サムイ トレイン オワオワリ
防寒着でもなければ、冬服でもない。俺はマタギでもなければイエティでも無い。風が酷い、これまで浴びてきた吹雪より、格が違う。今すぐどこかに避難しなければ、凍って死ぬ。直感したくなかった事実だが、そう直感できる。
「ギルティ!空間に戻せ!死ぬ!」
必死に呼びかけても、ギルティは余り変わらないテンションで答える。
《ならば暗闇の強い場所へ行け、ここは色んな意味でアウェイがすぎる。》
「…くらやみぃ…?」
辺り一面を探せば、一つだけ歩ける道がある、洞窟に繋がってるみたいだが…。あそこなら暗闇も、風も何とかできるだろう。
「あ…あっちだ!ついてこい!」
《別に影だしついてくけど…》
頂上の変な神殿の場所から、指定された洞窟に行く…。中は薄暗く、風は凌げるが、ここも時間稼ぎにしか使えない、すぐ空間に移動しなければ危ないだろう。
《ここならば、影が行き届いている。》
(次はちゃんと話し合おう…もうテンポとかいいから)
周りの影と同化していたギルティは、急に辞め、俺の後ろへ戻る。
《…すまない、人が来たみたいだ。》
動物、それとも人間には分からない第六感だろうか、俺よりも早くその存在に気づく。
「?」
コツ、コツ、
もう一方の穴から足音が聞こえる。
(なんだよ急に…)
銀色の髪、この世界には無い、いや、未来にしかない貴重な服装。横には弟が居らず。ボロボロになって、神に翻弄されたであろう………
ノボリだった。
《あれが心当たりだ、仲間に入れろ。》
(無茶言うんじゃねえええええ…)
その男は俺に話し掛けてくる。
仲間に入れるならここしかない…か。遭難の振り?いやそれとも………
そうだ、弱みならあるじゃないか。
「あの、その服では凍えてしまいます、下ればギンガ団のベースキャンプで休めますが、御案内しましょうか?」
(洞窟でたらギンガ団に見つかるってこと?)
《絶対下るなよ、なんかいい感じに仲間に入れろ。》
ギルティの声は聞こえる対象を絞れるらしい、なんでも出来るな。
「聞こえていますか?それとも危険な状態なのでしょうか…医療も教えてもらうべきだった。」
良い人…
(冷静になれ…!仕掛けるなら、ここか)
凍える身体を、少しでも温めようと早くなる心臓を落ち着かせ、最後に思いついた方法を使う。
「…ノボリさん、なんでこんな所に」
目を揺らし、ノボリは帽子のつばを上げる、驚いた顔でこちらを見る。
「私のことを、知っているんですか?」
《そうだ、記憶喪失だ。この世界に届ける前に情報を入れていてよかった。》
(俺からしたらネタバレなんですけど…)
ノボリは双子で、兄弟を失っている。記憶も無い…が、クダリの名前を出せば、上手く揺らせるかもしれない。
(その弱み、使わせてもらうぞ)
「クダリさんは、一体どこへ?」
ノボリは、確実に緊張している。あと一歩で何かを思い出せる、そういう気持ちが伝わってくる。
「覚えていないけれど…なにかが…私は記憶喪失で…もし知っていることがあるなら、教えてくださいませんか?」
落とし込めた。その情報はどんなものよりも…甘美だったのだろう。
「ええ…では、神の話からしましょうか。」
(ギルティ、)
《悪魔は、貴様だったな。》
影が、俺たちを飲み込む。
……………………………………………………
そして俺は語った。もちろんクダリの情報は余り入れずに。
「そんな…ことが…」
「俺達は、神様に操られていたってことですよ。」
《そして私は、神に反逆する同志を集めている。》
「どうか…俺達に力を貸してください」
ノボリは時間も空間も進まない中、悩んでいる。
(あと一押しだ。)
「神さえ倒せば元の時代に戻れる!」
ノボリは、こちらを見る。
これは、覚悟の座った目だ。
「私には、シンジュ教の仕事があります」
「ですが、それよりも、帰らなければならない。」
「ええ…そうです。」
「最後の質問です…プリンさま。」
「その神の名前は?」
ニヤリと薄気味悪く笑い、
その名を言う
「その、忌々しい名は、」
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