第162話 ミューゼン公国の争いと新世代の息吹⑨
こうして、チュールドルンの戦いは終わった。僕の
ヴィナール公国軍は、およそ4500名もの死者を出した。全軍の1/4近くを失った事になる。
そして、僕達もおよそ1100名もの死者を出す事になった。もちろん一番多いのは、ボルタリア王国軍だった。
これは、近年の戦いにおいて、
こんな戦いにするつもり無かったんだけどね~。完全包囲した時点で、
僕は、ほぼ始めてジークを
「ジーク、戦争に正義の戦争とか、善とか悪とかもないが、それでも何かを守るために、戦わないといけない時がある。だけどね、戦って失われるのは、人の命なんだ。その重みをしっかりと
あ〜あ。ジークに言いながら、自分は、本当に出来ているんだろうか? と
まあ、ちょっとピリピリした僕の雰囲気に怖さを感じたのか、ジークをはじめ、皆が
ああ、そうだった。タイラーさんは、先に帰られてしまった。早く休みたいそうだ。年齢も年齢だからね。まあ、タイラーさんは、この後10年以上長生きされ、
カール
ヴィナール公国軍は、解放されてネイデンハートさんが率いて、ヴィナールへと帰って行ったのだった。これで戦いは終わった。で、後は、
ミューゼン公の屋敷に入り、大きな広間にて会議を行う。戦後処理というやつだった。
一番の
「まずは、え〜と、誰だっけ? ローエンテールさんの奥さんで……」
「アニェニュシェク様ですか?」
えっ、何て言った? ロートレヒさんの言葉が、よくわからない。
「ん? アネヌセクさん?」
「いえっ、アニェニュシェク様です」
え〜と、分からん。
「そう。じゃあその方は、ミューゼン公国を混乱させ、争いを
「はい」
みんなの同意を得て、これで一つ終わり。そして、もう一つの重用なのは。
「次のミューゼン公だけど、血縁関係もあるし、ロートレヒさんで良いかな?」
かつて会った事のある、ミューゼン公ラウレルリッヒ2世さんのお父さんと、フォルト宮中伯家のルードヴィヒさんのお父さんが兄弟だったそうだ。要するに、本家と分家の関係、ミューゼン公家から、フォルト宮中伯家に養子に入ったのだそうだ。
「えっ、私ですか?」
「そうだよ」
「ですが……」
ロートレヒさんは、困惑するが、
「良いと思います」
「確かに、この2年のミューゼン公国の
「確かに」
「ミューゼン公国は、この2年で良くなりましたしな~」
だそうだ。
「だって、どう、ロートレヒさん?」
「かしこまりました。では、微力ながらやらせて頂きます」
「うん、よろしくね」
後は、大した議題はない。と思ったのだが。
「ところで、ヴィナール公は、どうされるおつもりですか?」
フロードルヒさんが、思い出したかのように聞いてきた。
「カール従兄さん? それは、捕虜として……」
「ではなく、ヴィナール公カールケントは、陛下と戦い破れたのです。ヴィナール公では、いられないでしょう」
そうなるかな~? 見ると、ロートレヒさんや、アペリーロさんも
「そうだね、少なくとも解放するまでは、ヴィナール公として、誰かにやってもらわないとね」
え〜と、カール従兄さんの子供は、女の子が二人だったかな? 弟は、トンダルと、後は〜。
「トンダルと、え〜と、オルセン君だっけ?」
「はい。トンダルキント卿は、フランベルク辺境伯です。ですから、陛下によって、かなりの小国となったヒールドルクス公オルセン卿に、ミューゼン公になっていただくのが筋なのでしょうが……」
陛下によってかなり小国になったって失礼だな~。民主同盟の都市を帝国自由都市にしただけじゃないか〜。
「そうだね。じゃあ、それで」
「はい」
後は、カール従兄さんの解放後にヴィナール公国で決めてもらえば良いのだ。
そして、このオルセン君、後々の歴史家につけられたあだ名が
そして、その意味は、パーティーピーポーだったから。まあ、要するにヴィナールのヒールドルクス宮殿を
で、最後に。
「カール従兄さんは、このまま、ここミューゼンで
「陛下、それはさすがに……」
フロードルヒさんの言葉に、ロートレヒさんも同意する。
「他の方は良いとして、ダリア王カールケント様をミューゼン公国のみで対処するのは、ちょっと、荷が重いかと……」
「そうか~、荷が重いか〜」
さて、どうしようかな?
