第4話 反対色
窓からみる空は雲一つない青空だった。
彼女はそれを見上げて笑みをこぼした。
自分のクラスは一番端の最上階で引越し先は前とは違いとても田舎だった。
今まで17年間生きてきてテレビなどでしか見ることのなかった景色。
瞳に映るその景色はとても美しかった。
四時間目のチャイムが鳴った。
先程とは違いクラス全体が静かになった。
僕は不思議に思いながらも席について静かにしていた。
少し遅れて入ってきたのは初めて見る僕でも体が強張ってしまうような先生だった。
ーー起立、気をつけ、礼、着席ーー
その先生はどうやら社会科の先生らしい。
先生:「前回の続きからだ。」
先生はそう言って授業を始めてしまった。
転校初日の僕は教科書をまだもらっていないため仕方なく、ノートだけを広げた。
ふと前の席に目を向けてみると授業を受けずに空を見上げる彼女がいた。
いやそうではなく教科書や、ノート、筆記用具などの勉強道具がないから受けられないのだろう。
クラスの奴らが勉強道具になにかしたんだという推測ができる。
僕はその横顔に見惚れノートのはじめのページにシャープペンを走らせた。
その絵を書き終わる頃には授業は終盤に差し掛かっていた。
空を見つめる彼女。
それを絵にする僕。
その瞬間彼女は立ち上がった。
誰も気づかない。
いや気づかないふり。
彼女は立ち上がり後ろを向いた。
僕のノートに目をやった。
そして僕の目を見て
「今日のお空はきれいな青色なの」
と微笑みかぜの通る窓から身を投げた。
ドンッという大きな音。
だが誰も心配なんてしなかった。様子を見ようとも、しなかった。
優奈:「あーあー、おもちゃこわれちゃったね」
そう彼女は呟いた。
四時間目の終わりのチャイムがなった。
ーー起立、気をつけ。礼、着席ーー
その瞬間僕は教室から飛び出すように廊下から出た。
まだ慣れていない校舎。
まるで迷路を進んでいるような感覚である。
田舎ということもあって無駄に広い。
倒れてしまったというのもあって未知の場所のようなものだった。
だが僕は彼女に会いたい、彼女の元へ、その一心で走り続けたのだ。
彼女が息をしていないことなんてわかりきっていた。
下はコンクリート。
高さは5階大体12メートル。
彼女は頭から飛び降りた。
生きているはずがない。
やっとの思いで彼女の元へとついたのだ。
ぐちゃぐちゃなっているかと思っていたが、彼女はそのまま美しかった。
僕はそれを見て腹が立って、何度も彼女の顔を蹴りつけた。
「弱虫、弱虫、弱虫、弱虫、弱虫、弱虫、弱虫、弱虫」
何度も何度も蹴りつけた。
チャイムが鳴った。
そんなもの僕には聞こえなかった。
ただひたすらに彼女の顔を蹴り続けた。
もう原型なんてものは残ってなんていなかった。
僕の靴、服、顔、飛び散った血で真っ赤になっていた。
そしてその飛び散った肉片を僕は食べた。
ひたすらに食べたのだ。
まずかった、汚かった。
でのひたすらに食べ続けた。
僕の中で彼女は生き続け、彼女の中で僕が生き続けるのだ。
僕の心のキャンパスも青と赤で色がつけられた。
「よろしくね。斎藤 心菜(さいとう ここな)ちゃん。これからは僕がまもってあげる。」
そう言って彼は教室へと戻って行った。
澄み切った青空の色と、紅血色な血の色はとても美しかった。
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