第20話 街の異変2

 私は剣を抜いて、突撃した。

 対人戦闘は、初めてだけど、ここは、大通りから一歩入っただけの場所なんだ。

 すぐに誰か駆けつけてくれると思う。


 ──キン


 気持ちいい音がして、一人目の剣を切り裂いた。ノアに貰った剣と私の風魔法を組み合わせれば、普通の剣など、造作もなく壊せるのだ。そいつにケリを入れて、吹き飛ばす。大きな音を立てながら、転がって行く。


「二人目!」


 私は、剣を横薙ぎに振った。


「!?」


 炎の壁が、私の剣を止めた。

 魔力障壁だ。まずい、私の剣術とは相性が悪い。剣筋をズラされてしまうので、刃が通らない。

 すぐさま距離を取ろうとしたら、背後にもう一人が迫っている事が分かった。

 慌てて、飛翔する。


「上空から狙い打ってやる……」


 だけど、私の狙いも読まれていたみたいだ。


「高度が取れない?」


 空気の壁が、邪魔をするようで、上手く飛べなかった。風魔法?

 これでは、いい的になる。

 私は、地上に降りて、剣を構えた。

 だけど、次の瞬間に、足を切られる。


「痛っ!?」


 パリパリと放電している。雷魔法だと思う。見えなかったので、死角からの攻撃だと思う。音も拾えなかった。

 こいつら、魔法士の集団?

 それにしても、これだけ大きな音を出しているのに誰も来ない……。明らかに不自然だ。

 目の前の男達が笑う。


「お嬢ちゃん。自分の事は調べられていると考えた方がいい。上がりたての、B級冒険者など足元を掬われてから、一人前になるものだよ。そこで、再起不能になる奴も多いけどな」


 ……私の事は、調べられている? 理由は?

 周囲を見渡す……。風魔法で見えないバリアが張られている感じがする。これで、私の飛翔を防いで、防音効果も兼ねているんだと思う。それと、私と相性の悪い火魔法の使い手が盾役で、雷魔法で攻撃して来る……。

 先ほど蹴り飛ばした、風魔法使いが起き上がって来た。


『……まずい。3対1じゃ、逃げられないかも』


 冷汗が、頬を伝わる……。

 浮かれていたのかもしれない。手がない。追い詰められている……。


「なに、殺しはしない。魔力石と交換で開放するので、大人しく着いて来てくれると助かるんだがね」


 ……相手側からの譲歩案。

 魔力石は、ノアが持っている。

 ノアなら……。

 悪い考えを振り払う。

 ここは、一人で解決しないと、冒険者としての私に先はない。


 私の剣術と風魔法の対策がされているんなら……。

 私は、氷魔法を発動した。





「はあはあ……」


 どれくらいの時間が経ったんだろう。実際には、数分くらいだと思う。

 私は、あまり得意ではない氷魔法で迎撃を行っていた。

 風のバリアは、氷魔法なら削れる。でも、火魔法にはとても弱い。

 移動を繰り返して、表通りからどんどん離れて行くけど、止まったら雷魔法の追撃が来る。

 私の狙いは、隙を見つけての飛翔だ。

 だけど、襲撃して来る魔法士の3人は、纏わりつくように私を追い詰めて行く。


「このままじゃ、追い詰められて終わりだ……」


 風魔法による妨害と、火魔法に用る防御。そして、雷魔法の不意打ち。

 逃避と防衛だけで精一杯だ。怪我したら、即詰みになる。

 裏路地には、不思議なほど人影がない。これも、なにかしらの魔法だと思う。助けは期待できないな。


「……」


 私は覚悟を決めた。

 時間を稼いでも、無意味だ。

 それならば、一瞬で全魔力を使った方がいい。


「まだ、練習中だけど!」


 私は、風魔法と氷魔法を同時に起動させた。

 ここで、雷魔法の追撃が来た。

 私は、両手で剣を握り、その一撃を受け流す。


「ぐ……。重い」


 属性の相性もあるのかもしれないけど、三人共相当な使い手だ。正面から受け止めたら、腕が折れてしまう程の魔法だった。


「一撃で決めないと……」


 私は、緊張していた。それよりも……、集中していた。


 ──キーン


 耳鳴りがした……。なんだろう……、この感じ。

 気が付くと、私の周りに氷が浮いているのが見えた。いえ、私に氷が纏わりついている?

 月明りに照らされて、淡く光ってもいる。


「なに、これ……」


 自分で発現した魔法だけど、意味が分からない。

 思考が停止してしまった。

 その隙を、狙われた。火と雷が私を襲う。

 だけど、私には届かなかった。


 火と雷の一撃を、私の纏っている氷が止めたのだ。


「なんだ、なにをしている?」



 そうか……、これが、混合魔法。これが、私の本当の属性なんだ。

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