第48話 討伐依頼1
今は久々に、飛空艇に乗っている。
というか、アウレリアさんが飛空艇で迎えに来たんだ。私に拒否権はないらしい……。
それと、飛空艇内にはドーラさんがいた。
機嫌が悪そうだ。それと、酒臭いんだけど……。
「さて、緊急の招集に応じて頂いてありがとうございます」
「けっ!」
──ドン
ドーラさんが、樽型ジョッキをテーブルに叩きつけた。
不機嫌は最高潮だな。
「こちとら、やっと彼氏ができそうだったってのによ。いきなり拉致りやがって!」
「ドーラさん。どんな理由であれ、街中であれだけ発砲したら、殿方は逃げて行きますよ?」
「うるせぇ! 男に苦労していない奴の言葉なんか聞こえねぇよ!」
「はぁ~。何度も言いますが、その乱暴な……」
──パン、パン、キン、キン
ドーラさんが、早撃ちした……。それを、アウレリアさんが剣で弾く……。
天井と床に穴が空いているんだけど……。
絶句していると、船員が来た。
「アウレリア嬢。船を壊さんでくれ!」
「ああ!?」
ドーラさんが、睨み付けると船員は戻って行ってしまった。
「ねえ、ドーラさん。それで異性が寄って来ると思いますか?
上辺だけ取り繕っても、捨てられるだけですよ?」
「うう……。ノア、ノア~~!。アラン!!」
ドーラさんが、今度は顔を覆って泣き出してしまった。アウレリアさんが背中を擦る。
その後、愚痴が始まった。
当時ノアは、アランと名乗っていたらしい。場所毎に偽名を使っているので、共通認識のため、今はノアで統一してるんだけど。
ドーラさんは、仲間に裏切られて瀕死のところをノアに助けて貰ったらしい。
怪我を治して貰い、また適正のあった銃を教えて貰い、運命の相手と思ったのだとか。
まあ、分らなくはないんだけど……。
それと本来、火薬と言う物が必要なんだけど、ドーラさんは、火魔法で爆発させる方法を教えて貰い、銃の運用コストが大幅に下がる。また、金属を加工する魔法も覚えて、インゴットから弾丸の先端部分だけ作成する事にも成功した。
もうこの時点で、従来の運用コストの1/10になったらしい。それと、散弾なる物を作成したら、敵なしとなり、一気にA級冒険者に上り詰めた。
ここで、ノアは「これで教育は終わりね」と言って、姿を消したらしい。
これは……、酷いと思う。乙女心を踏みにじっている。
荒れたドーラさんは、魔物を狩りまくって、王国でも名を知らない者はいないほどの冒険者になった……。
ノアとの再会を求めてだけど。
「そんな経緯があったんですね……」
「リディア……。あんたは可愛いし、若いし、愛嬌もあるから余裕ぶってるけど、すぐにおばさんになるからね。
私は、ハーフエルフで余り老けないけど、それでもかなり苦労してるんだから」
今度は、矛先がこちらに来た……。
私も、男運があるとは言えなんだけどな。ゲラシウスくらいしか言い寄って来なかったし。あ、王太子にも言い寄られたっけ。それと、伯爵令息にも。あれ? 私、結構もててる?
まあいいや、ここでアウレリアさんにパスを出そう。
「S級冒険者なんだし、アウレリアさんに紹介して貰ったら?」
「……社交界で、ちょっとありまして。貴族には話が広まっています。
私からの紹介は、もう伝手がありませんね。第三都市カシアナの……、オースティンさんをリディアさんから紹介してはどうでしょう?」
「無理ですね……。釣り合いません」
「では、親戚とか……」
「兄がいますが、学生です」
「リディアも紹介する気がないんだろう!」
その後、荒れるドーラさんをなだめていたら、王都に着いた。
招集された理由を聞きたかったんだけどな……。
◇
王城に着くと、王太子の出迎えを受ける。
ちょっと! いきなり抱き着かないでよ!
「リディア嬢。お待ちしておりました」
……うん。この子の将来が心配だ。異性を泣かせる青年になるんだろうな。でも、王太子でそれやちゃったら、離反する貴族が出そうだけど、いいのかな?
ドーラさんは、ジト目で私を見て来て、アウレリアさんは作り笑顔だ。二人共、怖いんだけど?
ちょっと! 私はなにもしてないからね?
ここで、王妃様が来て、手を上げるとメイド達が王太子様を連れて行った。
「拘束系と麻痺系の魔法か……」
ここで気が付いたのだけど、王妃様付きのメイドさん達は、かなりの実力者だ。魔力が違う。
A級冒険者クラスだと思う。なんで、メイドなんかしてるんだろう?
貴族令嬢なのかな?
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