第37話 光魔法での隠密

「ノアは、リディアに闇魔法を勧めて来たのですね……」


「はい、そうです。私の霰魔法と相性がいいって」


 特訓は一時中断して、闇魔法を覚えようとした経緯を、アウレリアさんに説明する。

 アウレリアさんが、考え出しだ。


 アウレリアさんは、各都市を回って、災害の発生の有無を確認しているらしい。

 今は、飛空艇の整備のために、一度王城に帰って来たのだそうだ。

 忙しそうなんだけど、私の相手なんてしていていいのかな?

 ちなみに、ドーラさんは、帝国に行ったらしい。応援要請が来たので向かったのだそうだ。

 口は悪いけど、根はいい人なんだよな。


 私が考えていると、アウレリアさんの考えが纏まったようだ。


「光魔法を覚えましょうか。初級だけでも使えれば、最恐クラスの技が使えますね」


「はい? 最恐?」


 いきなり、今までと180度反対の意見が出て来た。

 アウレリアさんが、実演してくれる。

 右手で魔法を発現した。


反射リフレクションになります」


「ちょっと待ってください。それは、なんでも反射する魔法ですよね? 物理衝撃や魔法を含めて全部を返す魔法……」


「いえ……。それは、上位魔法の全反射リフレクションですね。初級の反射リフレクションは光のみの反射になります。同じ名前なので、混同していますね」


「光のみ……? 鏡ということですか?」


「……実演しましょうか」


 そう言うと、アウレリアさんが消えた!?

 いや、違う。私の精霊の目は、アウレリアさんを認識している。

 これは……。

 私は、横に移動した。


「分かりますか? 背後の景色を反射と言うか何度も光を屈折させて前方に映し出します。私に当たらない様に、光を背後から正面に通すと、姿を隠すことが出来ます。まあ、移動することは出来ないのですけどね。でも、リディアさんの霰魔法なら……」


 これを、私の霰魔法と組み合わせる……。


「私が覚えれば、移動中も視覚だけは遮断出来る。〈隠密スキル〉に値する魔法になりえる……。音も風魔法で消せるし!」


 アウレリアさんが、満面の笑みを浮かべる。


「姿を消した空中移動は、天災級の魔物が使用した技でした。

 魔法感知はダミーをばら撒かれて、こちらは初手で被害甚大でしたね。ドーラが赤字覚悟の弾幕を張ってくれたので、なんとか撃ち落しましたけど。もしドーラの様な遠隔攻撃のスペシャリストがいなかったら、撤退しかありませんでした。それほど手強い相手となります」


 言わんとしている事は分かる。

 そして……、私の霰魔法との相性から実現できる可能性を考慮して……。


「教えてください!」


 これは……、見えたかもしれない。





 次の日に、アウレリアさんは王城を去ってしまった。やっぱり、忙しいようだ。

 だけど、私は、時間を割いて貰い反射リフレクションを教えて貰った。まずは、複数展開して背後の風景を映し出す。

 ここで、思った。


「一人じゃ確認出来ないじゃない……」


 部屋に移り、鏡の前で再度、反射リフレクションを発動させる。鏡には、私の背後の風景が映るはずなんだけど……。


「簡単な魔法に分類されているけど、難しいな……。まあ、熟練度を上げて行くところからかな」


 それからは、映像となる光の調整を行う。上手く行ったら発動と停止を繰り返す。

 毎日、朝から晩まで部屋で反射リフレクションを繰り返す。

 解っている。多分これが、私の霰魔法を最大限に生かす方法だと思う。

 っと言うか、これしかない!


 毎日、魔力切れになるまで繰り返した。





 今日は、久々に外に出て、剣の素振りを行う。ちょっと、体が鈍った感じがする。部屋に籠り過ぎたかな。

 体力も落ちていそうだし、勘も鈍っているかもしれない。小銭稼ぎになるけど、ちょっと討伐系のクエストを受けたい気分だ。

 でもまずは、魔法からだ。私は霰魔法を起動しながら、飛翔上昇する。

 少し移動して、池の上空へ辿り着いた。

 そして、反射リフレクション発動!


「あはは……」


 水面に私は映っていない。全方向……、上下前後左右から私は見えていないはずだ。

 これで、一つの完成形が見えた。


「後は、ドーラさんみたいな、遠隔魔法を覚えれば……。

 私は剣士アタッカーを止めて、狩人ハンターが合っているのかもしれないな。

 まてまて! 考え方が単純すぎる。相手に察知されずに近づけるんだ。一撃で急所を刺す方が私には合っているかも……」



 この時の私は、未来の自分の姿を思い浮かべて浮かれていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る