いる間
「優しいところ、頑張り屋なところ、でも頑張ってるのを知られるのが恥ずかしくてみんなの見てないところで頑張ってるところ、みんなには努力なんてしてませんけど?みたいな態度なところ、調子乗りなくせに打たれ弱くて、すぐにいじけるところ、落ち込むといつも私に相談してくるところ、甘いものが好きなところ、辛いのが嫌いなところ、猫舌なところ、実はお金にルーズなところ、可愛いものが好きで落ち込んだ時とかは帰り道のペットショップに寄ってハムスターを見て癒されてるところ、虫が怖くて蜘蛛を見るとパニックになるところ、ちょっとMっ気があって、束縛されたい欲があるところ、寂しがりでかまってちゃんなところ、朝が弱いところ、心の内がすぐ表情に出るところ、嘘がつけないところ、ゲームの主人公は絶対女の子を選ぶところ、キャラメイクで12時間かけるところ、名前は毎回絶対果物系にするところ、最近ウザかわ後輩系にハマっているところ、太ももフェチなところ、朝私が迎えにくるのを実は待っているところ、帰り私が先に帰ると残念そうに一人で帰るところ……」
「……さっきからなんなの?」
気が落ち着いて部屋に戻り、ベッドに横になってから早小一時間、ずっとこんな感じの独り言が延々とまるでお経でも唱えるかのように続いていて、我慢ならなくなりついに声に出てしまった。
「私なりに先輩の好きな所です……」
そんなの聞くまでも無い、とでも言いたげな堂々とした返答が返ってきた。
「いや、なんで急にそんな?」
「だって先輩、部屋にいる間は分かるように声でも出し続けろって言ったじゃないですか?」
姿が見えたなら、目を丸くして不思議なものでも見るかの如く首を傾げていることだろうが……
「それでなんでそんな……好きな所を挙げ続けるってなるんだよ?」
こちらからしたら恐怖すら感じるレベルの体験だ。
……正直やめてほしい。
「いやだって、ずっと一人で何か喋り続けることなんてこれくらいしか思いつかなくて……」
まるで陸上選手が「自分には走るしか脳がないので……」的なコメントするみたいなノリで好きな人の好きな所を挙げ続けるなんて恥ずかしいことしないでほしい。
……それも一応本人に向かって、
「逆にすごいな、どんだけあるんだよ?」
「一生続けられます」
一秒の迷いもなく素で応えてくる辺り、よほどの自信があるのだろう。
……恐ろしい子。
「まじでどんだけ……いや、それよりなんかたまにキツいの混ざってたのは?」
SMとかお金にルーズとか、全く自覚はないし、心当たりもない……ような気もするが、
「先輩の性癖や散財癖について言ってるんですか?私的にはアリですし、たとえ先輩がどんな性癖に目覚めようと受け入れるつもりです。散財癖についてはまあ、それで先輩がずっと生活に困るわけですし、そこにつけ入って一生先輩を養うのもありかなと思いますなので全然キツいとも思わないですし私的にはむしろプラスになりますが?」
「……あそう」
「はい!先輩は将来立派なダメ人間になって女の人に養ってもらうタイプの残念な人です‼︎」
……言い切られてしまった。
「というわけでこの後も続けさせてもらいますが……」
「……勘弁してください」
こうして、
僕のプライベートを守る計画は見事に失敗したのだった。
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