すると、ミューゼン公国の領内諸侯の一人が手を挙げる。
「あの〜、我が領土は、ボルタリア王国とヴィナール公国の国境近くにありまして。まあ。山の中なのですが」
「うん」
「その国境沿いの山の中に、今は使われていない立派な防御用の城がありまして……」
「そうか~、ボルタリア王国とミューゼン公国から、人を出して警備すれば良いかな?」
「はい」
「で、なんてお城?」
「はい、プラウニッツ城です」
「じゃあ、さっそく手配しよう」
伝令が出て、ミューゼンとボルタリアの両方から、人を手配し、城の準備を急ぐ。
その後、さらにちょっと会議をして、広間はパーティー会場となり、戦勝祝いが始まった。
ミューゼンの街中でないので、冷たいビールではなく、ワインだった。
すると、僕の周囲に、人が集まる。
「わざわざ、遠くからありがとうね」
「いえっ、あまりお役にたてず申し訳ありません」
「そんな事はないよ。大軍で周囲を取り囲むのが目的だったんだ。戦いはどちらかというと、
「はあ、そうですか」
ヴィロナ公国ヴェルディー家の三男アペリーロさんに
まあ、良くあの状況から、持ち直したよね。将としては、ネイデンハートさんに
「ジーク殿ですか? まだまだ若いですが、
「そう、アペリーロさんが言うなら、その素質はあるのかな? まあ、最初の突撃は頂けないけどね」
「分かりますよ。私も、興奮状態で突撃しそうになりましたから」
そう言いながら、ミューゼン公となったロートレヒさんが歩いてきた。
「ロートレヒさんが?」
「はい、戦争の経験があまりないので、もう
「そうか~、そうだね」
と話していると、ジークを連れてフロードルヒさんがやってくる。
「皆さん、若者をあまりいじめますな」
「いじめておりませんが」
やや
「そうでしたか、これは失礼。ですが、ジーク殿は、ほぼ
「そうだね」
その後は、くだらない話もしつつ、戦勝の祝いは、明け方近くまで続いた。
そして、数日が経過し、アペリーロさんや、フロードルヒさん達が帰国する。そして、僕も。プラウニッツ城の準備が出来て、カール従兄さんを連れて、プラウニッツ城に旅立つ。
結局、プラウニッツ城で、軟禁されるのはカール従兄さんのみになった。他のヴィナールの貴族の方々は、ミューゼンで軟禁され、ヒューネンベルクさんと、ヤルスロフさんの賠償金交渉が
だけど、カール従兄さんは、別だった。ヤルスロフさんの書状によると、ヒューネンベルクさんは、別に交渉したいとの事で、交渉に入ってもいないそうだった。
金額かな? それとも……?
僕達は、ボルタリアに向かう北東に進む街道を進み、そして、国境手前で北へと進路を変えた。すると、道はなだらかに傾斜し、前方に緑の木に
「
「グーテル様、それはひどいっすよ」
「そう?」
僕の
そして、さらに山の中に入っていく。すると、
僕はカール従兄さんと共に、階段を昇り、城の最上階に入る。
「では、カール従兄さん、しばらく、ここで、よろしくお願いいたします」
「ふん。このような所でも、ヴィナールの軍勢がやってくれば、簡単に落城出来るぞ」
「まあ、そうでしょうね~」
「そうでなくとも、こっそりと
「そうかも、しれませんね~。正直、それでも良いと思っているんですよ。カール従兄さんには、出来るだけ不自由なく暮らしてもらうつもりですから。何か、不都合があったら言って下さいね」
それには、答えずカール従兄さんは、こう言った。
「だから甘いというのだ、お前は」
その後、僕達はヴァルダへと、帰る。だが、
その年の
「ランド王国とマインハウス神聖国のより強い結びつきを目指し……。結婚!?」
それは、フェラードさんの子供と、セーラの結婚についての書状だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます