第146話 第一次ダリア遠征⑩
僕の歓迎式典だの、
僕は、とっとと先に進みたいが、喜んでいるサパ共和国の人々を放っておくわけにもいかず、お付き合いして、昼に夜に、飲み歌い、騒ぎを見ていた。いや〜、疲れた。
そして、ようやく
「いや〜、困った事になりました」
「だから言ったであろう、あんな馬鹿騒ぎなどせずに、さっさと、陛下と共に南下しようと」
サパ共和国の元首、ウルチョーネさんの言葉を
「しょうがないでは無いか、皆が陛下が来られて
「ふん、一番楽しんでいた男が何を言うか……」
「何だと!」
「まあまあ、お二方とも、陛下の
サパ共和国の2人がけんか腰になり、慌てて
「こ、これは、失礼致しました、陛下」
「申し訳ありません、陛下」
「うん」
そして、ようやく始まる話し合い、出席者は、僕と、ゼニア共和国元首のアルオーニさん、そして、サパ共和国元首のウルチョーネさんに、コンドッティエーロのオストルッチャさん。もちろん僕の背後には護衛として、フルーラとアンディが
そして、再びウルチョーネさんから、同じ言葉が発せられる。
「いや〜、困った事になりました」
「どうしたの?」
「はい、いわゆる教主派の国々に動きが見られます」
ウルチョーネさんではなく、アルオーニさんが、言葉をつなぐ。
「そう。僕の教主庁への移動を
「はい、おそらくは」
う〜ん、まあ、予想の範囲内だけど、ゼニア共和国や、ヴィロナ公国にいた時には、その
「しかし、新しい教主様も、何を考えておられるのやら」
「ん、教主様?」
「はい」
オストルッチャさん、
「自分達こそ、教主様の守護者だという
「そうなんだ」
クレメント5世聖下は、就任式の演説において、まず、自分が、ダリアにて就任式を行わない理由にダリアの混乱をあげた。それが、教主派と皇帝派の対立ではなく、教主派内部の争いだった。
黒派は、都市の
「両方とも、教主派を名乗ってますがね」
「うん」
そして、クレメント5世聖下は、その混乱を
これは、いけないね〜。まあ、その後に時間をかけてフェラードさんを賞賛したそうで、ランド王国は、問題なしだったようだが、問題はダリアだった。
教主派の領主達は、
自分達の存在を否定されたように感じ、落ち込み、さらに怒りに変わった。
その怒りの矛先が、僕の教主庁での
「陛下には申し訳ないのですが、しばらくサパに
そう言い残して、アルオーニさんは、護衛の
さて、とすれば、また
「サパの
僕は、会議を終え、城の
「えっ! あれを、昇るつもりっすか?」
アンディが、驚いた顔をしている。すると、フルーラが、手のひらを少し離して、斜めにしながら。
「昇っているうちに、こう、倒れそうですよね」
最後に、フルーラの手のひらに
「隊長〜、怖いこと言うのやめてくださいっすよ~」
「いや、私は、そのまま真実を……」
「だから、怖いんすよ~」
アンディが
そうか、危ないか~。やめておこう。
さて、どうしようかな?
まあ、その前にだ。僕は、部屋に戻ると、オーソンさんを呼ぶ。
「教主派の国々の動きって、どう?」
「はい」
オーソンさんは、ひざまずきつつ、説明を開始した。
「バブル王国軍ですが、王は、王弟に軍を率いさせ、教主領の
「そう」
「後は、ビオランティナ共和国軍も、
「うん」
「後は、バローネ候国や、エローラ候国が、それらに合流の動きを見せております。数は、今のところ不明です」
「ふむふむ」
積極的に動いている国もあるようだが、動きの見られない国もありそうだった。教主派の国々にも、温度差があるのかもしれないな。
「ネルドア共和国は?」
「現状、何の動きもないそうです」
「ふ〜ん、動かないでくれるとありがたいけどね」
「はい」
まあ、こんな感じだった。アルオーニさんの説得に期待しよう。
というわけで、とりあえず暇な僕達は、サパ大聖堂や、サパの街中を探索する。
残念ながら、サパの斜塔は昇れなかった。やはり今は、倒れる危険性があるそうだ。しかし、近くにあるサパ大聖堂は大丈夫なのに、サパの斜塔が傾くのはなぜだろうか?
まあ、それは置いといて。
サパの街は、大きくはないが、
そして、サパ大聖堂は、
内部は、
「こちらは、1064年に建設が始まり、完成は1154年です。建築様式は、ロマネスク様式。大聖堂の形は、初期教会をイメージし、ラテン
「く〜」
「グーテルさん、グーテルさん、せっかく説明して頂いているのですから……」
「ふえっ、ひゃんふぉ、聞いてうよ」
「じゃあ、なんて言ってたんですか?」
「え〜と、バジリスク」
「それは、想像上の生き物ですよ、グーテルさん!」
エリスちゃんに、怒られた。まあ、この後も、色々説明聞きつつ、街をまわり。そして、あきた。
そうなれば食事だった。
僕達は、
なので、他はちょっといまいちかもしれませんという紹介だった。
まずは、飲み物を頼んで乾杯すると、スープが運ばれてくる。どうやら、ここは、ミニコースになっているようだった。
スープである、ボルダティーノ・アッラ・サパーナは、ミネストローネスープだそうだ。ダリア地方では、各地で色々なミネストローネスープがあるそうだ、それこそ、
ちなみにミネストローネスープとは、トマトのスープという意味では無く、具だくさんスープといったところだろうか。
で、サパのはというと、黒キャベツとトウモロコシ粉が入っているのが特徴だそうだ。トウモロコシ粉が入ってとろとろ、あんかけスープのようになって、これがもったり。おっと、失礼。
続いてはいきなりのメイン。ムッコ・サパーノ。意味は、そのままサパの牛。サパの
ダリアと言えば、タリアータだが、今回は、ステーキ。タリアータは、焼いた牛肉を薄切りにして、バルサミコのソース、そして、ルッコラ、パルミジャーノチーズをかけて食べる。比較的お肉をさっぱりと食べれるが、今回は、お店の方のこだわりで、肉の
この辺りでは、ライバル都市のビオランティナのキアーナ牛が一番という評判だそうだが、
で、値は張ると言ったが、お会計は、サパ共和国もちであり、自分が払った訳では無い。
それにしても、自分達や、
そして、これらの料理に合わせるのは、ダリアの赤ワイン。
ブドウ品種は、カラブレーゼ・モンテヌオヴォ。渋みが強くなく、比較的酸味のあるフルーティーなワインになるそうだが、
「う〜ん、美味しい〜」
「良かったですね、グーテルさん」
で、最後のシメは、パッパアルポモドーロ。パンのトマト煮って、感じだろうか?
ちなみに、パッパとは、赤ちゃん言葉で、パン。ポモドーロは、トマトという意味だそうだ。
鍋にオリーブオイルとニンニクを入れ、加熱する。ニンニクが薄く色づいたところで、細かく切ったトマトとバジルを加え、
夏だったら、
トマトソースと、この辺りの塩の入っていない硬いパンが、
「しかし、さすがに
「そうですね〜」
「ビオランティナの街に、行ってみようかな~」
ビオランティナ共和国の首都ビオランティナは、大きな街だし、面白そうな場所が多そうだった。だけど、バリバリの教主派の国だった。
「危ないですよ」
「そうだよね~」
エリスちゃんも、珍しく
こんな暇をもて
まあ、そんなこんなで、サパを
「申し訳ありません。交渉がうまくいきませんでした」
「はいはい」
さあ、お仕事だ。
「フローラ、アンディ、少し
「はっ!」
「は?」
フローラは、真剣な顔で返事し、アンディは、こいつ何言ってんだ? って、顔をしていた。
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