第39話 王妃様からの依頼2

 私は不意打ちで、気体状の魔物を、霰魔法の結界に閉じ込める事に成功した。

 後は、魔力勝負!

 私は、陣内を暴風に変えた。これで、魔物は外部からの魔力供給を受けられない。

 そうしたら、火魔法を連発して来た。爆発系の火魔法だ。ちょっと、面倒だな。

 私は、その火魔法を風竜の剣で迎撃する。

 一進一退の攻防……。だけど、その均衡も直ぐに崩れた。

 魔物が、火魔法を放って来なくなったのだ。


 推測するに、魔力量の限界を悟ったのだと思う。

 結界内の防風を防ぐことに注力し始めたのかな。時間稼ぎ?

 魔力の燃費は、私の方が遥かに悪い。

 暴風を止めたら、霰魔法が苦手とする、火魔法を連発されて陣を破壊されかれない。

 私は、意を決して、魔物に切りかかった。


「真っ二つにはなるけど、ダメージは見て取れないな」


 魔物が二匹になっただけだ。表情は見えないけど、嘲笑が伺える。

 決め手がいない……。

 一時撤退でも良いかもしれないけど、有効打だけは、調べておかないと……。次がない。

 次に私は、風魔法で、切り刻んで、氷魔法で凍らせてみた。

 この時点で、魔力石を大分消耗している。

 だけど、有効打が見つからなかった。


「なにかズレている……?」


 思考を巡らす。

 考えていると、魔物が合体して元の体積に戻った……。

 長時間の分裂はできないんだな……。

 想像力を巡らせる……。長時間、分裂できない意味……。

 核はないという話……。


「あの状態が、一番魔力の消費が少ない?」


 考える……。


「魔力で、体を変質させている?」


 ──キーン


 耳鳴りがした……。これは、霰魔法が発生した時と同じだ。

 風竜の剣が、その形状を変えていた。実体のない剣……、霰の剣に変わっていた。いや、かすみが近いかな?

 ここで、魔物より火魔法が飛んで来た。

 嫌なタイミングを付かれた。もう少し、考察を続けたかったのだけど。

 その火魔法を、形状の変えた風竜の剣で迎撃を行う。

 先ほどまで苦戦していたのが嘘のように、簡単に迎撃してしまった。

 考える……。


「これも魔法剣?」


 無意識に悟ってしまった。私の霰魔法は、その形状をかすみに変えられる?

 ならば!


 私は、全身をかすみに変えた。


「意外に出来るもんなんだな……」


 今の私は、全身を小さな小さな氷……かすみに変えていた。まあ、目の前の魔物と同じ状態だ。

 これは、物理無効もありえるかもしれない。

 でも、魔力消費が多いな……。

 速攻で決める必要がある。


 私は、魔物に飛びかかった。

 風竜の剣が舞うと、魔物の体を侵食して行く……。

 そして、凍らせる。

 今までと違う。凍った部位は、再生できないみたいだ。この魔物は、同条件だと魔法が効くのかな?

 そして、魔物からの火魔法は、陣の防風で防ぐけど、掠った部分は私にもダメージになる……。

 これで、条件は対等だ。いえ、霰魔法の陣がある分、私の方が有利!

 長期戦にならなければ、魔物が先に力尽きるはず。


 魔物が逃げ出した。

 でも、逃げ場なんて何処にもない。私の魔力が尽きない限りこの陣からは逃がさない!

 私は、渾身の一撃を、魔物に振るった。



「はあはあ。ふぅ~」


 足元に、魔力石が転がっている。私の索敵でも魔物の存在は感じなかった。


「なんとか、討伐成功……」


 私は、霰魔法を解除した。

 魔力石を拾って、遠くで見ていた領主の所まで歩く。


「討伐成功だと思います。確認のため、数日滞在させてください」


 私がそう言うと、大歓声が上がった。





 今は、屋敷の応接室を借りている。

 宴会が開かれて、あらん限りの賛辞を受けて……、もうヘトヘトだ。

 でも、寝る前に確認したい事があった。


 まず、霰魔法で陣を敷く。


「咄嗟に、かすみを選んだけど、これって、光魔法の影響よね……。だったら……」


 私は、雪のイメージを構築した。

 陣内に雪が降り注ぐ……。体にも変化があり、私の右手だけだけど、雪に変わってもいる。


「出来るんだ……。この陣内なら環境を変えられる。それも、私の体すらも変えて……」


 ノアの言葉を思い出す。


きり魔法、ゆき魔法……、ひょう魔法……。そして、かすみ魔法」


あられがベースだけど、陣内なら変えられそうだな。『天候魔法』とでも言えそうになって来た」


 私は、魔法を解除してベットに倒れ込んだ。


「……可能性が多すぎて訳分かんなくなって来たな……。姿を消した状態での飛翔だけで、浮かれていた自分が恥ずかしい」


 私は、そのまま眠りに就いた。

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