第25話 追手2
◆以下、ノアの手紙
親愛なるリディアへ
突然、消える事を許してください。
ちょっと、目立ち過ぎたみたい。見つかってしまったみたいだ。
昔の友人が僕を探していてね。捕まると面倒なので、移動を繰り返してるんだ。
竜種の売却は、やっぱり問題があったみたい。
実は、欲しい部位は回収したんだけど、残りを捨てる訳にもいかなかったので、売却に出して、第三都市カシアナからはすぐに消えるつもりだったんだ。
でも、リディアを見つけてしまった。
前に、『まだ蕾すら付けていない花に、咲いて欲しい』と言ったね。この数日で、もう咲き始めている君をもう少し愛でていたかったけど、もう僕は必要ないとも思えたので、教えるのはここまでと判断しました。
お詫びと言ってはなんだけど、風竜の素材で武器防具を作ってください。譲渡依頼の手紙は出しておきました。
風竜の骨で剣を作れば、リディアならさらに上を目指せると思う。それほど親和性の高い素材だったので、卒業祝いに僕が製作を予定してたんだけど……。文句は、僕を追って来た人に言ってね。
多分、リディアにはS級冒険者が訪ねて来ると思う。
話さなくても、分って貰えると思うので、手紙だけ残して行きます。もしくは、その人に師事してください。きっと、霰魔法の先を示してくれると思います。
本当に短くなってごめんね。許してください。
許されない場合は……、君も僕を探すのかな?
リディアには、見つかってしまいそうだね。その魔力感知の高さと精霊の目を駆使されると僕でも逃げきれないかもしれない。
その時は、お手柔らかにね。
短い期間だったけど、君の教師のノアより
追伸
次に会う時には、S級冒険者の称号を得ていると思う。もしくは、国一番の剣士かな?
この世界のどこかで、見守っています。
◇
「……あんのバカ野郎! 私を連れてきなさいよ!!」
私の絶叫に、3人が驚いた。
「ゴホン……」
咳払いをした。とりあえず、落ち着こう。
「アウレリアさんは、ノアとどういう関係なんですか?」
「昔、教えを請いました」
「手紙には、『捕まると面倒』とありました。仮に捕まえたとして何をするんですか?」
「それは、私の依頼主に聞いて欲しい内容ですね。でも私は……、逃げられない様に一生拘束するかもしれません」
うわ~、怖い事を言い出したぞ……。
でも、気持ちは分からなくはないかな。ノアには、そういう魅力があるかもしれない。
数日だったけど、私も虜にされているのかもしれないな。
ミラがここで、袋をテーブルに置いた。
多分、硬貨の入った袋だと思う。
「これは?」
「話の腰を折ってしまって申し訳ないのですが、先日のギルド襲撃事件が解決しましたのでその報酬です。これも、リディアさんへ譲渡するように手紙が残されていました」
あれか……。街中で魔法士達に襲われたのよね。
今日はS級冒険者がいるんだし、助けて貰おうか。
「この街で、不穏な活動を行っている集団がいるみたいだけど、どうしますか?」
「ああ、その人達は、昨日衛兵に捕まっていますね。多分ですけど、全員」
「え!?」
「……ノアが、最後に掃除をしてくれたのでしょう。魔法で怪我をした者も治療されていたと聞いています。
それと……、怖い思いをしたらしく、全員口が軽くなっているそうです。移動を繰り返している、盗賊団でした。旅団と名乗っていましたが、規模は小さかったですね」
ここで、誰かがお店に入って来た。
「オースティンさん?」
オースティンさんは、わき目も振らずに、アウレリアさんに歩み寄って行く。
そして、片膝をつき、彼女の手を取った。
「アウレリア嬢……。取り調べは全て終わりました。俺と一緒に、冒険者ギルドに来て欲しい」
……真剣な眼差しで、アウレリアさんを見る、オースティンさん。
アウレリアさんが、眼で合図をして来た。
『……アウレリアさんは、異性の扱いが慣れているんだな。オースティンさんには悪いけど、釣り合ってないし。はたから見ると脈なしなんだけどな』
ミラとメグを見ると、嬉しそうに見ている。
そのにやにや顔を止めなさいよ。
後で、オースティンさんを慰めるのは、あんた達になるよ?
下世話だと思うし、どう考えても脈がなさそうなんだけどな……。
「今日は、ここまでとしましょう。明日、同じ時間にメグのお店に集合で」
「「「了解!」」」
こうして、解散になった。
私は、宿屋に帰って来た。
ノアの手紙を再度読む……。
「みてなさい……。すぐに、S級冒険者になってやるんだから」
私に、新しい目標ができた瞬間だった。
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