第3話 2人、出会うらしいです

声もでない。

今ここでコタツに入っているのは誰だ?一瞬、妹が来てたのかとも思ったが、全く違う

そこから10秒くらいお互い見つめ合ったまま、無言が続いた。

先にその状況を破ったのは女の子だった


「どしたの?」


きょとんとした顔で言ってくる


「え、あ、いやあの、誰ですか?」


「あ、自己紹介か! 初めてまして記憶喪失になって道端で倒れてた人です!」


元気な言葉が飛んできた

それにしても綺麗な髪色、整ってる顔だ、ハーフなのだろうか。


「いや、なんで俺の家にいるの、それに…記憶喪失?」


情報量が多すぎる

まず、朝起きて部屋を出るとそこには栗色ロングヘアーの女の子

そしてその子は記憶喪失と言っている

もうなにがなんだか分からない


「そ、記憶喪失ってやつ。なんかねー起きたら道端で倒れてて、なんやかんやあって昨日の夜に、この家に入らしてもらったの」


「鍵は?」


「開いてた」


「うっわ俺不用心! 入ってきたのがこんな子で良かった」


「ね!ほんとに良かったね?感謝しなー?こんな可愛い子が夜中に入ってきてんだもん」


「いやどっちにしろ良くないわ黙れ」


危ない、この子のペースに持ってかれるとこだった

とりあえず落ち着こう、この子は別に危害を加えようとするタイプじゃ無さそうだ

「君、名前は?」


「知らないよ、記憶喪失って言ったでしょ、おじさんこそ名前は?」


「まだ24歳だわ全然おじさんじゃねえよ」


「ごめんごめん、そんな怒んないの、で名前は?」


なんでこんな年下の子になだめられてんだ


「佐藤陽大ひなた」


「ひなたさんか!よろしくねぇ」


「いや全然よろしくつもり無いです、自分の家に戻ってください。」


「家知らないし、なんか戻りたくない。」


軽い感じでずっと話してた人が、この瞬間だけは

真面目で、少し悲しげな目で言葉を言った。

記憶喪失前になにか家であったのだろう

そう察した俺は


「そっか、じゃあとりあえず俺は仕事に行かなきゃならないから、今日はここにいな」


「いさせてくれるの?」


「とりあえずな、まぁなんか色々話は帰ってきたら聞くわ」


「ありがとう」


可愛い、凄い可愛い、今のありがとうの時の笑顔たまんない。

そういう感情になり、少し目を逸らす


「あれ?ひなたさんもしかして今可愛いって思った?」


「思ってない」


「いや今、目逸らしたよね?ちょっと恥ずかしそうに」


「思ってない」


「ふーん、そっかぁ可愛いって思っちゃったかぁ」


この子と話してるとペースが乱される

この場からはやく居なくなりたいと思った俺は、逃げるように


「もう仕事行く、家の物壊したりすんなよ」


「はーい、行ってらっしゃーい」


よしとりあえずこの場は凌げた、今日も仕事頑張ろう、と玄関を出た時


「あ、私の名前考えといてー」


バタン


嘘でしょ?

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