第41話 王妃様からの依頼4

 王城に着くと、王妃様の歓迎を受けた。

 そして、S級冒険者の話が出て来た。S級冒険者として認められるには、数年の実績と他国への派遣が必要なんだそうだ。実績は、十分みたいだけど、活動期間が短過ぎるらしい。

 竜の卵の捕獲は、それほどの実績だったみたいだ。ちなみに、帝国の貴族が、国家予算クラスの金額で競り落として持ち帰ったと聞いた。


『アウレリアさんみたいに動けなくなるのは、避けたいな……』


 先を考えると、自由時間は欲しい。

 まあ、今考える事じゃないか。獲らぬ狸のなんとか、とか言うし。この国の冒険者では、『狩りの前に素材の話をすると、矢が当たらない』なんだな、これが。

 S級冒険者は、話が来てから考えよう。

 今は少し、休憩してから、また活動を再開しよう。功績は、地道に稼げばいいはずだ。

 住む場所は、王城に部屋を貰えてるのだし、お金を使う場所もない。

 疲れが抜けたら、剣と魔法の練習をしよう。

 食事に舌鼓を打ちながら、考えていた時だった。手の込んだ美しく美味しい料理に魅了されて、思考が鈍っていたのかな。


「それでなのですが、リディアさん、迷宮ダンジョンで行方不明のパーティーが出ておりまして……。捜索隊に加わって頂けませんか?」


「ごふ……、えっ!?」


 休憩なし? アウレリアさんは、常に動き回っているけど、私も?

 この後、私は王都近くの迷宮ダンジョンに連れて行かれた。いや、連行された……。





「何気に、迷宮ダンジョンって初めてなのよね……」


「道案内は、我々が行います。リディア嬢は、とにかく魔物の駆除をお願いいたします」


 王妃様の直属部隊の人達……。かっこいい事言ってるけど、仕事が逆じゃない?

 まあ、いいんだけど……。ちなみに直属部隊は、ノアとは関わっていない人達で構成されている。まあ、王妃様の私兵かな。

 アウレリアさんに対してもこんな感じなのかな……。ドーラさんは、嫌気がさしたんだろうな。

 こうして、迷宮ダンジョン探索が始まった。


「……昆虫族の迷宮ダンジョンなのね」


 うう……、虫は嫌だな。苦手だけど、私が最前面に立たないとこのパーティーは進めない。

 霰魔法で雪の領域フィールドを展開する。

 昆虫は、寒さに弱いのが鉄則!

 私の領域フィールドに入って来た昆虫は、途端に動きを止めて動かなくなる。私は、それらを剣で倒して行く。単純作業で良かった。難易度の低いダンジョンだと思う。

 素材は、案内役兼護衛が回収してくれた。マジックバッグ持ちみたいだな。

 これも、王妃様の狙いなのかもしれない。

 資金回収にも、役に立っているんだろうな。


「それにしても、魔物が多いわね……」


 私は、迷宮ダンジョンを知らないので、普通が分からないけど、常に数匹ずつ襲いかかって来る。

 辺境にいた頃は、1対1を基本としていたので、多対多というのは、慣れないな。

 まあ、実質一対多なんだけど……。

 陣型の霰魔法を覚えていなかったら、手強かったかもしれない。


 ここで、私の精霊の目が反応した。


「……見つけたかも?」


 その場に駆け寄ると、3人が結界の中で休んでいた。良かった、生きてた……。

 急いで、応急処置を施して行く、王妃様の直属部隊の人達。これも立場が逆な気がするな。まあ、私は、回復魔法は覚えていないんだけど……。

 私は治療は任せて、近づいて来た魔物を屠った。



「これで、終わりですよね? さっさと迷宮ダンジョンから出ましょう。流石に前後から襲われると対応しきれないし。

 今なら帰り道には、魔物は出なと思うわ」


 手当てを終えたのを確認して、私は立ち上がった。

 だけど、ここで思いがけない意見が出た……。


「依頼が出ている行方不明のパーティーは、3組になります。迷宮ダンジョンに異変が起きていまして……。ここで帰ることはできません」


 嘘でしょ……。





 その後、一層の最奥まで進み、3組目の冒険者パーティーを救出した。

 帰りは大変だったな。もう大乱闘だった。魔力石もギリギリ持った。切れてたら、危なかったな。

 それと、千匹を超える魔物の素材だ。

 王妃様の資金源になり、また、王妃様の直属部隊の給料になるらしい。

 皆、ホクホク顔だ。

 ちなみに、今回同行してくれた人達は、本来後方支援担当とのこと。今主力隊は、出払っていて人手不足らしい。

 アウレリアさんは、どんな依頼を熟しているんだろう……。


「ありがとうございます。助かりました」


 助けた3組の冒険者パーティーが、頭を下げて来た。


「ちなみにですけど、なにがあったのですか?」


「突然、とても強い魔物がわいて、逃げ回っていました。それと同調して、魔物の数が急激に増えて……。逃げ切ったパーティーが、ギルドに連絡してくれたんだと思います」


 そういう事か……。


「倒しておいた方がいいかな? この迷宮ダンジョンに入れなくなるわよね?

 でも、この場合は冒険者ギルドで請け負う仕事なのかな? 私も冒険者の端くれだったので、討伐依頼を取られて揉めた事もあったから、出しゃばるのも良くないって知っています」


「……先ほど、リディア嬢が倒されていましたよ? 気にもされませんでしたか? 有象無象の中の一匹でしたか?」


 護衛の一人が、蜘蛛の魔物を取り出した。

 3組の冒険者パーティーが、その魔物を見て頷く……。

 え? これなの?


 ……あれ? 私の強さがおかしい?





 また、王城に帰って来た。迷宮ダンジョン探索は。実質2日かな。

 そして、王妃様の熱い歓迎を受ける。これから、この繰り返しになるのかな?

 メイド付きの入浴と、豪華な食事が出された。

 ……また、なんかありそうだな~。

 でも、ここは笑顔で食べる。いいように使われているだけかもしれないけど、今は功績を稼ぎたい。


「う~ん。美味しい~」


 食べた事のない豪華な料理は、心を満たしてくれる。

 それと、王妃様とのお茶会だ。毎回、甘いモノが出て来る。

 あれ? 私……、餌付けされてる?

 でも、たまにはメグのお店に食べにも行きたいな……。


 そんな事を言える暇もなく、また依頼が来る。

 王妃様の直属部隊ってどうなってるの?

 というか、今国中で魔物の問題が、発生している事を知った。

 この数年、魔物が異常なほど増えているらしい。

 アウレリアさんとドーラさんには、たまに王城で出会う。一晩情報交換をするだけで、二人はすぐに旅立って行ってしまった。

 私には、王都近くの比較的優しい討伐依頼のみが来ているみたいだ。

 まあ、新米A級冒険者だし? 高難度とかは、避けたいのもある。

 でも……、竜種に挑んでみたいのもあるな。それと、変異種とか。

 二人が持ち込んだ素材を見て、ため息が出た。


 こんな生活を送りながら、数ヵ月が過ぎて行った。





「今日も討伐頑張ろう」


 そう思っていたら、意外な話が出て来た。

 王妃様から手紙を渡された。


「……アイスメイル侯爵様が、私を召還ですか? しかも命令?」


「断っても構いませんよ? わたくしが後ろ盾となります」


 思案する。何故、今頃呼ぶのか……。

 一つ思い当たるのが、母親かな。


「理由如何によっては、行かないといけないのですけど……」


「推測するに、リディアさんが王家の直属部隊に入ったので、膂力の確認をされるのだと思います。

 アイスメイル侯爵は……、有能な人材には敬意を払うので、呼び戻す気かもしれません」


「アイスメイル侯爵様を知っているのですか?」


「王家と侯爵家ですからね。それなりに、親交はあります。リディアさんの事も聞いてはいました」


 それは、そうか。

 それと……。貴族令嬢が家を出るのは、王家にまで伝わるんだな。

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