ、ヴァルダに帰るのだった。
「セーラは、大丈夫でしょうか?」
「大丈夫だよ。フェラード君しっかりしてるし、優しそうだし」
「そうですね。うん、そうですね」
エリスちゃんは、自分に言い聞かせるように、そう繰り返す。遠く離れた異国の地で暮らし始める娘が心配なのだろう。だけど、ほわ〜んとしたセーラだが、僕は、大丈夫な気がしていた。
それよりもだ。僕の
僕は、
まあ、ご苦労さまです。フェラードさんの力で、教主になったのだ、仕方のない事だろうね〜。
助け出して欲しい的な事も書かれていたが、せっかく、セーラも結婚し、ランド王国との関係が
僕は、もう一つの書状をそっと触る。まあ、僕の力の及ぶ範囲で、出来る事をしよう。多分、近々起こると思うし。
そして、ランド王国と、マインハウス神聖国の国境を越えた辺りで事件は起こる。
馬車の
「グルンハルト1世陛下に、
「ええい、下がれ! 斬るぞ!」
「そこを何とか!」
「ええい、くどい!」
そして、
僕は、エリスちゃんを押し
「フ〜、フ〜」
僕の馬車の前には、今にも飛びかかりそうな勢いで、フルーラが抜剣して立っていた。
そして、アンディ、アンジェちゃん、グリフォス君は、ランド王国の護衛の騎士と、もう一組の騎士団の間で
「フルーラ、おすわり!」
「アウッ。えっ!」
あっ、間違えた。
フルーラは、一瞬、そのまましゃがみ込み、慌ててひざますき、こちらを向く。
「えっと、フルーラ大丈夫だから、下がって」
「はっ」
フルーラは、僕の歩く道を空けて、僕が歩きだすと、抜剣したまま僕の後に続く。
「陛下、お下がりください。危のうございます」
ランド王国の護衛騎士の隊長さんが、そう声をかけてくる。
「ありがとう。だけど、そちらの方々は、僕に用事がありそうだったからね」
そう言って、僕は、もう一方の騎士団の方を向く。その騎士達は、全身にチェインメイルをまとい、その上から白の長衣をまとっていた。白の長衣には、赤い十字が描かれている。聖堂騎士団の騎士だろう。
「ですが、その者達は、聖堂騎士団。神に
ランド王国の護衛騎士隊長さんは、あくまで、僕と話しさせたくないみたいだった。
「護衛してもらっているのは、感謝しているけど。ここは、マインハウス神聖国の領土だよ。いちいち、ランド王国に許可をとらないといけないの?」
「い、いえっ、そのような事は……」
「じゃあ、黙ってて」
「はっ、かしこまりました」
そう言って、引き下がる。
僕が、聖堂騎士団の方を振り返ると、皆は
「それで、僕になんの用?」
すると、代表者らしい方3名が顔を上げる。
「マインハウス神聖国皇帝グルンハルト1世陛下に、お頼みしたい事がありまして、
「そう。アンディ、今日の宿泊場所、近かったよね」
「そうっすね」
「そう。じゃあ、そこで話そう。ついて来て」
「はっ、かしこまりました」
そして、近くの街の貸し切ってある宿屋の食堂で、話を聞くことになった。立ち会うのは、僕と、アンディ、グリフォス君と、向こうの3名の騎士だった。
ランド王国の護衛騎士は、隊長さんに、「少し休んできて」と言って、お金を渡すと、「そうですか〜」と言って、
「それで、用件は?」
「はい、我らは、聖堂騎士団の各地のマスターだったのですが、グランドマスターが逮捕され、ランド王国により
「うん」
「ほうほうの
「そう、大変だったね」
「はい、ありがとうございます。そこで、マインハウス神聖国皇帝グルンハルト1世陛下が、この地を通ると聞き、
「そうなんだ~。で、その願いって、何?」
「はい、逮捕されている、グランドマスターや、幹部を解放していただくよう、ランド王国国王フェラード4世陛下に、言って頂けませんでしょうか?」
「それは、難しいね〜」
「そう、ですか……」
この返事は、向こうも予想している事だろう。誰が、自分に利益がないのに、無関係の人間を助けようというのだろうか? まして、相手は、フェラードさんだ。
それに、交渉とは、相手にとって高いハードルを提示し、徐々にハードルを下げて、これだったら受け入れて良いかな~と、相手に思わせる。というのが交渉術なのだ。
「それでは、神聖教教主様に、我らが
う〜ん、これは可能というか、良いんだけど、向こうは、断られる前提で話しているよね? どうするか?
「う〜ん?」
「やはり、それも難しいでしょうか? では、マインハウス神聖国において、我々を
随分、ハードル下げてきたな~。ランド王国の
「それは、良いんだけど〜」
「ありがとうございます! で、では! あ、あの〜、ダリア北部とか、ニーザーランドでも……、駄目でしょうか?」
僕の影響力の
「うん、それも良いんだけど……」
「ありがとうございます、ありがとうございます」
よしっ、ようやく考えがまとまった。
「まずは、僕の影響力及ぶ範囲内において、聖堂騎士団は、異端では無いと認めるね」
「えっ、ありがとうございます」
これは、マインハウス神聖国皇帝の下に、聖界諸侯がいるという、マインハウス神聖国だから可能な事だった。
だいいち、マインハウス神聖国国内の聖堂騎士団の規模は小さいしね。最も、ランド王国国内に持つ、聖堂騎士団の資産が異常なのだ。
「え〜と、ですが、よろしいのでしょうか?」
「何が?」
「その教主様の
「それは大丈夫。お
そう言って僕は、懐から書状を取り出す。それを見て、3人は、慌てて頭を下げる。
神聖教教主クレメント5世の
僕は、それを読む。
「聖堂騎士団は、
「え〜と?」
3人揃って首を
「まあ、要するに、異端審問で聖堂騎士団は、異端って事にしたけど、聖堂騎士団の名を捨てれば、その限りじゃない。異端じゃないって、クレメントさんも認めるって事だよ」
「なっ、なんという……」
そう言って、3人は泣き始めた。これも、髭面のおっさん3人が……。やめておこう。
僕は、3人に使徒的書簡を渡すと、
「他の方にも、知らせてあげたら」
「はっ、はい、ありがとうございました!」
そう言って、頭を何度も下げつつ去って行った。そして、そのまま騎士団を率いて、街からも出て、どこかへと消えた。
その後の聖堂騎士団の動きは、詳しくは知らないが、ポルトゥスカレ王国において、神聖騎士団と名を変えて活動したり、他の修道騎士団に合流したり、細々と小さな修道騎士団になったり、本当に市井の生活に戻ったり、色々だったようだ。ランド王国以外でだけどね。
ヴァルダにおいては、パウロさんのところに、
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