第46話 親衛隊としての仕事1

 飛竜に乗って、王城に帰って来た。

 今回は、5日もかかったな。アイスメイル侯爵領は遠いのだ。

 まあ、母親とのんびり会話したのもあるけど、たまには休みもいいよね?

 王城に降り立つと王妃様が、私に駆け寄って来る。

 私は、スカートを少しだけ持ち上げて、一礼した。


「リディアさん、お仕事が溜まっています。申し訳ないのですが、直ぐに出発してください!」


 挨拶抜きか……。相当溜まってるんだな……。

 まあ、そうなるよね。

 毎日、依頼を数件熟していたのだし……。

 人手不足感が否めないな。今までどうしてたんだろう?


「アイスメイル侯爵家とは、話し合いが終わりました。……引き続き、頑張らさせていただきます」


 王妃様は、満面の笑顔だ。

 その後、必要な物資を受け取る。特に魔力石だ。かなり多めに貰った。これが、私の生命線なのだし、王妃様も出し惜しみする気はないらしい。

 それと、今回から私に護衛を付けるとか言い出した。王妃様の直属部隊なんだそうだ。

 アドバイス役と言うより、監視役かもしれいな。アイスメイル侯爵家で、少しのんびりし過ぎてたか。

 それと魔力からなんだけど、彼等も優秀そうなんだけどな……。

 そういえば、王妃様の直属部隊が、討伐を行っている話は聞いたことがない。

 時間があれば、聞いてみよう。


「それで、始めに何処に行けばいいですか?」


「南の集落跡に、魔狐が集落を形成し始めました。食料も豊富にあるみたいで、後数ヵ月は占拠が続くでしょう。

 数が多くて、現地の冒険者が撃退されています。冒険者ギルド支部からの応援要請と考えてください」


「魔狐ですか……。何匹か分かりますか?」


 私の因縁の相手だな。

 少し、苦手意識がある。


「30匹と聞いています。ですが、集まって来ているかもしれません。詳細はこちらに」


 手紙を受け取る。

 ……急いだほうが良いかな。群れが大きくなると、それだけ手強くなる。それは、私が身を持って知っている事だ。

 私は、王妃様の直属部隊を率いて王城を後にした。

 飛竜は、疲れているかもしれないけど会話中に、食事休憩を行ったら飛んでくれた。

 とても可愛いと思う。今度、世話の仕方を教えて貰おう。





 飛竜で半日……。私の護衛の指示で飛んでいると、私の魔力感知が反応した。


「あれかな?」


 集落跡が見えて来た。

 魔狐も視認する……。

 久々に、魔孤を見た。無意識に避けていたのかもしれない。

 古傷が痛むとかはないんだけど、精神的に来るものがあるな。

 大きく息を吐き出した。


「ふぅ~。一度距離を取りましょう」


 そう言って、少し離れた場所に、飛竜を着陸させた。私の護衛達も続いてくれる。


「なにかありましたか?」


「私は姿を消しながら魔孤の中央に降り立って、奇襲をかけます。制圧というか、全て倒すことは出来ないでしょうけど、半分は瞬時に拘束出来ると思います」


「考えがあるのですね。分かりました。何かあれば、合図を送ってください。最悪、盾にくらいにはなります」


 こうして、私は一人で飛び立った。

 まず私は、霰魔法の領域フィールドを展開した。今は、反射リフレクションで姿を消す。

 そのまま、魔狐の群れの中心に突撃した。


領域フィールド! 暗闇ブライン展開!!」


 闇と言うより砂塵嵐さじんあらしだな、これ。数メートル先も見えない。

 魔孤が、危険を察知するけどもう遅いわよ?

 方向感覚も狂わせている。

 直進しているようでも、私の領域フィールド内を周っているだけだ。

 そして、この暗闇の中、私だけは、視覚も聴覚も働く。

 風竜の剣で、なで斬りにして行った。


「ふぅ~。領域フィールド内の魔孤はこれだけかな……。それと、どれだけ逃したのか、調べないとね」


 私は、暗闇ブラインを解除した。

 そして、視線が合う……。

 まあ、気が付いていたのだけどね。


「粗方倒したと思ったけど、ここで群れのボスの登場か……。しかも、変異種……」


 普通の魔孤よりも二回りは大きい。

 そして、赤黒い炎を纏ってもいる。それと、特徴を上げるのであれば、尻尾が複数ある事かな。

 敵意の眼を持って私を睨んでもいる。

 逃がさないと言わんばかりだ。まあ、逃げる気はないんだけどね。


 私は、魔力石を確認した。


『まだ持つけど……、長期戦になると不利かな。それと逃げられた場合は、魔力石の交換を行おう』


 火属性の魔物は、私にとって天敵だった。

 でも、今日その苦手意識を克服しようと思う。

 私の属性魔法改め……、天候魔法。その実力を確認するのだ。


 私は、変異種に剣を向けた。

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