6話 『琉金』

 三回目の金魚掬いでやっと掬えたのは一匹のみだった。

 その金魚は、淡い赤色をした美しい『琉金』という種類の金魚だった。

 ……はて?

 この金魚、どこかで見たような。

 既視感。

 その答えはすぐに、分かった。

 僕の隣には金魚をまじまじと嬉しそうに見ている少女がいた。彼女のな浴衣を見て、あ、と思ったのだ。

 淡い赤色の浴衣と『琉金』の尾びれが似ていたから。

 ただ、それだけのことだった。


「……なあ、君……」


 僕は少女に手を伸ばす、けれど、その手は届かなかった。届かなかったのではないのかもしれない。行き交う雑踏の中、赤い少女が振り返る。手を差し伸べられて、僕はとてつもない既視感を覚える。


 少女の手に触れ、僕は、いや、僕の記憶は三十年前に誘われた。

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