第4話 グータラ殿下の優雅?な一日➂
「さあ、お昼! お昼!」
いよいよ一日で、最もゆっくりと、そして美味しい料理が、たっぷりと出てくる昼食だ。僕は、そう言いつつ、執務室からの廊下を歩いていると、後ろをついてきたフルーラが、またなさけない声を出す。
「殿下〜」
「ん? 何だっけ?」
僕は、立ち止まりフルーラの方を振り返る。すると、
「殿下〜。殿下がおっしゃったんですよ。ランチバック持って、少し遠くまで視察しようって」
「そうだった。ごめん、ごめん。ハハハ。じゃあ行こうか」
「はっ!」
そう言うと、僕達は、城の中庭へと向かった。そこでは、フルーラ配下の護衛隊がすでに準備を整え、僕達を待っていた。
まあ、護衛隊と言っても、総勢5人。隊長がフルーラで、副隊長がいて平隊士3人。という編成だ。
家柄でフルーラが隊長で、経験豊富な騎士が副隊長に選ばれ、後は比較的腕が良く、家柄も良い人間が、隊士に選ばれる。
「おっすー、おはよう殿下」
「ああ、おはようアンディ」
「貴様! 殿下に対して何たる口の聞き方! そこに、なおれ!」
フルーラが
「まあ、良いじゃないフルーラ」
僕が、そう言うと、アンディも
「そう、そう、殿下も、そう言ってんだしさ」
すると、フルーラが
「はあ、はあ。なぜ貴様のような人間が、あの
「産まれちゃってごめんね、隊長」
「くっ。貴様」
高潔な方から。そう、アンディは執政官コーネルの息子だ。騎士団に属しているから分かるように、長男ではない。次男だが。
アンディは、かなり
そう、僕から見てもその長身とすらっとした体型。そして、ほとんどの女性が振り返るだろう顔、そして、甘い声。とことん、
本当に、なんでコーネルの息子なのに、こんな軽いんだろうね〜。まあ、年齢は向こうが1歳上で、お互い気にしない性格だから、話し相手としては、僕とは気が合うんだけどね。
他の護衛騎士は、またやってるよという顔をして、さっさと準備を済ませ、馬上の人となる。僕も、馬に乗ると、声をかける。
「フルーラ、アンディ、置いてくよ」
そう言うと、軽く馬の腹を蹴る。僕の馬は、軽快に進み始めた。フルーラ、アンディ以外の護衛隊も続く。
「お待ち下さい〜。殿下〜」
フルーラの叫び声が聞こえ、
アンディの方は、口笛を鳴らすとアンディの馬が走り出し、それに併走しながら跳び乗る。ほんと、絵になるね~。
城門を出て、城のある小高い丘から駆け下りると、城下町であるフルーゼンの街に入る、そして、北へと抜けるのだが、馬のスピードを落とし、石畳を進む。
「おばちゃ〜ん。風邪治った?」
「殿下、お陰様でよーなりました」
「そう、良かった」
「あっ! フューリーさん、結婚するんだって。おめでとう」
「殿下。わざわざ有り難うございます」
「あっ、マスター。今日、夜行くからね」
「お待ちしております」
「殿下!」
なんて、街の人達と、挨拶しながら進む。お父様は、もう少し
「あっ、グータラ殿下だ!」
「こらっ、止めなさい!」
僕のあだ名を呼ぶ子供の声がして、母親が慌てて止めている。
「ハハハ。良いじゃないグータラ殿下で、本当の事だし」
「申し訳ありません」
近くをそう言いながら、通り過ぎる。子供の母親に謝らせちゃった。いけない、いけない。
グータラ殿下。
僕の名前はグーテルハウゼン。親や、親しい者は、グーテルなり、グーテル殿下と呼ぶ。そのグーテルだが、この地域の方言だとグータラに聞こえなくもない。そして、ぐうたらとは、マインハウス神聖国から、
街を抜け、馬のスピードを上げる。湖を右手に見ながら、進む。そして、
「ここで、休もうか」
僕がそう言うと、
「はっ!」
護衛隊は、素早く、
朝食と同じく、パンだ。だけど冷めても美味しいように小麦の多いパンとなっている。そこに、アスパラガスを始めとする野菜。そして、今回は、細長いソーセージが入っていた。おそらく、マインハウス神聖国帝都フランケルアルアインの名物ソーセージだろう。細長いソーセージのため、比較的冷めても美味しいのだ。
そして、付け合せに、ザワークラウト。ようするに、キャベツの
隊士達は、おもいおもいに座っているが、フルーラと、アンディは、僕の目の前に座ると。普通に、3人で、
ただ、普通、休憩においては、二人くらいは周囲を警戒するために、食べずに
「平和だね~」
「どうされました、殿下?」
「隊長〜。殿下は、
