第17話 実践訓練

 今私は、飛翔しながら魔物を探していた。

 今日はノアも飛んでいる。二人で、飛翔しているのだ。


「……見つけた。3匹!」


 私は、魔力を溜めて、風魔法を発動させる。

 真空の刃が、魔物達を切断した。


「お見事!」


 ノアが賞賛を送ってくれる。

 正直、にやけてしまう。


 ノアが地上に降り立ち、魔物に触ると、魔物が消えて決まった。

 そして、また飛び上がり私のところに戻って来る。


「……魔物を回収したのよね? どこに持っているの?」


「空間収納だよ。亜空間を作成してその中にしまう技能スキルの一種だね。魔法で作り出した人もいるけど、冒険者ならマジックバッグが普通かな?」


 良く分らないけど、便利な技能スキルを持っているのは分かったわ。

 私も覚えられるかもしれないし、今度教えて貰おう。


「それとだけど、攻撃方法が良くないね」


「風魔法の飛ぶ斬撃が、悪いの?」


「う~ん。防御型や盾役には、効かないかな。リディアの場合は、近接戦闘で盾を切り裂く方が合っていると思う」


「……私は、近接アタッカーが向いているのね」


「単純にそうとも言えない。ここまで自由に飛べるのだし……。飛翔を生かした剣士……かな?」


 ノアは、なにが言いたいのだろう?

 イメージがわかないんだけど?


「まあ、今日は討伐数を稼ごう。この数日の特訓の成果を確認したい」


「目標数は?」


「100体だと、狩り過ぎかな。生態系に影響が出るね。50体にしようか。それと魔力石を渡しておくね。魔力切れに注意してね。即死しかねないので」


「了解!」


 普通に返事しているけど、ありえない数字だ。

 怪我をする前の私は、3体が限度だったんだけどな……。

 でも今は、できると思えてしまう。

 確信がある。


『私は、成長できている……』


 その後、街から離れた森の中で、狩りを行った。





「あれ……、変な魔力。それと、大きいし重い足音がする」


 順調に討伐数を稼いでいた時だった。私の眼と耳が反応した。

 森の中で、変な個体を見つけたのだ。ノアが見たいと言う事なので、二人で降りて近づく。

 魔物は、私達を視認すると威嚇して来た。無警戒すぎたかな?

 視線が合うと、襲って来たので、まず前足を切り裂く。次にカウンターで、後ろ足を凍らせた。

 最後は、倒れるように噛みついて来たので、頭から剣を振り下す。


「この熊、見たことないわね。赤色熊クリムゾンベア?」


「ちょっと、変異しているね。リディアが真っ二つにしちゃったので、素材の価値も半分かな。肉は……、分からないや。食べられるのかな?」


「素材って、何に使うの?」


「見た目が悪くなるけど、毛皮は〈斬撃耐性〉があるんだ。それと、防寒具にもなる。北方の寒い土地に持って行けば、高値で売れるよ?」


 目の前の熊を見る。切り刻んでしまっていた。

 首を刎ねればよかったかな……。

 でも、〈斬撃耐性〉があったようには見えなかったな。

 すんなりと、刃が入ってしまったのだ。

 この剣が凄いのか、私の風魔法が急激に成長しているのか……。


「リディアは、魔力感知に優れているね」


 突然、ノアに言われた。顔を上げる。


「え……、そうなの? バレッタを着けてから、感覚が鋭くなった気はするけど……」


「うん、潜在能力的に優れていたんだよ。斥候スカウトか、狩人ハンターも熟せそうだね。魔法士の素質もあるにはあるし」


 考えもしなかったな。ずっとソロだったから、剣士アタッカーしか頭になかった。

 そっか、私の風魔法を使えば、別な道もありえたんだ。

 右腕を怪我したけど、足で情報を得る。弓や弩で仕留める……。

 当たり前過ぎることに気が付いていなかったのか。


「それと、氷魔法だね。攻撃よりも防御だよ? カウンターを狙うとかね」


 ……それは、分っていたけど。父親のスタイルは真似たくなかった。

 それと、妹の大規模魔力を見たら……、同じ戦法は取れないじゃない。


「……氷魔法の訓練はしないの?」


「そうだね。風魔法はかなりいいところまで来てるから、次は氷魔法も見てみようか。でも、幼少期より訓練してるんだよね? 考え方次第かもしれないね」


 何時もながら、ノアがなにを言っているのか分からない。

 私の氷魔法は、実用に乏しくて使わない事に決めたのに。

 さっきの、赤色熊クリムゾンベアだって、数秒足止めするのが限界だったのよ?

 風魔法は、当たれば切断できるんだけど、氷魔法には殺傷力が乏しいと感じていた。でも、考え方次第?


「…………!?」


「リディア……」


「うん!」


 ここで、なにかが近づいて来た。明らかに威圧感が違う。

 ノアが構える。

 私は、飛翔して上空から迎撃態勢を取った。

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