第145話 第一次ダリア遠征⑨
カール
ゼニア共和国から、船でサパ共和国に渡り、内陸へ。そして、ランド派の
その間に、カール従兄さんは、ダリアの各地で、僕に会いたいという人々をゼニア共和国に送り込んでもきた。
その中の一人から、
え〜と、
そして、人類に固有の働きは人類が全体として
う〜ん、まったく分からない。
そして、そのカール従兄さんからの報告の中で、突然もたらされた報告が、新しい教主様の誕生だった。しかも、ランド王国でランド人が。というわけだ。
普通、コンクラーヴェは、決まってはいないが、教主庁の
これは、ランド王国国王フェラード4世さんの思惑により、それに有権枢機卿達も同意したのだろう。まあ、
で、僕の
「カール従兄さん、ご苦労様でした」
「ああ。まあ、あまり役に、たたなかったがな」
「いえっ、そんな事は、ありませんよ。ありがとうございます。重要な情報をもたらして頂きましたし、枢機卿の方々に働きかけて頂いたおかげで、クレメント5世
「そうか」
カール従兄さんは、どこか満足しているようだった。
どこか変わったな。いやっ、
しかし、ダリア王として、僕の為に素直に動いて、その
「それでだ、グーテル」
「はい」
「クレメント5世聖下は、グーテルのダリア遠征を支持するそうだ」
「えっ! 本当ですか?」
「ああ。グーテルは、混乱しているダリアに、安定と
「え〜と、そうですか……」
なんか、うん、かなりこそばゆい。
「それで
「そうですか……。教主庁ですか……」
「ああ」
ゼニアか、ヴィロナの方が良かったのだが、仕方ないか……。ヴィロナには、皇帝冠が
「それで、カール従兄さんは、今後どうされるつもりですか? もしなんだったら、ゼニアでゆっくりと……」
「いやっ、そういうわけにはいかない。俺は、教主庁に戻るよ。戴冠式の準備もあるし、教主様の連絡も直接、教主庁に来るからな」
「そうですか……。良いんですか?」
「ああ」
あまり色々言うと、
「そうですか、では、よろしくお願いいたします」
「ああ、任せてもらおう」
こうして、再びカール従兄さんは船に乗り出かけて行った。
さて、僕達も。
僕は、アルオーニさんを呼び出す。
「新しい教主様が、戴冠式を教主庁でやってくれるそうだから、行って来るよ」
「はい、かしこまりました」
アルオーニさんは、そう答えながら、少し考えているようだった。アルオーニさんは、もちろんクレメント5世聖下が、新しい教主様になった事は知っていた。
「アルオーニさん、どうかした?」
「はい。え〜と、その事なのですが、教主庁に向かうのに、船を使おうと思います」
「えっ、船で?」
「はい」
アルオーニさんは、教主庁までの進路について語る。
「陸路を行くと、メッサ公国、ビオランティナ共和国とも教主派の国です。進めば戦いになるのは
「うん」
「それに、陸路だったらこれらの国に、バローネ候国まで参戦してくるかもしれません」
「そうなんだ~」
「なので、
「ん? サパ共和国?」
直接、教主領に入るわけじゃ無いのね。
「はい、あの国は
「そうだね。まあ、ゼニア共和国と戦って負けたけど」
「それは……、申し訳ありません」
そう、サパ共和国は、ダリア地方の四大海洋国家の一つだった。ネルドア共和国、ゼニア共和国、サパ共和国、メマルフィイ公国。この内、メマルフィイ公国はすでに滅んでいて、サパ共和国は、1284年、1290年と、相次いでゼニア共和国と戦い破れ、
その戦いで活躍し、ゼニア共和国の国家元首ともなったのが、アルオーニ・スコピーニさんなのだ。そして、サパ共和国の影響で、ゼニア共和国は皇帝派になったとも言える。
「え〜と、なので、サパ共和国に上陸後、今度は、陸路南下し、皇帝派の国ジローラ公国を通過し、教主領に入れば……」
「教主派の国も、手を出しにくいって事だね」
「はい」
さて、そう上手くいくかな? とは思いつつ、確かに、いきなりゼニア共和国の隣国メッサ公国から戦いになるよりは、良いだろうね。
「では、船の準備よろしくお願いいたします」
「はい、かしこまりました。後、私も
「アルオーニさんが?」
「はい、サパ共和国や、ジローラ公国との交渉も早くなると思いますので」
「そう、じゃあよろしくお願いしようかな」
「かしこまりました。よろしくお願い致します」
こうして、僕達は、移動する準備を開始した。
北部の諸侯さん達は、すでに自国に戻ってもらっていた。ただ、戴冠式には出席したいそうで、連絡する事になっていた。まあ、あまり領主が、自国をあけておくわけにはいかないしね。
アペリーロ・ヴェルディさんは、ヴィロナ公国軍を率いて、共にサパ共和国に行くそうだ。そして、ゼニア共和国の元首アルオーニさんも加わる。ゼニア共和国の主力は海軍。なので、艦隊は出すが、積極的には陸の戦いには加わらないだろうな〜。
船は進む。左横を見れば、遠く陸地が見えるが、前を向けば、延々と青い海が見える。そして、船の
だけど、舳先に立って、前を見てると、なんか心が、無になっていった。
「く〜」
「グーテルさん、危ないですよ。そんな所で寝ちゃ」
エリスちゃんから、バックハグされて、船室に引きずられていった。うん、眠い。
ゼニア共和国艦隊。ガレー船70隻に分かれて、全軍が船に乗り進む。ガレー船とは、
そして、他国では漕手は
漕手には与えられたスペースがあり、そこに品物を積んで商売することも可能だったのだそうだ。給金+副収入が入るというわけだ。たくましいですね~。だけど、漕手は大変だろうな。
「まあ、帆の力でも進みますから、それほどじゃないんですよね」
だそうだ。
ゼニアを出発して、2日ほどでサパ共和国の港、ポルト・サパーノが見えてきた。大きな港だった。サパ共和国の首都はサパだが、サパ自体はオルト川という川を少し
1290年にゼニア共和国によって、壊されたが、あっという間に再建されて今にいたるそうだ。
そのポルト・サパーノに上陸すると、今までとは
「グルンハルト陛下、バンザ~イ」
「陛下〜、陛下〜」
「キャ〜〜、グルンハルト様〜」
僕は、ひらひらと手を振り、歓声に応える。なんか、
僕達は、ポルト・サパーノで船を降りると、今度は、陸路サパへと向かう。
「あの〜、陛下どうされたのでしょうか?」
サパ共和国の元首、ウルチョーネ・デッラ・チョロチョーネさんが、僕の顔を見つつ、首を
「いやっ、あれ」
僕は、全身を
「おお、
「そうなんですか~」
まあ、それが良いだろうね。
どうも、あの斜めになっている塔は、サパ大聖堂の鐘楼として建てられているようだった。しかし、地盤沈下が起き、塔は斜めに、そこで、斜めになった塔を途中から、地面と垂直になるように作っていたが、さらに斜めになり、慌てて工事を中断し、地盤沈下の原因究明に乗り出したようだ。
よし、僕はあれを、サパの斜塔と名付けよう~。
サパの人口は2万人ほど、ヴィロナや、ゼニアほど大きな街ではないが、川と城壁に囲まれ、
僕達は、近衛兵団の一部を率い、サパの城へと、入ったのだった。
ダリア地方地図
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