第29話 王都2
その後、情報交換をしていると、ドアが開いた。
豪華な服を着た男の子が入って来る。多分、10歳くらいだと思う。
誰だろう?
「僕は、レナードと言います。美しいお嬢さん、お見知り置きを……」
そう言って、私の前で片膝をついて、私の手を取って来た?
なにこれ? プロポーズ?
赤面しているのを自覚する。
「こら、レナード。……見境なくそういう行動を取るべきでないと、何度も言ったではありませんか。
連邦のお姫様の件、忘れたとは言わせませんからね」
ん? 見境なく?
視線を戻す。
真剣な眼差しだ……。
とりあえず、挨拶を返そう。
「私は、リディアです。貴族位は捨てたので、ただのリディアです」
「そうですか、リディア嬢。これからよろしくお願いします」
そう言って、私の手の甲にキスをして来た。
なんなのこれ?
それとこれから?
「ゴホン。レナード王太子さま。お戯れも大概にしてください。大事なお客人なのですよ」
アウレリアさんが、制止してくれる。
「なればこそです。アウレリア嬢が連れて来たと言う事は、実力者なのでしょう? お近づきになって損なことなどなにもありませんよね?」
え……? 王太子って……、次期国王陛下?
ここで、王妃様が手を上げると、メイド達がレナード様を部屋から連れ出した。
なんだったんだろう?
「ごめんなさいね。リディアさん。もうあの歳で異性に興味を持ってしまって……。正直困っているのです。
帝国のお姫様を勘違いさせた時など、泣かれてしまい、皇帝陛下が怒って戦争の一歩手前まで行きました。謝罪を受け入れて貰えたので、事なきを得たのですけど。
それと、連邦の晩餐会に参加した時などは……」
……この国の将来が心配だ。
そういえば、現在の国王陛下も女性問題が絶えなかったと聞いたことがあったな。この王妃様が、最終的に他を圧倒して正妻の座に着いたとか。その後、国王陛下を御しているとか。
そう言えば、私が生れてからは、王家のスキャンダルは聞いたことがなかったな。
目の前の王妃様の存在が大きいんだろう。
もしくは、ノアが関係しているのかもしれない。王妃様は、ノアと関わっているのだから魔導具とか貰っている可能性がある。
そうなると……。
私は、少し怖い想像をした。
◇
その後、王妃様の客人として迎え入れられた。
個室も用意して貰う。
第三都市カシアナに置いて来た私物も、回収して王都に運んでくれるのだそうだ。
「なんなんだろう……、この待遇の良さ。ちょっと怖いかな」
ノアの事でなにかを期待されているのだと思う。
だけど、私もノアと再開する術は持っていないんだ。
それでも、なにかを期待されている?
それと、風竜の素材だ。
職人と相談したんだけど、剣のみの作成をお願いした。角を削り出して剣にするらしい。鱗から軽鎧を作って貰っても良かったんだけど、装備し過ぎると私の霰魔法と干渉し出すということが分かった。
竜種の素材は、一つの属性を強めるみたいで私みたいに複数の属性を扱う者は、数を限定した方がいいと言われたのだ。
実際に、角とか牙とかを持つと、風魔法が暴れ出し、氷魔法の威力が弱まった。
「……これ、私では扱えそうにないですね」
そう言ったんだけど……。
「そこはお任せください。リディア様に合わせて調整してみせます!」
流石に王家ご用達の武器職人だなと思えた。
そこまで言われたら作って貰うしかないよね。
そういう訳で、他は献上となった。
武器職人と防具職人の目の色が変わったのが、印象的だったな……。
肉とか骨は、競売にかけられるんだろう。
翼は、飛べるマントに変わるのかな? まあ、私は持っているので必要ないんだけど。
ノアが狩った素材だけど、有効活用されることを祈ろう。
それと、王妃様の資金になると言っていた。
王妃様は、もしかすると私兵を持っているのかな?
そう考えればアウレリアさんが言っていた、『捜索隊』の話に繋がる。
「まだまだ、情報不足だな」
いや、それよりも、実力不足か。
まだ私は、B級冒険者なのだし。
「とりあえず、ノアに教わった技術の習得を目指そう」
私の最終的な目標は、ノアとの再会だ。
でも、その前に実力を付けないとね。
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