第31話 魔物の氾濫1
辺境都市の第四都市パライカに降り立つと、飛空艇に街の人達が群がって来た。なんだろう?
「支援物資をお持ちました。まず、炊き出しから始めてください!」
アウレリアさんがそう言うと、大歓声が上がった。
アウレリアさんは、役人みたいな人に囲まれて、次々に握手している。あれは……、手を握りたいだけじゃないのかな?
セクハラにならないんだろうか?
アウレリアさんを見ると、一人ひとり丁寧に挨拶している。
「S級冒険者という立場……、しかもとびきりの美人ともなると大変なんだな」
「ちっ! 私には手も握って来ないってのによ! スケベ野郎共が……」
声を拾った。その場所に行く。
その人物は、1メートルくらいの鉄の筒……、銃を持っていた。
『あんな大きな、銃は見たことないんだけど……。どうやって使うんだろう?』
その人物も、私の視線に気が付いたようだ。
「あんた、だれ? 私になんの用?」
「え~と、お妃様の『探し人』に最近まで指導を受けていました。リディ……」
全部言い終わる前に、額に銃口を当てられた!?
慌てて躱すと、背後から、爆発音が聞こえたんだけど?
すぐさま、霰魔法を起動。剣を抜き、構える。
『2射目が来る前に、制圧しないと!』
数秒の対峙……。
『隙がないじゃない……。わずかでも動いたら、撃たれてしまうのが分かる』
現状、圧倒的に不利だ。
そんな事を考えていた時だった。
「ちょっと!? ドーラさん! なにしてるんですか!?」
アウレリアさんが、駆けつけてくれた。
先ほどの爆発音を聞いて、駆けつけてくれたんだろう。
それと……。私達の周囲には誰もいなくなっていた。
◇
「ごほん。では、改めて紹介しますね。私の姉弟子に当たる、ドーラさんです」
「リディアです。よろしくお願いします」
「……」
無言って……。
第一印象が決まった。感じ悪い……。
「えーと、ドーラさんもS級冒険者になります。視力を失っていた時に、ノアに『鷹の目』を与えて貰い、銃を手にしてからというもの、厄災級の魔物を狩り続けています」
「ドーラ・セーガンさん……」
「……なんだ、知ってるんだ」
そりゃ、S級冒険者は有名ですもの。当然聞いたことくらいありますよ。
一代で、伯爵位まで受けている、冒険者の憧れ。その、目指すべき姿……だったんだけど。
イメージが崩れたな。
「それで、今はノアと名乗ってんだね。捕まえられた?」
「……逃げられました」
ドーラさんが、ため息を吐く。
「はぁ~。私の視界に入れば、撃ち抜いてやるのにな……」
怖すぎない、この人?
そして、ドーラさんが、私の顔を覗き込んで来た。
「……あんたも目を貰ったみたいだね。リディアだったね。話を聞かせて貰うよ」
そう言って、ドーラさんが建物の中に入って行った。
私と、アウレリアさんが後に続く。
後ろを振り返ると、街の人達が料理の準備を始めていた。
◇
「……なるほどね。怪我を治して貰って、装備を受け取ったと。それと、B級冒険者に上がりたてか。
正直、お妃様の『想い人』を探すには、荷が重いんじゃないかい?」
アウレリアさんが反論する。
「私が、邪魔をしてしまいましたから、S級冒険者になるまでは、面倒を見ます」
「そこがスタートラインだけど、その先がありそうなの?」
「……素質は十分かと。ノアが認めた相手ですし」
緊張してしまう。各国に名を轟かせているS級冒険者が私の話をしている……。
「まあ、任せるよ。それよりも、
「不在の間、そこまでしてくれたのですね。ありがとうございます」
「何度も言うが、礼は不要だよ。……ノアを探しているのは、私も同じだからね」
ドーラさんも、ノアに会いたいんだな。
「それと、また妹弟子を増やしているし。いい加減に捕まえないと、あいつの毒牙にかかる奴が際限なく増えてくしね」
……毒牙って。まあ、ノアには魔性とも言える魅力があったけど。
「それでは、具体的な迎撃について、詰めて行きましょう」
この、
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