第30話 風竜の剣
王城に来てから、霞魔法の特訓を行って数日。
連絡が来た。
「もう剣ができ上ったんですか?」
「最優先で作って貰ったので。武器職人も"国宝級の一品"と自慢げでした」
え? 国宝級?
そんなのを私が受け取るの?
「風竜の角を加工した剣になります。もう凄い以外の言葉が出ませんよ?」
それは、そうなると思ったのだけど。こんな短期間で整形したと言うの?
その後、簡易的な式典が行われた。
剣の授与と、王妃様の親衛隊への入隊を兼ねた式典だ。
忠誠を誓う言葉を述べる。王妃様が、剣で私の肩に触れた。
これで私も、『騎士』と名乗ることができる。
そして、風竜の剣の説明を受けた。竜の角を削り出し、剣の柄に、氷魔法の効果を増幅させる宝石を埋め込んだらしい。ただし、異なる属性が干渉しない様に、工夫も凝らしてあるとか。
「それでは、登録を行います。盗難防止と考えてください」
言われるがまま指先を切り、剣の柄の宝石に血を垂らすと、少し光った。
「これで、風竜の剣は、リディア嬢のみしか使えなくなりました」
宮廷錬金術師が、賛辞を送って来た。
歓声と拍手が起きる。
専用装備ということだろう。この技術もノアが残したものなんだな。まあ、ノアは血を垂らしたりはしなかったけど。
そして、私に一つの欲求が生れた。
「ノアから貰ったこの剣も、私の専用装備にして貰えませんか?」
驚く、宮廷錬金術師。
「リディア嬢は、二刀流で行かれるのかな? 腰の短剣も見えますが……」
「いえ、剣は二本装備しますが、同時には使いません。風竜の剣の方が、私に合ってはいますが、使い分けて行きたいと思います」
宮廷錬金術師は、私の言葉には納得してくれなかったけど、ノアから貰った『折れにくい剣』にも、私以外が使えない機能を付与してくれた。二本の剣を抱きしめる。
これから、私の冒険者生活が終わるまで、私の命を預けるに相応しい相棒ができた瞬間だった。
◇
その後、別室に移動する。
晩餐会とか社交界が開かれると思ったのだけど、なんだろう?
「飛空艇の準備ができました。これからリディアにはアウレリアに付いて行き、討伐に協力して貰います」
なんか、王妃様は真剣だな。
まあ、私も親衛隊に入ったのだし、従うんだけど……。
「行くのはかまわないのですが、状況を説明して貰えますか?」
「
それと、この言葉で分かる。王妃様は、国の防衛に関わっているんだな。いや、指揮を執っているのかもしれない。
そうなると、国王様は内政だけかもしれないな。
「初任務ですね。行かせて貰います」
私がそう言うと、王妃様は笑顔を見せた。
「正直、魔物の活性時期に入ってしまい、各地で防衛戦を展開しています。
アウレリアに頑張って貰っているのですが、それでも間に合っていません。どうか力を貸してください」
「もちろんです。微力ですが、お力添えをします」
こうして、私の初の任務が決まった。
「飛空艇の整備は終わったんですね」
「今は、物資の積み込みを行っています。籠城戦を行っているので、救援物資ですね。
それと、姉弟子がいます。怒らせない様に注意してください」
ん? 姉弟子?
「どんな人ですか?」
「……会えば分かります」
言葉を濁らされた。まあ、会ってみよう。
ここで、整備員が話しかけて来た。
「アウレリア嬢。準備が整いました。出発できます!」
「毎回ありがとうございます。幻想級の金属が手に入れば、整備の時間も短縮できるのですが、毎回手間をおかけします」
「いえ、これが俺達の仕事なので」
信頼関係は、築けているんだな。
「さて、行きましょうか」
私は風竜の剣を握り締めて、頷いた。
そして飛空艇に乗り込む。
向かうのは、第四都市パライカだ。
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