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昔々、とある町にラヴィーナという名の女の子がおりました。
ラヴィーナはとても体が弱く、家から出ることができませんでした。
いつも部屋の窓から、街角ではしゃぐ子供の姿を眺めては、ため息をついているラヴィーナを不憫に思った父親は、せめてもの慰みにと、小さなぬいぐるみを贈りました。
喜んだラヴィーナは、そのぬいぐるみに名前をつけ、肌身離さず連れ歩きました。ご飯の席にも、勉強の時間も、お風呂の中にまで持ち込んで、夜はもちろん一緒の布団で眠ります。
そんな日々が続き、いつしかぬいぐるみはラヴィーナにとって、何でも話せる一番の親友となっていました。 悲しい時も嬉しい時も、いつも一緒にいてくれる友達。苦手なことも、初めてのことも、ぬいぐるみが見守ってくれると思えば何でも挑戦できました。
そしてある日、奇跡が起きたのです。
それは、すっかり薄汚れてしまったぬいぐるみを買い替えたらどうかと提案されて、そんなことできないと部屋に立てこもった日のことでした。
ぬいぐるみを抱きしめ、寝台で泣き濡れるラヴィーナの腕の中で、なんとぬいぐるみがもぞもぞと身じろぎをしたではありませんか。
驚いて飛び起きたラヴィーナの前で、それまでぬいぐるみだった白猫はぶるぶると体を震わせると、こう言いました。
『もう! いくらなんでも強く抱きしめすぎだよ、ラヴィーナ。苦しいったらありゃしない』
文句たらたらの白猫は、呆気にとられるラヴィーナの膝からひょいと飛び降りると、すたすたと窓に近づいて、一足飛びで窓枠に飛び上がりました。
『あーあ、ずっと同じ格好をしてたから体が痛くなっちゃった。ねえラヴィーナ、外に遊びに行こう。もう家の中は飽き飽きだよ』
ラヴィーナは喜んで、白猫と共に家を飛び出しました。そして毎日元気に遊びまわるうちに、すっかり元気な女の子になりましたとさ。めでたしめでたし。
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