第133話 閑話 カールの苦悩
「何なのだ、これは?」
ヴィナール公カールケントは、送られてきたグーテルからの書状を見て、再び苦悩していた。
ダリア王に即位するという、グーテルに対する嫌がらせのような、我ながら面白い策は、発表前にグーテルに知られ、グーテルに先んじられる事になった。
さらに、先に発表された事により、インパクトも無く、グーテルに名誉職である、ダリア王の地位を
そして、政治、軍事のトップであるヴィナール公国の宰相にして、ヴィナール公国筆頭領内諸侯であるヒューネンベルク、ヴィナール公国騎士団長にして全軍司令官であるネイデンハートに、ダリア王即位に対して、苦言を
「カールケント様が、ダリア王ですか……。で、ダリア王とは、どのようなお立ち場なのですか?」
「それは……、マインハウス神聖国皇帝に並び立つ……」
「ふんっ、
「これっ、ネイデンハート殿、
「これは、失礼致しました」
ネイデンハートは、
「だが、ダリア王こそ、我がマインハウス神聖国の根源であり、望みなのだと思うのだが」
「確かに、
ヒューネンベルクは、
「そうなのだが、グーテルがマインハウス神聖国の皇帝なら、我は、古のダリアの王とならんと」
「それで、先んじられておられれば、世話がありませんな」
「これっ、ネイデンハート殿」
ネイデンハートは、再び
「これは、大変失礼致しました」
そして、ヒューネンベルクは、
「カールケント様、あまり無茶なことはなさられないように。
ヒューネンベルクは、そう言うと、ネイデンハートと共に部屋を出て行った。
カールは、
それに……。
グーテルとは、情報収集能力で差がある事も自覚していた。少ない人数ながらも、ウルシュ大王国に攻められ逃げてきた暗殺教団の人間を使ってはいた。しかし、その者達の本職は、あくまでも暗殺であり、情報収集ではないのだ。
元から、グーテルに暗殺を仕掛けようとは思っていなかった。「そんな決着じゃ面白くない」そう思っていた。そして、暗殺行為自体もできない事も分かっていた。
情報収集目的で、放った暗殺教団の者達は、一人として帰って来ていないのだ。おそらく消されてしまったのだろう。まあ、仕方が無い。そう思うことにしたのだった。
そして、この書状であった。カールは、すぐさま、ヒューネンベルクと、ネイデンハートを呼び出し、意見を聞く。
カールは、2人が来ると、グーテルからの書状を渡す。2人は、ゆっくりと書状に目を通し、顔を上げる。
「で、どうであろうか?」
「どうであろうか? で、ございますか?」
ヒューネンベルクと、ネイデンハートは、顔を見合わせ首をひねる。
ヒューネンベルクは、政治家として、さらには、戦場における軍師としても有能な男だった。ネイデンハートは、騎士、兵士を率いて戦う才能がある上に、戦場での戦いの駆け引きの才能もある。
だけど、こういう駆け引き。
そういうのは、カールの得意分野だった。
かつて民主同盟の街のいくつかを
「いや、グーテルが、私を誘い出して、討とうとしているのではないかと、言う事だ」
「はあ」
ヒューネンベルクは、少し考える。
「グーテルハウゼン陛下……。グルンハルト陛下は、そういう事をされるような方では、ないように思いますが……」
隣で、ネイデンハートが大きくうなずいていた。
「そうか? う〜ん?」
カールは、自分だったらそうする、という考えだったのだが、確かにグーテルが、そういう行為をするとは考えにくかった。しかし、だからこそ、やるのではないかとも考えた。
誘い出しての
「だったら、私が、軍を率いて合流場所に兵を
ネイデンハートが、カールに提案すると。
「なるほど、それは良い。討たれる前に逆に討ってしまえば良い」
「さて、どうでしょうか?」
こうして、カールケントは、300騎の騎士と共に出発。そして、それとは別に、ネイデンハートは4000名の騎士と、8000名の兵士、合計12000を連れて出兵した。
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