第38話 王妃様からの依頼1

「討伐依頼ですか?」


 王妃様に呼び出されたと思ったら、意外な話になった。


「はい……。南の地で兵隊を出したのですが、上手く討伐出来ずにいます。応援に行って貰えないでしょうか? 南のファレル伯爵家の領地なのですが、かなり荒されてしまい……」


 良くわからないな。私なんかが行って役に立つの?


「……どんな魔物なのですか?」


「爆発する空気……、ガスと呼ばれる体を持つ魔物です。そうですね、『雲の体』を持ち、火魔法を使うと思ってください」


「ふむ……。物理攻撃は通らずに、魔法戦になるのかな?」


「そうなります。特に風魔法の使い手を探しています」


 断る理由はないかな。霰魔法の実戦もできそうだし。

 それと報酬は、出してくれるのよね?

 でも、王城で好待遇を受けているし、無報酬でも不満は言えないな。

 それとアウレリアさんが、同行しない始めての任務だ。

 

 その後、飛竜に騎乗して移動となった。

 始めは慣れなかったけど、しばらく乗ると言う事を聞いてくれた。

 そして、飛翔魔法のお手本でもある。精霊の目で、魔力の流れを追う……。

 綺麗な魔力操作だった。

 今の私は、それなりに飛べるけど、まだまだなんだな。本職には敵わない。

 魔力石を貰っていて、私の欠点でもあった、魔力量の少なさも、今は改善されてもいる。


「今度は、長距離飛行も試してみたいない……」


「リディア嬢。なにか?」


 もう一匹の飛竜に乗る、案内役の人が質問して来た。


「……後、どれくらいで着きますか?」


「まだまだですよ?」


 あはは……。ズレた質問しちゃったな。





 朝から飛んで、夕暮れ前に国境沿いに着いた。


「南方は、暑いわね……」


「火山地帯でもあるので。温泉が名所にもなっていますよ」


 ふむ……。所々湯気が見える。

 帰りに、お湯に浸かって休んで行ってもいいわよね?

 そんな事を考えていると、眼下に陣地が見えた。


「あそこになります。降りますので、飛竜に任せてくださいね。無理に動かさぬように」


 初めての着地なので、ちょっと怖いかもしれない。

 でも、飛竜は軟着陸してくれた。この子は、できる子だ。

 地面に降りて、飛竜の頬を撫でる。


「王妃様に進言して、私専属の飛竜を貰いたいな……」


「……止めた方がいいかと。飛竜の飼育は、慣れていない者が行うと、被害甚大となりますよ?」


 独り言を聞かれてしまった。


「そ、それじゃあ、生きましょう! 案内をお願いします」


「まずは、ファレル伯爵様と会って貰います。着いて来てください」


 こうして、冒険者ではなく、王妃様直属部隊での生活が始まった。





「あれですか? 色が付いているので見えます。それと、魔力を大気中から吸収していますね……」


 今私は、岩影から、目的の魔物を見ている。


「おお、リディア嬢は、魔力の流れが見えるのか! なんと頼もしい!」


 ファレル伯爵様も余裕がないんだな。

 兵隊達は、半壊状態だし。


『……どうしようかな。このまま奇襲からの風魔法での檻が良さそうだけど。とにかく、魔力供給を絶たないと倒せそうにない』


 観察だけでは、限界があるかもしれないな。


「あの魔物に、核はありますか?」


「多分だが、ないと思われる。始めの頃は、細かく切断して行ったのだが、大気中にどこまでも拡散されてしまった。その後、あの体積にまで戻っている」


 ふむふむ。……相性はいいかもしれないな。


「ちょっと行って来ますね。様子見程度で帰って来ます」


 私は、霰魔法と光魔法を発現させて、ファレル伯爵様達の視界らか消えた。

 そのまま、歩を進めて、魔物に近づく。

 魔物も、私を認識出来ないみたいだ。これで、実用性が示された。

 私は、霰魔法を陣型に変える……。


 魔物と視線が合う。


「さあ、私の領域フィールド内でどこまで持つか。勝負しましょう!」


 私は、風竜の剣を向けた。

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