第151話 ランド王国の旅①
西に向かい、国境沿いにあるモアナ
一応、マインハウス神聖国の
バロンズ伯領、バロンズ辺境伯領、トールズ伯領、ファレル伯領、ブサン伯領、レイエンヌ伯領、サファイア伯領、ブリュヌイ伯領等だ。
この内、サファイア伯領、ブリュヌイ伯領は、なんとか
ゼニア共和国を抜けると、その国の一つ、トールズ伯領に入り、すぐにバロンズ伯領に入る。
いくつもの小さな漁港は通り抜けてきたが、目の前には
「う〜み〜!」
「
なんか最近のアンディは、父親であるコーネルに似てきて
「夏の海の色は、良いよね。こういうのを
「そうですね」
僕は、海岸に立ち、海を見つめる。隣には、エリスちゃんが立ち、共に海を見つめる。う〜ん、海風が気持ちいい。
「なんか、ダリアとは、海の色が違う気がするよ」
「そうですね」
「いやっ、気のせいっすよ」
もう、アンディ、
僕は、後ろを振り返る。すると、じっと何かを見つめるフルーラが目に入る。その視線の先を見ると、海岸沿いに並んだレストランが見えた。海を見ながらの食事か〜、良いね~。
「フルーラ、お
「えっ、あっいえ、そのような事は……」
うん、あるんだな。
「食事にしようか」
「はい!」
フルーラの
ここは、人口1万人程のバロンズ伯領の港町マルセーズだった。
ちなみに、ここはバロンズ伯領の首都では無い。ここから30kmほど北に行った。エクソンバロンズという都市が首都だった。人口はそちらの方が、少ないようだったが。
この辺りもゼニア共和国と同じく、山が海に
僕達は、その海岸沿いにある一軒のレストランへと入る。そう、レストラン。ランド王国では、カフェ、ブラッスリー、ビストロ、レストランという感じになる。まあ、後は、オーベルジュとかもあるが。オーベルジュは、宿泊出来るレストランだ。
カフェは、文字通りコーヒー飲んだり軽食食べたり、さらに夜はお酒も出る所もある。まあ、昼間もあったりするが……。ブラッスリーは、ビール
そして、ビストロは、小さなレストラン、大衆食堂といったところかな? そして、レストランは、レストランだ。しっかり食べれるお店と言ったところだろうか?
どっかの国では、高級レストランをグランメゾンというそうだが、ランド王国にはそんな言葉は無い。
「マルセーズと言えば、バターサンドだよね。デザートで出るかな?」
この僕の言葉を聞いて、マスターが目をまんまるにする。
「はい? バターサンド? なんですか、それは?」
「えっ、違ったっけ?」
「はい、聞いた事ありませんが」
「そう。じゃあ、勘違いかな〜」
「そうだと思いますよ」
だそうだ。後で確認すると、これもどっかの国のお菓子の間違えだった。
まあ、それは置いといて。今回、
そして、フルーラと、アンディは、ちゃっかりと、僕と同じテーブルにつく。まあ、いつもの事だから、良いんだけど。
さて、何が出るかな?
「飲み物は、何になさいますか?」
さて、食前酒だ。シュプーニエのスパークリングワインは、あるかな?
「シュプーニエの、スパークリングワインは、あります?」
「はい、ございます」
「じゃあ、僕はそれを……、え〜と、皆は?」
「私も、同じで」
エリスちゃんや、マスターと奥さんが、そう応える。
「俺は、仕事中っすから……」
おっ、珍しくアンディが、
「グーテル様、この後は、この街に宿泊ですよね?」
フルーラが、そう聞いてきた。
「そうだよ」
「では、私も少しワインを頂きたいのですが……。あまり、飲めないので」
「じゃあ、白ワインは?」
「そうですね、では、それで」
「じゃあ、俺も」
「えっ、アンディは、仕事でしょ」
「えっ、いえっ、え〜と。グーテル様、申し訳ありません」
「じゃあ、仕方ないね〜」
皆で、飲み物を飲みつつ、料理を待つ。
そして、一品目の前菜が運ばれてきた。
「夏野菜のラタトゥイユと、白身魚のタルタルです」
料理を置きつつ、ギャルソンの方が飲み物を聞いてくる。まあ、エリスちゃんや、マスターの奥さん、そして、フルーラは、かなりゆっくり飲んでいるので、そのままのようだけど。
「お飲み物は、何にいたしましょう?」
「そうだね、料理に合わせると、どんなのが良いかな?」
「それでしたら、この地の白ワインはいかがでしょう。ロゼワインの一大生産地ですが、白ワインもなかなかのものですよ」
「じゃあ、それで」
マスターも、アンディも、同じく頼むようだ。
