第40話 王妃様からの依頼3

 その後、ファレル伯爵領内の魔物を狩り続けた。


 視界を奪うなら、砂塵嵐さじんあらし領域フィールド暗闇ブラインの応用。

 凍らせるなら、ゆき領域フィールド魔法吸収ドレインの応用。

 幻影を見せて不意をつくなら、きり領域フィールド妖霧ダークネスの応用。

 物理攻撃で圧倒するなら、ひょう領域フィールドあられの応用。

 そして、姿を隠すならかすみ領域フィールド反射リフレクションの応用。


 今のところ5種類が発現できた。


「それにしても、手強い魔物が多いわね。多少変異している個体も見えたし」


 私の独り言に、護衛が反応した。


「数年前に、魔物の氾濫スタンピードが起きまして……。兵士や衛兵、冒険者の数が減ってしまいました。

 特に冒険者です。他領地に拠点を移されてしまって……。正直困っています」


 そうなんだ……。人手不足なんだな。

 そして、この地は手強い魔物が多いのか。レベルが高いのかな?

 私が拠点とした第三都市カシアナは、数は多かったけど、レベルは低かった。領主も決まっておらず、税も安かったから初心者冒険者の人気の地でもあったな。

 ファレル伯爵領に冒険者を呼び込むには、どうしたらいいんだろう……。私の考えることじゃないんだけど、考えてしまう。


「でも、リディア嬢が来てくれて助かりました。さすが、王妃様直属のS級冒険者です!」


「……私、A級冒険者なんだけど?」


「はえ?」


 今更だな~。これから功績を挙げるのも面倒だな。S級冒険者になっても、ドーラさんは、逃げてるみたいだし。

 昇格は、少し考えるか。


「素材の運搬をお願いしますね」


「え~と。競売にかけた後に、後日代金を受け取りに来られるのでよろしいでしょうか?

 手数料を差し引かせて貰う事になるのですが……」


 竜種の代金に比べると、はした金としか感じないな。

 金銭感覚が狂って来ているのが分かる。持ち金は少ないんだけどね。

 王城では私の部屋を用意して貰っているし、お金使う場所もないんだよな~。

 待遇は、最高だし。


「……素材は宴会代ということで、ファレル伯爵様に献上します。あ、魔力石だけくださいね」


「はえ!?」


 さて、次に行こう。

 まだまだ、魔法の検証を行いたい。

 ここは、私にとってとてもいい修行の場だ。


「次に行きましょう。次! 今日はひたすら狩りまくるわよ!」


「は、はい!」


 その日は、朝から晩まで討伐を行った。





 日が暮れて、ファレル伯爵様のお屋敷に戻ると、歓迎された。


「リディア嬢。感謝の言葉もありませぬ」


 ファレル伯爵様が、私の手を取って謝辞を述べた。

 家人達が、同時に頭を下げる。

 数ヵ月前だったら、あり得ない光景だったな。


「お礼は、王妃様にお伝えください。それと、冒険者がこの領地に拠点を移す政策を考えてくださいね」


 その後、村長達が素材を運んで来た。変異種を含めた数十体の素材が並ぶ……。

 それを嗅ぎ付けて、商人まで来た。何処にいたの?

 ファレル伯爵様は、値段交渉に入ってしまい、家人達と兵士達はささやかな宴会だ。

 庭に料理が並べられて、アルコールが振舞われる。

 料理は素朴だけど、量があって美味しい。

 それと……。私はファレル伯爵様の息子に言い寄られていた……。

 10歳とは思えない、熱いアプローチだったな。レナード王太子といい友人になれそうだ。帝国の王子様も歳が近いし。それと、私は年下にモテるんだな……。

 また、村長達と冒険者支部長から長期滞在を求められた……。王妃様に聞かれたら援助がなくなっちゃうわよ?


「リディア嬢が男性であったら、最高の待遇で迎えられたものを……」


 そう、ぽつりと言われた。

 残念だけど、私は王妃様直属の冒険者なのだ。それに女性だし。

 長期滞在はできない。

 私の目的のためにも……。



 次の日に飛竜に乗って、王城に帰る。

 引き留めが凄かったけど、なんとか振り切った。

 飛竜に乗って、考える。


「ノアの真似事は、簡単じゃないな……。でも、まだ始めたばかりだ。アウレリアさんとドーラさんもいるし、頑張って行こう」


 ずっと自分の事しか考えずに生きて来たけど、今は充実感がある。

 自己満足な事は理解している。

 でも、とても気分のいい私が、そこにいた。

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