第10話 事後処理2
「さて……、説明して貰おうかの」
今私とノアは、冒険者ギルドの応接室で説明を求められていた。
ココと、街一番の実力者であるA級冒険者の人もいる。オースティンさんだそうだ。私とは、接点がなかったのよね。
「まず、私なのですけど、街道を歩いていたら、魔物に追われているノアに出会いました。
その後に、怪我を治療して貰って魔物の撃退に成功しています。
そうしたら、『餓狼の爪』が現れて、……襲われました」
ギルド長と、オースティンさんの表情が曇る。
「多々疑問があるが、一つずつ行こうかの。
まず、ゲラシウス達に襲われたんじゃな?」
「『魔物集め角笛』を使い、パーティーメンバーを置き去りにした……。ギルドに報告すると言ったら、取り囲んできました。そして、ノアを殺害するように強要されました。明らかに口封じに来たと思います」
この後、ゲラシウスはしらを切るだろうけど、元パーティーメンバーは、ノアの処置で全員命取り止めたのだ。裏は取れると思う。
それと少なくとも、私を殺そうとした事だけでも重罪だ。
「……ふむ。承知した。ゲラシウス達の冒険者ライセンスを剥奪して労役を課そうかの。いや、罪が重すぎるので王都に問い合わせるか」
意外だな……。ギルド長は、これまでゲラシウスの行動を咎めはしたけど、厳重注意までだったのに。
オースティンさんを見ると、渋い表情だ。
「実のところ、この街は冒険者不足でな。『餓狼の爪』を使わざるおえなかったんじゃよ。
じゃが、10人以上の死者を出そうとしたとなると、もはや庇い立てできんよ」
ここで、オースティンさんが口を開いた。
「怪我をして活動できなくなった冒険者の受け皿をどうするか……。
考えていたのだがね。結論が出ないまま先延ばしにしていたら、今日の事態が起きてしまった。
この街のまとめ役を任されていると言うのに、本当に申し訳ない」
オースティンさんが、頭を下げて来た。
「やめてください! 私には、直接の被害はなかったのだし」
両手をブンブンと振る。
「いや、君も怪我を負って著しく活動を制限されていたと聞いた。その事も含めて謝罪したい」
そう言われてもな……。冒険者は自己責任なのだ。あの時の依頼を受けると決めたのは私なんだし。謝罪を受け入れる理由もないけど、私から反論はできないな。
ここでノアが、割って入る。
「僕からの報告をしますね。まず、角笛を聞いたのでその場所に向かいました。
そうしたら、崖の上に冒険者が陣取っていて、遠隔攻撃で魔物を倒している現場に遭遇しました。
危なそうだったので見ていたら、魔狐が崖を駆け上がり、防衛陣は崩壊。
他の魔物も崖を登り始めたので、スキルの【挑発】を使い魔物を全部引き連れて、その場を離れました。
それでですね。大規模魔法を使える場所を探していたら、リディアと遭遇してしまい、結界石を使って考える事にしました」
「結界石じゃと?」
ギルド長と、オースティンさんが驚く。
二人は知っているのかな?
「結界石って、昨日使った魔導具?」
ノアに聞いてみると頷いた。
「
言葉が出ない。多分、私の一年分の稼ぎ以上の価値がある魔道具だ。
「低ランク品でも、金貨十枚はするのじゃろう?」
訂正。私の十年分の稼ぎ以上の価値がある魔道具の様だ。
「金貨十枚……の価値が分からないかな。各国の貨幣は持ち切れないほど貰っているのでね」
嫌味かよ、おい!
ジト目で、ノアを見る。
「まあ、僕が作った魔導具だから、実質は材料費だけかな」
ノア以外の3人が驚いた。
「えっ? 作ったって? ノアは魔導具製作の知識もあるの?」
「そんなに不思議な事かな? リディアの剣や靴なんかも僕が製作した物だよ?」
今度は、冷汗が出て来た。
今装備している武器防具は、金貨数百枚の価値があるかもしれない……。
なにも考えずに使っていた。
そうだった。ノアが貸してくれた武器防具には、付与効果があるのだった。
『後から支払いを請求されたらどうしよう……』
怖い未来を想像する。
そうすると、ノアが私の顔を覗き込んで来た。
「うわ!?」
「大丈夫? 顔色悪いよ?」
「だ、大丈夫よ! さあ、話を続けましょう。どこまで話したんだっけ?」
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