地中海沿岸のバロンズ。ランド王国のワイン産地では、最も古い歴史があるそうで2000年も前にブドウ畑が存在していたのだそうだ。生産量の約90%がロゼワインであり、ランド王国最大のロゼワインの産地でもあるのだそうだ。
夏は暑く乾燥する地中海性気候である上に、
僕は、夏野菜のラタトゥイユを口に入れる。上品な味ながら、野菜の旨味が凝縮されていた。一方、白身魚のタルタルは、新鮮な魚なのだろう、タルタルにしては、しっかりした歯ごたえに、海の香り、そして、噛んでいると白身魚の味わいが、さっぱりとしたソースの味と共に、口の中を埋め尽くす。
「美味しいね〜」
「そうですね」
返事がエリスちゃんからは返ってきたが、マスターは料理の味を確認しつつ、何やらぶつぶつ言っていて、奥さんはそれを見ている。フルーラは、料理に夢中で、アンディは、窓の外を見ていた。
窓の外は、
綺麗な景色を見つつ、
続いて、もう一品の前菜が出てきた。
「ムール貝のグラタンと、ロブスターのサラダ仕立てです」
ムール貝のグラタンも、ロブスターも、前菜なので量は多くないが、綺麗に盛り付けられて出てきた。フルーラの目が、キラキラしている。甘いもの以外も好きなようだった。
僕達は、もう一杯、白ワインを頼む。すると、エリスちゃんが、
「え〜と、私も白ワイン頂いても良いでしょうか?」
すると、ギャルソンさんは、
「かしこまりました、マダム。それでなのですが、同じようなペースで飲まれますか?」
「そうですね〜、それほど強くありませんので」
だそうだ。エリスちゃんも、歳のせいかね? イタタタタ!
「そうですか。それでしたら、ムール貝も、ロブスターも味が強く、さらに、この後は、ブイヤーベースとなります。ロゼワインもおすすめですが、いかがでしょうか?」
エリスちゃんは、少し考えると、
「では、ロゼワインを、お願いいたします」
「かしこまりました」
すると、フルーラや、マスターの奥さんも同調する。
そうか~、ロゼワインか〜、それも良かったな。まあ、しかし、白ワインを飲み切った後だ。
そして、ロゼワインが、3人の前に置かれた。色は、ピンクじゃないな~、やや黄色味がかって、オレンジ色というよりは、う〜ん。ちょっとゴールドっぽい、
バロンズのロゼワインは、
白ワインは、タンニンと呼ばれる
そして、ロゼワインを直接圧搾法で作ると、黒ぶどうの
そして、いよいよお待ちかねの、マルセーズ名物のブイヤーベースが出てくる。ギャルソンさんが、巨大な鍋ののった台を押して来る。
まずは、スープ・ドゥ・ポワソンと呼ばれる魚のスープだ。片端には、ルイユと呼ばれるソースと、カリカリのバケットがついていた。
ルイユは、ニンニクとトウガラシをすりつぶし、
スープ・ドゥ・ポワソンにカリカリのバケットを割り入れて、好みでルイユを入れるのだそうだ。
僕は、ロゼワインを頼み、スープに合わせるつもりだった。
良い香りが立ち昇る。海の香りと、トマトの香り、そして、スープを口に運ぶ。
ウオッ、これは。魚の淡白だが上品な旨味が、口の中に溶け出す。
ゆっくり飲んでいたつもりだが、あっという間に無くなる。すると、ギャルソンさんが、もう一杯、よそってくれる。
皆が、
「うん、これは、美味しいですね〜」
マスターの一言で、ようやく現実に戻される。
「うん、美味しい」
皆が、口々にスープ・ドゥ・ポワソンを
「ありがとうございます」
そして、僕も、スープを飲みつつ、ロゼワインを飲んでみる。が、ロゼワインがスープの味に負ける。美味しいんだけど、うん、これは、難しい。
そして、次は。料理長が出てきて、鍋に入っていた魚を取り出し、切り分けるとお皿に盛り付け、スープをかける。これが、ブイヤーベースのメインディッシュだ。
ブイヤーベース
ちなみに、出汁用の魚と盛り付けられた魚は別なので、味が出きったという事はない。
僕は、魚を切って口に運ぶ。なんの魚だろうか? 口の中に入ると、身がホロホロと崩れ、たんぱくだが、しっかりとした白身の味が広がる。ちょっと、磯の香りがする。そこに、濃厚なスープの味が合わさる。うん、美味しい。
さらに、ロゼワインを合わさると、見事なバランスだった。口の中に広がる、魚の味に、果実味と塩を感じるミネラル感が合わさり、複雑な味にする。その後、酸味で、
「ブイヤーベースと、ロゼワイン、合いますね~」
「ありがとうございます」
ギャルソンさんが、頭を下げる。
まわりを見ると、皆が幸せそうに食べている。う〜ん、美味しい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます