3話 浴衣の少女
いつの間にか僕は
眠ってしまっている間に暑かったのか、僕は寝汗を掻いていた。
少し涼もう。いい感じに縁側に風が吹き抜ける。外は暮れ始めていたのもあり涼しい気温になっていた。僕は縁側にくつろぎながら日が暮れ切るのを待った。
ふと、人影がひとつ、目の前に現れる。視線を感じて前を向くと、そこに信じられないものが現れた。
母にそっくりな――浴衣姿の女の子が、そこに立っていたのである。
僕は思わず目を見開いて、呼吸を忘れて、目の前の女の子を凝視してしまう。
驚きとともに、いやこれ不法侵入だろう、という冷静な言葉が脳裏に急に
「……君……」
「……」
『君』――こと、少女はじぃっと僕を見つめたまま、ただそこに立ち尽くしていた。
年の頃は十歳くらいだろうか? 少女は少し不思議な姿をしていた。全体的に
いやいやいや。
そうではなく。
僕はもう一度、少女を見る。
見れば見るほど、母の面影に重なるので、まるで亡霊でも見ているかのような気分になる。ちなみに僕は霊は信じていないし、霊感もこれっぽっちもないので、少女を霊だとは
ある時、僕の祖母が言っていたような気がする。この家には座敷童様が
少女は本当に母に似ていた。それこそ、眠る前に見た、祖母と写る母に。
「……ああ、可笑しくなりそうだ……」
苦笑しつつ頭を掻く。少女は首を
「君、どこから来たんだい?」
「……」
「えと……僕の言葉は分かるかな?」
「……」
「えー……とぉ……」
少女は「うん」とも「すん」とも言わない。問いかけには一応反応を示してくれているけれど、それでも少女は言葉を発しない。失声症、というやつだろうか。もしそうだったとしたら僕はかなり失礼な奴ではないだろうか。反省、反省。
意思疎通ができなければ
「君は……喋れないのかな?」
「……?」
ここで初めて少女が僕の言葉に首を傾げて反応してくれた。ちょっと嬉しい。
少女は喋ることができないらしく、こくりと頷いたり首を傾げたりして感情を僕に伝えてくれる。現在は縁側に腰をかけている僕の隣に座り、足をぱたぱたと動かしている。今更ながら気づいたことだが、彼女の足元は裸足だった。ちゃんと見えているから霊ではない。よし、信じなくて良かった。
では、なく。
いくら可愛らしく振舞おうと、彼女は不法侵入者。断じて許してはならない。……ならない、はずで。
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