第4話 運命の十六時二十七分

 時刻は十六時二十七分を迎えた。第12Rの締切時刻だ。車券を買っていた客たちがバンクの方へと流れていく。そんな中、アリサの目の前には、くだんの老紳士がいた。競輪の神様だ。約束の時間になり、彼女に答えを聞きに来たのだ。


「さあ、約束のときだ。今回の答えを教えてもらおう」

 アリサは上着のコートから、軍資金三千円で購入した車券を取り出した。

「これが今回私が出した答えよ」

 神様に購入した車券を見せる。

「①②③⑤⑦の二車単BOX。これで二千円。それと②③-⑧で二百円。⑧-②③⑦で三百円。⑦-⑧で百円。④⑧の折り返しで二百円。⑧⑨の折り返しで二百円」

「合計でピッタリ三千円というワケじゃな?」

 神様はアリサの購入した車券を一枚一枚目を通している。

 今回の全日本選抜競輪の予想は、アリサにとって難しいものだった。決勝戦の並びは次のようになっていた。


           ← ⑥⑨ ③ ①⑦ ⑤②⑧ ④


 力のある自力選手が並んだ決勝戦で、単騎の選手もいる細切れ戦の様相。決勝戦に勝ち進んだ九名は一人一人が猛者だが、頭一つ抜けて強い選手がいない。力は拮抗しているというが、アリサの見解だった。

「では、優勝者はこの二車単の中にいるということでよいな?」

「ええ。そう考えてもらえばいいわ・・・」と答えたアリサだが、正直不安はあった。それが彼女の表情にも現れていた。

「まあ、そんな顔をするな。バンクの方へ向かおう。決勝戦を観るとしよう」

 神様の提案で、二人は取手競輪場のホームストレッチ側へと向かった。

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