第154話 ミューゼン公国の争いと新世代の息吹①
こうして3年の長きに渡り、ダリア地方、ランド王国を旅して帰ってきて、さあ、少しゆっくり休んで、ゆっくり、カツェシュテルンで呑んで、なんて思っていたのだが……。
まあ、ダリア地方や、ランド王国の旅の間、のんびりしていただろ? と言われたらそれまでなのであるが。
「そうか~、そうなんだ〜、ローエンテールさん亡くなられたんだね」
「はい」
ボルタリア王国の外交を、
亡くなられたのは、1307年の9月9日。カール
で、これで、めでたしめでたし、とはならず。
ミューゼン公が小さな子であるので、宰相として、誰かが実際の政治を代行するのだが、そこに名乗り出たのが、ミューゼン公ローエンテールさんの弟であった、ステファンさん。
ステファンさんは、三男で
だが、ステファンさんの宰相就任をローエンテールさんの奥さんは拒否。ステファンさんが、ミューゼン公の後継候補でもある事に不安を
そして、ローエンテールさんの奥さんは、
これで、めでたしめでたしになるわけはなく。
ステファンさんだけでなく、ミューゼン公国の
そして、僕の帰国を知った、ステファンさんは、僕に助力を求めてきたようだ。
「正直、どちらがなっても良いんだけどね。ローエンテールの望み通り、ローエンテールさんの息子さんが、ミューゼン公になったんだからさ」
「確かに、その通りですな」
報告に来てくれたヤルスロフさんに、僕はぼやくように言う。
「そうだ! そう言えば、ロートレヒさんって、パウロさんの弟だよね」
「そう言えば、そうでしたな」
「ヤルスロフさん、申し訳ないけど、パウロさんを呼んできて」
「かしこまりました」
こうして、パウロさんも来て。僕の
「え〜と、ロートレヒさんって、どんな人?」
「弟ですか……。ああ、そうですね〜、
「へ〜」
頭は、とても良いそうだ。フォルト
「聖職者の世界の
だったらと、代わりにパウロさんが、聖職者になったそうだ。
そして、フォルト宮中伯家で、ランドルフさんのサポートをする事になるが、ランドルフさんの行いに対して、
「遠ざけられていたみたいですね」
「そうなんだ」
「はい」
まあそれでも真面目なロートレヒさんは、学問など、
そして、ローエンテールさんの奥さんから助力を頼まれたカール従兄さんは、フォルト宮中伯家と、ミューゼン公国の
「悪いやつじゃないんですが、頭硬いし、
「へ〜」
ロートレヒさんは、ミューゼン公国の宰相を引き受けた以上、誰かに
そして、ミューゼン公国の領内諸侯に反発を受ける。領内諸侯の半分以上が、ステファンさんに付き、兵をあげて戦争寸前だそうだ。
カール従兄さんは、またしても、ローエンテールさんの奥さんの要請で、ヴィナール公国軍を派遣。6000ほどの軍勢を派遣したそうだ。カール従兄さんや、ネイデンハートさん、ヒューネンベルクさんは、ミューゼン入りしていないようだったけど。
だが、これで、ロートレヒさん側の兵力が上回って、ステファンさんは
「まあ、一応、あくまでも治安維持の為に、兵を送るか~」
「しかし、あまり大兵力ですと、あちらを刺激する事に、なりますし……」
パウロさんの意見は、もっともだ。
「まあ、ヴィナール軍と同じ数を送っておくかな?」
「なるほど。で、誰を送られるつもりですか?」
う〜ん、それなんだよね~。当然、ガルプハルトが適任だけど、皇帝直属軍の指揮官。という事は、マインハウス神聖国が
まあ、ボルタリア王国の騎士団長を
「フェルマンさんに、行って
「そうですか……」
「フェルマン
パウロさんも、ヤルスロフさんも歯切れが悪い。
選択肢としては、フェルマンさんか、ライオネンさんなんだけど。フェルマンさんは、頭も良いし、
「何か、
「いえっ、その、大丈夫だとは思うのですが……」
「我々の予想以上の事をしそうで、怖いというか……」
「まあ、それはあるね~」
僕は、ボルタリア王国騎士団長である、フェルマンさんに、6000の兵を率いてもらいミューゼン公国へと送った。
ボルタリア
「
僕の前で土下座するばかりに、
「え〜、良いよ。フェルマンさんのせいじゃないんだし」
そう、フェルマンさんが悪いわけじゃない。
濃い
そこに突然の
そして、敵の逃げた先にいたのが、結構な大部隊だったそうだ。待ち
すると、待ち伏せしていたはずの敵軍は慌てふためき、大混乱をきたす。どうやら、敵の方が、完全なる
その大部隊に、フェルマンさん率いるボルタリア王国軍が、霧の中からあらわれて完全なる不意打ちをくらわせる形になったようで、戦いは一方的な展開となり、敵軍は、
だが、戦いの後、すぐに霧が晴れていき、そこに見えた光景に、フェルマンさんは、真っ青になる。ヴィナール公国の旗が多数転がっていたのだ。
フェルマンさんは、ロートレヒさんを支持する、ミューゼン公国の諸侯軍だと思っていたそうだ。現に何度か
だけど、ヴィナール公国軍は、決して動かず、むしろ
ヴィナール公国軍からの、
「まあ、でも、一応、
「はい、かしこまりました。誠に、申し訳ありません」
フェルマンさんが、ガックリと肩を落として部屋から出て行った。
さて、どうしようかな?
とりあえず、ヤルスロフさんには、ヴィナール公国に
僕は、執務室で考えると、カール従兄さんに書状を書く。
「え〜と、この度は、誠に申し訳ありません。っと」
謝罪文だけど、これであっさりとカール従兄さんが、許してくれるかどうか。
それに、ちょっと引っかかっているんだよね~。あれでも、フェルマンさんは
「少数の部隊に射掛けられ、襲われたか〜」
これは本当だろう。だけど襲ったのは、ヴィナール公国軍ではない。というか、少なくとも、
「他にいたのか……、それとも、カール従兄さんが……」
まあ、とりあえず、
僕は、書状に
「責任をとって、ボルタリア王位から退位します。っと」
まあ、大した事はないけど、とりあえず責任はとったよ、という形にしたかった。
そういう意味でも、僕がマインハウス神聖国の皇帝位にあって、ボルタリア王でなくても良いわけだ。
だったら、責任をとってボルタリア王を退位というのは、自然な形に見えるように思えた。まあ、マインハウス神聖国皇帝は、退位しないしね。
さて、カール従兄さんは、どんな返事を寄こすかな?
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