猫の心情②
せっしゃ、猫の寅一と申す。
寅に一と書いて《トライチ》と読むべし。せっしゃ兄妹猫の兄に生まれて7か月、譲渡会で貰われ、この家屋に住まうことになった身である。
せっしゃ人間にはなかなか慣れぬ、人間の口からはけたたましい騒音と嘘しか出てこぬのだ。うるさいだけならこちらも渋々承知できるが、汚らしい手を毛ずくろいの後に近づけてくる事にはどうにも耐えられぬ。人間は礼儀というものを知らない。だからせっしゃが汚らしい人間の手にわざわざ制裁を加えてやると、慌てた様子でこちらから去ってゆく。後々人間の手を見ると、肌荒れに混じって血痕がある傷跡が見える。これがせっしゃが加える制裁だ。これをすると2,3日寄ってくることは無くなる。
だが、4日目の早朝になるとまた汚らしい手をこちらに近づけて来ることには、誠の鬱陶しさを感じる。猫は学習能力が低いらしいが、本当だろうか。せっしゃには到底嘘のように思える。人間は猫より学習能力が低いはずだ。こればかりは譲ることが出来ないように思う。
また、せっしゃの飼い主だという子供はなぜかせっしゃらが居るときだけ妙に甲高い声で言葉を発する。そのキーキーとうるさい声で話されると体のあちこちがひしひしと痛くなってくるため、せっしゃがたまらず悲鳴を上げるとより癪に障る声で言葉を発してくる。本当に人間はどうかしている、と改めて思えてくるため、人間とは極力関わりたくない。
もう散々である。
ネコの夜 酸性雨 @sanseiu
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