第32話 魔物の氾濫2
「皆の者~! 腹は満たされたか~!」
「おお~~!」
アウレリアさんが、冒険者と城の兵士達を鼓舞する。
アウレリアさんに応じると、なにかしらのバフ効果が付与されるのが見て取れる。
「あの人数に、バフをかけるのは、凄いですね」
「ああ。人族の中でもアウレリアくらいじゃないか? 他にできるとしたら、英雄や勇者、魔王とかか? 他種族は知らんがね」
絶句してしまう。
アウレリアさんは、思った以上に優秀な人だったようだ。
「巨兵や、レベルの高い魔物は、ドーラが事前に倒してくれているぞ!
小規模な
「おお~~~!」
「素材は取り放題だぞ! 素材を集めて一財産築けるぞ~!」
「おお~~~~!!」
アウレリアさんに鼓舞されている人達が、狂気に飲まれている気がする。
「あれ……、大丈夫ですか?」
「ああ。明日はバフ効果が切れて、デバフ効果が発動するようにしてある。強くなったと勘違いする馬鹿も多くてね。デバフの内容は……、筋肉痛だから、まあ、心配しなくていい。
それよりも、私は一番高い建物に移動して、狙撃で援護する。
リディアは、何処に行く?」
「私も、ドーラさんと同じ場所に。それと、街の防衛を頼まれたので、飛翔しながら迎撃を行います」
昨日貰った、魔力石を握り締める。
「リディアは飛べるんだね。羨ましいよ……」
いやいや、S級冒険者に羨ましがられても……。それに、魔導具を使って飛んでいるんだし。
ドーラさんくらいならば、買えるんじゃないのかな?
その後、アウレリアさんに合図を送って、二人で移動した。
◇
「ふぅ~」
大きく息を吐き出す。
今私は、霰魔法を発動させて、上空から眺めている。
下には、この街で一番高い建物にいるドーラさん。
アウレリアさんは、城門の前で待機中だ。
魔力石を握り締めて、霰魔法の範囲を広げて行く。
私の、
魔力量が平均的な私でも、魔力石を使えば、大規模魔法も発動出来るんだ……。こんな方法もあったんだな。
ズルなのかもしれないけど、今は自分の役目を果たそうと思う。
私の生み出した氷が、街を包み込んだ。街よりも広がり、魔物の位置まで包み込む。
氷の密度は薄いけど、この領域内であれば、私は全てを感知できる。〈スキル:索敵〉に近い使い方だ。
手を上げて、アウレリアさんに合図を送る。
アウレリアさんが、撃って出た。
「一方的だな~」
アウレリアさんに率いられた一団が、魔物を屠って行く。
この街の冒険者のレベルは、高いのかもしれない。
「危なそうなのはいないかい?」
ドーラさんからの質問だ。
「今は見当たりませんね。それと、地面を掘っている魔物がいました。城壁の真下まで来ています。狩って来ますね」
「待ちな。何処だい?」
私は、北西の城壁を指差した。
──ドン
ドーラさんが、銃を撃った。そして、地中に潜っていた魔物に命中する……。
「見えていたんですか?」
「見えてはいないよ。ただ、僅かだけど土煙が上がっていたね。
教えておくと、私の目は、風の流れとわずかな未来が見えるだけさ。
まあ、狙撃には最適なんだけど、見たくないものも見えちまう事がある」
「その目をノアに?」
「そういうこと。高すぎる性能に苦労させられているよ。それよりも、レベルの高い魔物はいないかい? アウレリアがいると言っても、魔物相手の白兵戦では死者が出かねない」
アウレリアさんを見る。冒険者達が密集陣形を取って、次々に魔物を狩っている。
突出する者はいない。
同じ指揮官でも、ゲラシウスとは雲泥の差だ。
「!?」
ここで私の氷がなにかを感知した。
私は、北東を指差した。
「大きなムカデに乗っている、人型のなにか……。あれは、なんだろう?」
「ちっ!」
──ドン
ドーラさんの2発目が放たれた。だけど、ムカデが吹き飛んだだけで、人型のなにかは、平然と立っていた。
当たったと思うんだけど……。
見ていると、笑ったのが分かった。
「リディア。他はいい、あれの足止めをしてくれ!」
「分かりました!」
私は、北東に向けて、移動を開始した。霰魔法も収束させる。
私の勘も警鐘を鳴らしている。いや、精霊の目が、まがまがしい魔力を見せてくれて、精霊の耳が、その膂力を教えてくれた。
「あれは、危ないな……」
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