「えっ! これは失礼しました。早速!」
「ああ、いらない、いらない。平和なことは良いことだよ。うん」
「そ、そうですか。では、そのように致します」
「ハハハ。隊長〜駄目だな〜」
「おい、貴様。分かっていたなら、お前が歩哨に立てば良かっただろう」
「え〜。嫌ですよ~。疲れるし。隊長がやれば良いじゃないですか〜」
「き、貴様!」
と、フルーラが剣を抜く。そして、また、出発前と同じ事が始まった。練習熱心だね~。僕は、それを見つつ、ゴロッと横になった。おやすみ。
「殿下、殿下」
「ん? あっ、おはようフルーラ」
「はい、おはようございます……。ではなくて、そろそろ出発しませんと、視察の時間が無くなりますよ」
「そう。じゃあ行こうか」
僕は起き上がって、すでに準備の整っている馬に乗ると、再び移動を開始したのだった。あ〜。眠い。
僕は馬に乗ったまま、耕作地をを回る。ちょうど昼の休みも終わり、耕作地には人が、ちらほらと見える。うん、のどかだ。眠くなってくる。
だけど、城は丘の上にあるから、涼しいのかとも思ったが、まだ夕方と言うには早いこの時間だが、少しヒヤッとする風が吹く。
「秋にはまだ早いのに、ちょっと涼しいね」
「そうですか? わたしは、結構暑いのですが」
僕は、フルーラを見る。う〜ん、銀色に輝く甲冑が、熱を吸収しているのかな? 僕は、甲冑は着てない。普段の服のままだし。
季節は、暑すぎない真夏を過ぎ、
「おじさん。今年の出来はどう?」
「これは、殿下。今年は夏の暑さがいまいちで、
「そう。最近、特に、涼しいもんね」
「はい。
「じゃあ、仕事頑張ってね」
「ありがとうございます」
この後、数人に声かけたが同じような感じだった。う〜ん。
村を、ぐるっと一周した。自分的には視察終わりだが。お父様の視察に比べて明らかに短い。どうやって時間潰そう。このまま帰ったら、コーネルに色々言われそうだし、街に、飲みに出るには早いし。
本来の視察は、まず村長等のその土地を
「うん。良い景色だし。暖かそうだ」
「はい?」
フルーラが首をかしげる。が、僕は構わず馬から降りると、村が見渡せる、ちょっとした丘の上に上がる。
すると、アンディが素早く敷物を敷き、僕はその上にゴロッと横になる。日差しが暖かくて気持ち良い。これじゃ、秋の陽気だよね~。
「殿下〜。村の皆が、見ております。殿下〜」
いや、見られるより、フルーラの声が大きくて、僕がここにいるのが、伝わっちゃうよ。
僕が、うつらうつらしていると、人が集まってくる気配がある。すると、フルーラが僕に声をかける。
「あの〜、殿下〜。ヘーデ村の村長が挨拶したいそうですが」
すっかり目の覚めていた僕は、敷物の上に座り直すと、周囲を見廻す。周囲には、村人がほぼ全員集まっていた。
おっ。彼らだよな。僕は、人垣の後ろの方にいる、若い男女に声をかける。
「え〜と、リューゼさんと、ミルシュさんだよね? 結婚おめでとう」
「えっ! わ、わたし達を、ご存知で?」
「うん。前に見たし、今日ちょうど結婚の承認したからね。なんとなく」
そう言うと、周囲の人間。おそらく、二人の両親や家族だろうか。慌ててペコペコと頭を下げつつ。
「あ、ありがとうございます」
等と、口々にお礼を言われ、さらに、
「で、殿下〜。わ、わ、わ〜ん」
ん? ミルシュさんだっけ? が、泣き出した。何か、悪い事したかな?
そのタイミングで、
「あの〜。殿下。不手際は無かったでしょうか?」
村長が、心配そうに僕に声をかける。
「特に無いよ。平和で良い村だね」
「ありがとうございます」
安心したようだ。
「あっ、そうだった。今年涼しくて作物の成育悪いみたいだけど、来年用の
ようするに、収穫量減っても、来年用の作物の種まで食べる事はしないようにって言ったのだ。
「か、かしこまりました」
村長は、びっくりしたような顔をして、返事をする。失礼な。僕だってちゃんと考えているんだよ。一応。
「さて、帰ろうか」
「はっ」
こうして、僕のヘーデ村視察は、終わった。
喧嘩するフルーラとアンディとグーテル。作画みんとさん。
https://kakuyomu.jp/users/minta0310/news/16817330655485020448
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