第47話 親衛隊としての仕事2

 目の前には、魔狐の変異種がいる。

 そして、私の周囲には、魔狐が複数隠れている……。不意打ちを食らうと面倒だな。

 私は、領域フィールドの属性を変化させた。

 痺れを切らしたのか、変異種が私の領域フィールドに入って来た。

 ……知能は低そうだな。罠だと分かるだろうに。


 そして、凍り始めた。魔狐の纏う炎も消えてしまう。

 防御型として、ゆき領域フィールドを展開した結果だ。

 火魔法の属性持ちに対しては、効果絶大だな。

 変異種が慌てて、領域フィールドから出る。流石獣だ、危険に聡い。

 それを見た、隠れていた魔孤が出て来て、炎を吐いて来た。

 その炎を切り裂いて、とりあえず2匹を倒す。

 他は、素早いな。また距離を取ったり隠れ出した。

 まあいいか。

 目の前の変異種を倒そう。

 片手片足が凍っている。

 炎で溶かしているけど、回復魔法がないと凍傷は消せないわよ?

 格段に動きが悪くなった魔孤に剣劇を叩き込んで行く。

 そして、凍らせても行く。


「魔孤には、ゆき領域フィールドが効果的だな。ほぼ、完全防御だ」


 変異種を、少しずつ追い詰めて行く。

 ここで特大の炎を吐き出した。

 即座に、領域フィールドの効果を切り替える。

 今度は、ひょう領域フィールドだ。雪が雹に変わり、大きめの氷が炎とぶつかる。

 勢いが衰えたので、私は飛ぶ斬撃を放った。

 変異種に見事に当たり、鮮血が飛び散る。

 変異種が、たたらを踏んだ。

 もう少しだ。

 再度の領域フィールドの変更。

 私は、全力の一歩で間合いを詰めた。だけど、カウンターが来る……。

 私は、そのカウンターを躱して、変異種の頸を刎ねた。


きり領域フィールドの幻影は、一撃必殺になるな~」


 ここで、背後から魔孤が襲って来る。

 大丈夫だ、視えている。

 私は、ショルダータックルでカウンターを合わせた。



「30匹って話だけど、20体分の素材しか集まらなかったわね……」


 ここで、私の護衛が教えてくれる。


「残りは、バラバラに逃げました。ですが、リディア嬢なら探し出せると思います。

 今ならまだ、遠くにも行っていないでしょうし……」


「……了解」


 殲滅戦か……。面倒だな。

 でも、これも依頼なのだ。私は飛翔した。


「全方位に逃げているのね……」


 精霊の目と耳を使い、魔孤の位置を特定する。

 面倒だな。全力でこの場から離れようとしてるじゃない。

 とりあえず近場の魔孤から狩って行くことにした。

 姿を消しながら急降下して、狩り取って行く。命が途切れたのを魔力感知で確認したら運び、護衛に引き渡す。

 C級冒険者してた時には、こんなのに手こずっていたんだな……。


「これでは、最後の一匹は、明日か明後日になりそうだな」


 私は再度飛翔した。





「……これで最後だと思います。多分32匹ね。残りは、私の魔力感知の範囲外に逃げたかもしれないけど、そいつらは諦めてください」


「十分な成果ですよ、リディア嬢!」


 これくらいは、彼等でも狩れそうなんだけどな。仮にも王妃様の直属部隊の人達なんだし。

 魔力を見ただけでも、A級冒険者クラスもいそうなんだけどな。

 でも、案内と運搬以外くらいしか手伝ってくれない。

 聞いてみてもいいわよね?


「……魔孤くらいなら、分散して倒した方が効率が良かったんじゃないですか?」


 私の護衛達が、顔を合わせる。


「その……、昔ですが我々は、冒険者をしてまして、再起不能とまでは行かなくても心身共に傷を負った者達で構成されています。王妃様がB級冒険者以上で、活動休止になった者達を治療して、雇ってくれているのです。

 まあ、歩合制なのですけどね。それでも、王妃様には感謝しかありません」


 そうだったんだ……。


「ごめんなさい。失礼な事を聞きました」


 頭を下げる。


「いえ……。リディア嬢も大怪我を負われたとか。それでも、剣を取れるのです。尊敬に値しますよ」


 そっか……。私と境遇が同じ人達だったんだ。

 でも、私は心が折れなかった。

 足掻きながら、考え続けて、そしてノアに出会えた。

 私は、幸運だったんだな。


「リディア嬢……。申し訳ないのですが、王城へ急いで帰りましょう。もう3日過ぎています。

 依頼が溜まっていそうで、心配でなりません」


 う~ん。もうちょっとかっこいいところを見せて欲しいな。

 そうすれば、ドーラさんも困らなかっただろうし……。


「そうですね。戻りましょうか」


 私は、飛竜の頬を撫でた。

 私に懐いてくれている。


 でも、魔孤を食べた口で、私を舐めないで欲しいな……。

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